第38話 数週間



「はぁ……はぁ……やっと撒けたか!!」


「ふむ、少々面倒くさいですね」


「主どうしましょう?」


デルガの呟き、アグリードの質問に真は汗を拭うと顔を上げる。

その顔は肉体的疲労というよりも精神的な疲労が大きく現れていた。


(ここ数週間の家にも学校にもマスコミが大挙して押し寄せてきて来やがる!!)


苛立ちが抑えられない

Sランクに正式にランクアップしてからマスコミのせいで響にまで影響が出ている。

まだ被害という被害は出ていないが毎日家に手紙やらカメラを向けられて少し精神的にまいっていた。

それを心配した真はつい昨日響に相談せずに新しい新居を決めた。

引越しも早く明後日になっている。


(早めに戻らないと行けない。荷物も纏めないと行けないしな)


「アグリード俺の部屋にゲートを繋げろ」


真が口にした次の瞬間にはアグリードが真の家にゲートを繋いだ。

急ぐようにゲートに入る真を2人は追いかける。






景色が変わるとそこは見慣れた光景である自分の部屋だった。

暗い部屋を明るくする為電気をつける。


「ちっ!まだ外にマスコミがいるのか……」


苛立ちが抑えられない真は乱暴に窓のカーテンを閉める。

自分の部屋からリビングに行くと響が今日の夜ご飯を作っている最中だった。


「響ここはもうマスコミが煩い。毎日毎日……学校にも来てる。果てはSNSにまでメールが来たり!!何回か俺がハンターの仕事として学校を休んだ時無理矢理マスコミが乗り込んで来た事もあった」


ここ数週間の事を思い出し料理の手が止まる。


「明後日引越しをするから必要な荷物は明日のうちに纏めるぞ」


「え?!お兄ちゃん急すぎるよ!!引越しって……学校はどうなるの!!」


「住む場所を変えるだけだ学校は変わらない。少し離れてるから登校は2人のゲートを使って校内に。帰りは友達遊んでいいけど必ずアグリードとを同伴させる事。万が一ハンターに絡まれても2人が居ればSランクでさえなんのそのだからな!」


自信たっぷりに胸を張る

アスマディア

真がSランクになって以降隠す必要もなくなりデルガが少しずつ普段も出すようになったのだ。

響は最初戸惑っていたが最終的にまたご飯を一緒に食べる家族が増えたみたいで嬉しいとはしゃいでいた。

ちなみにアスマディアは偶に荒鐘家の食卓に並ぶが箸を全く使いこなせていない。


そしてアスマディアは真に命じられ普段は姿を消して響の影の中に入っている。

アグリード、アスマディアと過剰にも思える戦力だが真はまだまだ増やしてもいいすら考えていた。


(俺の可愛い響に何かあったらどうするんだ!!)


ここ数週間でシスコンになったのかもしれない。

馬鹿な事を考えていると料理が出来上がり4人は響お手製のご飯を食べる。






時間はあっと言う間に過ぎた。

引越しの日が来て、荷物を業者に頼むと真が決めた家であるハンター協会の上層階引越しも終わり時間は夜の9時を回っている。

響は引越しの荷解きに疲れて既にベットで寝てしまっている。

そんな響をクスりと笑うと名前を呼ぶ


「デルガゲートを開け。ダンジョンに潜るぞ」


パチパチパチィ


小さな音を立ててゲートが開く。


「ストレス発散だ」


ゲートを潜ると景色が変わり一瞬にしてダンジョンの中になる。

周りをキョロキョロと見るとデルガに質問をする


「このゲートはどれほどのランクなんだ?」


「魔力量から察するに精々BランクからAランクでしょう。今の主と力だと充分ソロ攻略が可能な筈です」


「そうか………」


ガシャ


「もしここがAランクダンジョンならボス単体のランクはSランクだとしてもおかしくないよな?」


ガシャ


「アイツか……じゃあダンジョン決壊以来のリベンジマッチになりそうだな!!!」


ガシャ!!


「グルルルルァア!!」


真の目の前のモンスターは優雅に剣を抜き構える。

アイテムボックスから《紫紺の短剣》を取り出し構える。

両者が構えるとデルガとアグリードは側を離れる。

2人の戦闘を邪魔する雑魚モンスターを1匹たりとも生み出さない為に。


「こいよ!シングルナイトォ!!!」


Sランクにランクアップしてから初めてのダンジョン、もちろんレベルは一切上がっていないがレベルを上げずとも筋トレや走り込みなどで多少は変えられる。

走り込みにより俊敏が上がってた真は空間を使いシングルナイトを翻弄すると背後に周り短剣を振り下ろした。


その場で固まる事もなくシングルナイトを蹴り飛ばすと武器を構え備える。


「グルルルルァァァアアァァアァ!!!!」


咆哮と同時に膨大な魔力が暴風となって解き放たれ真を襲う


「っぐぅ!!!」


魔力で強化されたシングルナイトが真と対峙する。


「そっちがその気なら……」


《スキル : 認識強化》


単純極まりないスキルだが事頂上の戦闘においては強大なスキルとなる。

更に


《スキル : 神速》


雷属性の魔力が真の脚に付与されバチバチバチィィと激しく鳴り響く。


「さぁ、仕切り直しだな!!」







『シングルナイトを倒しました』


「はぁ……はぁ……なんとか、なんとか行けた。新スキル、色々なアイテムのブーストがあってやっとか」


汗を拭い水分を取る。


「試験会場の時の紅葉さんならシングルナイトはもっと楽に勝てそうだよな。慣れない装備でさえダンジョン決壊の時シングルナイトとかなり渡り合っていたよな」


周りの雑魚モンスターを相当し終えたのか2人が戻ってくる。


(この2人がいるから俺はモンスター如きで無双する事が出来ないし無双するつもりもない)


チラリと見る


(いずれ超える事が当面の目標になりそうだな)






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