第33話 Bランク



アイテムボックスを開く。

《毒鳥の羽剣》を取り出して構える。


(流石にベテランと言われるCランクからは素手で戦うのが自殺行為かな……死にはしないけど)


真の目の前にいる白蓮騎士の男はアイテムボックスを開き中から槍を取り出して構えた。

刃の部分が大きいタイプの槍だった。


「僕の名は博陽相馬はくびそうま白蓮騎士ギルドのCランクだ。今日は君の試験監督を務めるからよろしく頼むよ」


「こちらこそお願いします。俺は早く箔が欲しいので前のめりの姿勢、つまりこちら攻めます」


真の言葉に少し嬉しそうに目を伏せて笑う

目を上げると次の瞬間

雰囲気が全く別の物になる

それはまるで狂戦士バーサーカーの様だった。


『挨拶も準備も整ったようだね。それでは…始め!』


始まりの合図と共に両者は試験会場の床を踏み抜く勢いで蹴り切迫すると武器を交える。


「「っ?!」」


単純な力、俊敏は真の方が上

しかし技の駆け引きは博陽の方が上だった。

交えた槍が押し込まれそれを弾き返そうと力を入れる。

真は更に力を込めた時に博陽は槍込めていた力を一気に抜いて真のバランスを崩す。


(嘘だろ?!)


博陽の槍が真に迫ると短剣を持っていない方の拳で槍の側面を咄嗟に殴る事で軌道を逸らす。


(Cランクは想像以上に強いな!それでも!!!)


猶予が出来た事で距離を取る。

その隙に真は全身に魔力を十二分に行き渡らせた。


「ふうぅぅぅぅ………」


脚に力を込める。

先程の一瞬の攻防より更に速くなる為に

体を低くする

1秒ほど経つと準備は完全に整い、真は全力で床を蹴り抜く


ドン!


爆発音に似た音がすると次の瞬間には真の短剣と博陽の槍が交わっていた。

真は止まる事なく横を通り過ぎる


ドン!!


2度めの爆発音に似た音がすると真はまた博陽と槍を交えていた。


(こいつっ!!速すぎる!!止められたの奇跡だ!)


博陽は真の圧倒的すぎる速さに驚愕した。


ドン!!!


3度めの爆発音に似た音がなると今度は武器を交える事なく通り過ぎる。

疑問に思いながらも即座に背後を見ると


真の姿が無かった


「どこに────」


ッッスパッ!!!!


3つの音がほぼ同時に響く

そして博陽は自身の異常に気付いた。


「服が……あ、後ろに居たのか荒鐘君」


博陽の服の3箇所は大きく切り裂かれていた。

そしてそれを行った真は博陽の背後に周りその首に短剣を添えている。

一度博陽は両手を上げて降参のポーズを取ると真は短剣を下ろした。


「ふぅーー。文句なしの合格…古豪会長!!Cランクへのランクアップ試験終了結果は文句なしの合格です!」


声を張り上げて古豪会長に結果を伝えると観戦スペースに戻って行く。

アイテムボックスからスポーツ飲料を取り出して一口飲む一息ついた。


「流石に飛ばしすぎたな……次はもう少し効率良く行こう」


ブツブツと小さい声で呟いていると観戦スペースから白蓮騎士ギルドのハンターが降りてきた。

流れから察せら通りBランクの上位女性ハンターだった。


「君これを飲みな」


Bランクハンターが小さな小瓶を投げて寄越してくる。

投げられた小瓶をキャッチすると中身を見てからハンターを見る。


「安心しろ毒とかじゃねぇよ。それは魔力を回復させるポーションだ。そこまで良い物じゃないから焼き石に水だろうがないよりマシかもな」


その言葉を信じ小瓶をもう一度見ると蓋を開けて一気に呷る


「おぉ〜いい飲みっぷり!魔力ポーションは飲むと直ぐ魔力に変換されるから水腹にならないのがいいよな!」


明朗快活

真が女性ハンターに抱いた印象だった。


「オレの名前は加賀美桜花かがみおうか。今回Bランクの試験監督を務めるハンターだ!よろしくな!」


手を出してくる

虚を突かれた真だがしっかりと握手を交わす。


「武器はその短剣1本だけか?」


「一応短剣二刀流が俺の本気のスタイルです。まだまだ未完成ですけど」


「じゃあこれからが楽しみだな!」


ニヒヒッ!と加賀美は笑うが真は勢いに負けて苦笑いが溢れる。




5分の休憩が終わる。

2人が離れて向かい合う。


真はアイテムボックスを開くと《紫紺の短剣》も取り出す。

何度か握って開いてを繰り返し感触を確かめると我流の構えをする。


加賀美もアイテムボックスから2本の武器を取り出した。

武器は短剣

スピードで敵を翻弄してダメージを稼ぐ近接特化のダメージディーラーという役割が見事に被っていた。


「見事な役職被りだね。これはなおさらオレはハンターの先輩として負けられないな。あ、もし仮に君が負けてしまっても不合格とは限らないから存分に本気を出す事を推奨する」


不敵に笑い

真を挑発する加賀美


(この人言動と釣り合わないくらい強い!!本当にBランクハンターか?!)


短剣を持つ両手をダラリと下げ、ほんの少し前屈みになる事で自身の構えを取る。


『準備は……出来た様だね?』


古豪会長の声が静かな試験会場に響く

2人は声を聞くと同時に構えを更に深くする。


『それでは……始め』


ドン!!!


2人はAランクハンターに相応しいスピードで疾駆するとお互いの相棒である短剣を交える。


「っ!力も中々強いんだな!!」


「加賀美ぃ、さんこそぉ!!」


気合いを入れて互いの短剣を弾き2本目の短剣を交える。


「くっ!良く反応したなぁ!!」


「加賀美さんこそ本当にBランクなんですか!!!」


ここで加賀美は真の言葉に煽られたと思い殺す気で魔力を全身に回す。

急速に上がって行く加賀美の身体能力に真も負けじと魔力を全身に回して行く。


「「このぉ!!」」


ドッ!!!


短剣が離れたと思うと次はお互いが蹴りを放つ

顔に当たる事はなくぶつかり合うと衝撃音が観戦スペースにまでハッキリと届く。


「「ぐっ」」


2人は痛みを感じ仕切り直しで距離を取る

真は距離を取るをして加賀美に向かって全力で疾駆する。





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