第49話完了



「紅葉詩乃……これでも一応デルガの友達的ポジションだよ」


「ふむ。他の者は立ち上がれていないな………気合いは充分、実力は今集まってる中でもトップレベル」


「それで?認めてくれる?」


じっとフレーザーを見つめる紅葉

紅葉の視線にフレーザーが見つめ返すと少したじろぐ。

暫くすると息を吐き武器を収める。


「気に入った。お前を一時的に主と認める。契約は約1年後の悪魔族の侵攻が終わるまでだ」


死屍累々の中でなんとか立ち上がっている紅葉にフレーザーが歩み寄る。


「お前の1番愛用してる武器はそのガントレットか?」


紅葉の身に付けている戦闘用のガントレットを指差し質問をする。

ガントレットを顔の位置まで上げる


「そうだよ。本気を出す時は絶対これなんだ。それがどうした?」


「そこで死んでいる貴様らもよく聞いておけ」


紅葉から少し離れた位置にいるSランクハンターによく聞けと声をかける。


「悪魔族と契約する専用スキルを持っていないお前らと契約するには対象が1番愛用している武器を使わなければいけない。それは剣なり槍なりガントレットなりだ」


紅葉のガントレットや倒れたままのハンター達の武器を指差していく。


「専用のスキルではない分私達の行動が制限されます。デルガ様が仕えている真様の場合は専用スキルを持っているので武器がなくとも契約しているデルガ様を呼ぶ事が可能です」


チラリとデルガと並ぶ真を見る。


「紅葉と言いましたか?ガントレットを出して下さい」


フレーザーに言われるがままガントレットを前に出すと突然フレーザーは自身の掌を切り血を出す。

驚いた紅葉が手を引っ込めようとするが血が出ていない方の手でガントレットを掴む。


「……契約に必要な事です。黙ってガントレットを出していて下さい」


紅葉の腕を掴みながらフレーザーは手の甲に何か書き込んでいく。

書込み終わると魔力を込めて小さな声で詠唱を始めた。

そして詠唱が終わると2人を黄色い光が包み込み体の中に吸い込まれて行った。


「終わり?」


「契約はそう派手なものではない。何を期待していた?普通に契約は厳かなものだ」


掴んでいた手を離しフレーザーはデルガの元へ戻ると跪く。


「デルガ様契約は完了しました。暫くの間デルガ様のメイドの職を離れる事をお許し下さい」


「構わん。主様の故郷を守る事の方が優先事項だ。フレーザー、怪我した者を全員治療しろまだ契約出来ていない者は明日に持ち越せ」


「「「「「はっ!」」」」」


「フレーザーはこのまま契約者である紅葉と共に過ごせ。お前達は1度あちらに戻っていろ」


デルガの後ろに控えていた悪魔族の騎士達は自身のゲートを出すと中に入りそれぞれの場所へと戻っていく。フレーザーはその場に残りSランクハンター達を治療していった。




「デルガ………俺専用スキル持ってて良かったよ」


「確かに……専用スキルも何も持たずに出会った時のような状況になったら無視していたかも知れませんね」


真の言葉に正直に話苦笑いが溢れる。


「ですが。そんな事にならず今こうして主様と契約出来ているのですからそれでいいじゃないですか」


「それもそうか」


「えぇ」


フレーザーの治療を待つ。

2分後には死屍累々としていたSランクハンター達は怪我もなにも無くなり元気に立っていた。


「初めての契約者は紅葉君か。若さに負けたなぁ!」


盾峰は笑いながら紅葉の背中をバシバシと叩く。

背中を叩かれながらも全く動じずにいる。

他のSランクハンター達は悔しそうにしていた。


「まさか後輩に負けるなんて………!!!」


「やっぱ俺は根性が足りないのかな?いや、単純に実力か?」


「良くやった紅葉!!」


盾峰は次は紅葉と同じ白蓮騎士ギルドのギルド長である玖珂鳳翔くがほうしょうが背中を叩く。

鬱陶しそうにその手を払うと紅葉は歩き出す。


「む?紅葉どこにいく?」


「フレーザーさんと戦って自分がすっごく弱いって認識した。だから家に帰る前に少しでもレベルアップする為にソロレベリングやろうってわけ」


ガントレットに魔力を込めて気合いを表す。

ちょうど悪魔貴族4人分の反応がなくなり今まで逃げていたモンスター達が戻って来る音が全員の耳に入る。


「紅葉ーーーソロレベリングなんて面白くない事言わずにさぁ経験値の奪い合い競争しない?そっちの方が面白そうだし」


1人の青年が提案をする。


「は?なんでよ?ダンジョンではさぁーーーー」


青年は雷を角から出てきたモンスターに当てる。

一瞬にして黒こげになった。


「早い者勝ちでしょ!!!」


他のSランクハンター達が一斉に立ち上がり走り出すと紅葉を追い抜き次々とモンスターを駆逐していく。

紅葉はポツンと取り残されてしまった。


「真君少し私怒っちゃったからあまりこっち見ないでね?」


深呼吸をする


「《来い愚王の魂 : 具足》」


濁った色の魔力が紅葉の足を包み込むと禍々しい色の具足が現れた。

更に足に魔力を集中させると体を低くしてクラウチングスタートの様に構える。


「経験値は……渡さない!」


ガリッと地面を蹴る音がした次の瞬間にはモンスター群の中にいた。

今のスピードなら地面を蹴った時に今よりもっと陥没して音がなった筈だった。


(紅葉さんランクアップ試験の時に出してなかった装備付けてる……まだまだ本気じゃなかったのかよ)


意外と手が届く位置にいると思っていた紅葉が実は遥か先にいる事を悟り心の中で愚痴を溢した。

真が横を見るとフレーザーはなんとも言えない表情でその場に立っていた。


「あの……フレーザーさんは行かないんですか?」


「真様は私がお慕いするデルガ様の主。フレーザーと呼び捨て下さい。それと真様の質問にお答えするのなら私はあの中には行きません」


「なんでですか?」


「もうあの程度のモンスターを幾ら狩ろうとレベルアップが望めませんので」


「え?Aランクダンジョンですよ?!」


「それに」と一言前置きをいれるフレーザーは真の目を見て答える。


「私達がいた魔界であのモンスター群の評価はこの地球の評価より2段階は下ですので」


フレーザーの口から衝撃的な言葉が溢れた





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