第34話 疑惑のBランク
ガギン‼︎‼︎
不意を突いた真の一撃も加賀美はなんとか短剣で防ぐ事に成功する。
俊敏の能力値が完全に上回る真のこの一撃を防ぐ事が出来たのは今まで何度も死線をくぐり抜け、日頃から人型のモンスターを相手にする機会が多いために対策として対人戦をしていたお陰だった。
そして何度も奇跡は起こるはずもなく徐々に形勢が真に傾いて行く。
「クソッ!」
それでも加賀美も意地で自身より速い真に食らいつく。
(想像以上に防御が上手い!!これがBランクか!)
短剣は幾度となく交わるが服さえまだ切り裂けていない状況だった。
超高速の戦闘が続く
Cランクまでは割と早めに決着が着いたのに対してBランクの加賀美に既に5分以上時間が掛かっている事で真に焦りが現れてくる。
Aランク、Sランクへのランクアップ試験も残っている。
これ以上時間は掛けられないと真はなりふり構わず魔力を全身に回して決着をつけにかかる。
「うぉあぁぁぁ!!!」
更に苛烈になる2人の攻防に観戦スペースにいる人達は感嘆の息を漏らしていた。
「今まで戦闘を競技的に見た事は無かったので中々面白い……姉上もそう思いません?」
アグリードは真と加賀美の戦闘を見て感想を溢しその同意をデルガに求めた。
「そうだな、身体能力は主ほどでもないが技術面が優れているからかなんとか凌いだいる状況……速さだけなら紅葉と対して変わらないのに良く持ってるな」
「うちのギルドメンバー強いでしょ?」
「指導者が優れていたのだろうな」
デルガの言葉に白蓮騎士ギルドの人達は少し照れたように頭を掻いた。
何度も短剣を交えるが一向に刃が届かない
ただひたすらに短剣で斬り結ぶ
痺れを切らしたのか真の放つ一撃がほんの少しだけ雑になる。
(キタ!)
戦闘の中でさえ際立つほど加賀美の表情が変化する。
両者の放たれた一撃が交わり合うと即座に加賀美が愛武器の短剣に付いているトリガーを引く。
カチッ
ッガァァァァァァァアァァァン!!!
爆発が起こり2人はそれに巻き込まれる。
その瞬間観戦スペースにいたデルガとアグリード思わず立ち上がる。
影が2つ吹き飛びそれぞれ反対の壁に激突する。
地面にずり落ちるとすぐに2人はヨロヨロと立ち上がった。
「「っぐ」」
体どちらもボロボロになっていたが1つだけ決定的な違いがあった。
「ちょっと君…何で服は布切れ同然なのに皮膚はそんな綺麗なんだ?」
頭を切ったのか血に染まった顔で真に語りかける。
加賀美からの質問に壁に寄りかかり肩を押さえながら答えた。
「魔力防御……目の前に壁を作って防ぐんじゃなくて皮膚の表面に纏った防御するんです。壁だと破られた時に動揺したりして対処が遅れやすいですけどこの皮膚の表面に魔力を纏うと壁より魔力よ無駄が少なくて硬いんですよ」
「……ちなみに欠点は?」
「壁を作らず体で受けるからめっっちゃ怖い事ですね。あと服の用意も大変になります」
真は自分の意味を成さなくなった上半身の服を見て苦笑する。
「誰に教わった?」
真は観戦スペースを指差して呟く。
「家族のデルガがやってるのを見て見よう見まねだ」
肩を竦める
「それで戦闘は続けますか?出来れば合否の判断が欲しいところなんですが」
「そっだったな」
真の言葉に忘れていたという様な反応をすると観戦スペースに向かって声を張り上げる。
「古豪会長!!荒鐘真Bランク及びAランク試験突破!」
「は?!」
加賀美の口から発せられた予想外の言葉に思わず間抜けが声を出す。
「いやちょっと!加賀美さん?!Aランク試験突破ってこれはBランク試験でしょ!!」
「言ってなかったけどオレAランクの試験監督も普段は務めてるんだよ。だから今日試験監督をやる予定だった
再び観戦スペースに向かって声を張り上げると田澤恭介が反応する。
『そもそも僕呼ぶ必要なかったよね!!!!来た意味ないじゃん!!!』
「じゃあ変わるか?!」
『あ結構です』
すんなり引き下がった。
まだまだ頭の中にある疑問を加賀美にぶつける。
「BランクのなんでAランクの試験監督を??」
「そもそもオレレベルも実力も田澤より上だから。なのに何故Bランクのままかというと……試験受けるのがめんどかったから」
(えぇ……)
「まぁでも時間の節約になったしいいんじゃね?」
「精神的に疲れました」
ゲッソリした顔で真は加賀美を文句を口にする。
「まぁそう固い事いうなよ」
加賀美は血で汚れた顔を拭い去ると体を不慣れな回復魔法で治療をすると観戦スペースへと歩き出した。
真はその場で壁に背中を預けながら座り込む。
(くそっ想像の5倍はキツい。Aランクの試験をほぼ特例に近い形でパス出来たのは良かったけど負担が酷いな)
アイテムボックスからスポーツ飲料と栄養価の高い携帯食料を取り出す。
スポーツ飲料を飲もうとした所で観戦スペースからデルガとアグリードが駆け足気味で真の側に寄る。
「主!大丈夫ですか!!」
「かなりの爆発のようでしたが怪我は……ない、ですね。魔力の壁を作った様子もなし。まさか直接を魔力を皮膚に?」
「初めて会った時に2人がしていたのを思い出して咄嗟にしたんだ。ギリギリ間に合ったけど服が台無しだよ帰りは最悪デルガのゲートに頼るかぁ」
「お任せください!」
笑顔で真の言葉に答えた。
そしてデルガはそのまま真の体を癒すため回復魔法を掛ける。
「ありがとう助かる」
「私がしたいのです」
「姉上……随分と献身的になられて」
アグリードがシクシクと泣くような動作をわざとらしくすると顔を赤くしてデルガが睨んだ。
怒鳴りたかったのだろうが真の目の前という事でなんとか堪えた。
『私も予想外だったが次で最後だ。紅葉君、頼んだよ』
「りょーーかい」
観戦スペースから紅葉詩乃が降りて来た。
肩を解したりしてから真を見つめた。
「好きなだけ準備と休憩を取ってね。そうしないと正直相手にならないと思うから」
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