第31話 ランクアップ



起床する。

壁に掛けている時計を見ると朝の6時となっている。


昨日真は家に帰ると響のご飯を全員で食べた後風呂に入りすぐに寝た。

真の機嫌が異常に悪かった事で食卓が少し気まずくなったが響は何かがあったと察して明るい話題を出した事でなんとか解決した。


「まだ気分悪いな………ランクか低いからああやってデルガを馬鹿にされるのか」


昨日の事を思い出して真は拳を強く握る。


(舐められないようにするには簡単か。高ランクになればいい、高ランクになれば威厳が自然と付随するから舐められ事も無くなる)


「…………今日の予定は決まったな」


真は洗面台に行き顔を洗った。

タオルで顔を拭いてから二階に着替える為に上がると響とかち合う


「お兄ちゃん、もう…いいの?」


言葉を濁しながら真を心配する響。

その響の様子に罪悪感を覚えた真は自身の頭を乱暴に掻き乱して対応する。


「昨日はハンターの事情を家に持ち込んでごめんな響怖がらせちゃったか?」


「少し、怖かったよ顔」


「ごめん。今度何か埋め合わせにどこか連れて行ってあげようか?」


「お兄ちゃんの奢り?」


「勿論だ」


「ぃやったぁーーー!!!」


ルンルンを階段を降りて行き顔を洗いに行く響を見送ると自分の部屋に戻る。

パジャマを脱ぎ普段着兼ハンター装備の服装に着替える。

早く朝食にしたいが響に台所に入る事を禁止されている真は朝食の時間まで学校を宿題を広げた。








7時30分

いつもの朝食の時間になる

宿題を片付けてリビングに行くと響がテーブルにご飯を並べている途中だった。


「あっ、お兄ちゃんナイスタイミングーー!」


「楽しそうだな」


「いや〜だって?ここ毎日4人家族の4人で朝と昼と夜のご飯を一緒に出来てるんだよ?何年ぶりだろ〜って考えてると楽しくなっちゃって」


「………これから死ぬまで4人家族だぞ」


「あれ?お兄ちゃんはデルガさんと結婚しないの?」


「「バフォッ?!」」


真との吹き出した声が重なる。

声のする方へ顔を向けるとそこには顔を赤らめてこちらを覗いているデルガの姿があった。


昨日とは違う意味で気まずい空気になるがそこへゲートからしれっと出て来たアグリードが響に声をかける。


「響、今日の朝食は何でしょうか」


「今日は昨日のあまりのカレーだよ。他に何か欲しい?」


「いえ、カレーを多めにして貰えれば嬉しいです」


「じゃあ用意するね!デルガさんは?」


自分の名前が呼ばれたビクッとなったデルガだが冷静に答える。


「じゃ、じゃがいもを多めで…お願いします。響」


「はーーい」


響が楽しそうに台所に向かい2人の分のカレーを更によそう。

アグリードは真に近づき耳打ちをする。


「(主何を気まずくなっているのです)」


「(俺まだ結婚しねーーよ?!)」


「(弟の私が言うのもなんですが姉上は粗暴ですけどスタイルはかなり良いんですよ?何を躊躇ってるんです?ガッツきましょうよ男なんですから)」


「(俺は野獣じゃねぇ!!!)」


「あ、主。私はいいですから席につきましょう。はい」


デルガの一言で真とアグリードの小声漫才は終わり3人は食卓についた。






朝食が終わり真が響に今からハンター協会に行く事を伝えると、響が訝しんだ。


「昨日1日中ダンジョンに潜ってたんでしょ?それなのに昨日の今日でまたダンジョン?」


ほんの少し怒り気味に真を問い詰める。

しかしこの答えを想定していた真は宥めながら響の質問に答えた。


「ダンジョンには今日は潜らないよ。ただハンター協会に用があるだけさ」


「ふーーーん?」


皿を洗い2階に上がるとお金が必要になった時の為に財布、お金が足りなかった時の為にハンター協会と契約している銀行のカードを用意する。

もしも響からの連絡が来た時、直ぐに反応出来るようにスマホも持ち玄関に立つ。



「じゃ、行ってきます。2人ともハンター協会の中にゲートを繋げてくれ」


バチバチバチィィ


「お兄ちゃん怪我しないでね」


「ダンジョンには潜らないって!」


「どうだか?」


「信用ねぇ〜〜」


この言葉を最後に真はゲートを潜り自宅を後にする






バチバチバチィィ


ゲートがハンター協会内に現れるとその場にいたハンターは持てる武器を持って中から出て来る存在を待った。

しかし中から出て来たのはここ最近世間を賑わせている荒鐘真、そして密かにファンクラブが出来ているデルガとアグリードだった。

ゲートから出てきた真が歩き出すとゲートが閉じる。


真っ直ぐ受付に向かうとそこには毎回真の対応をしている受付嬢がいた。

まさかの登場の仕方にびっくりしながらも受付嬢として仕事をこなす。


「荒鐘様ですね?今日は何の御用でしょうか?」


「ハンターランクの、ランクアップ試験を受けたい。出来るだけ」


「で、出来るだけですか!!??」


「昨日何かあったのは聞いてる?」


「多少聞いております」


「舐められるだけならまだ良い、だけどデルガを侮辱されたからね。それは俺のハンターランクが最低のFランクだからだと思う。だから……今日は古豪会長に言われた我儘を行使させてもらう」


一度区切り

受付嬢を見て再度言う


「俺にのランクアップ試験を受けさせてくれ」






ハンター協会: 会長室


古豪会長は椅子にもたれ掛かりコーヒーを飲んでいた。

会長室に慌てた様子の受付嬢がノックもする事なく入ってくる。


「か、会長!!例の!荒鐘真が全てのランクアップ試験を受けさせろ協会に来ました!!」


受付嬢の言葉に固まる古豪会長はふっと笑みを溢すと一口コーヒーを口に含み机の上に置くと立ち上がる。


「思ったより我儘を言うのが早かったですね。………理由が気になる所だ。君、来たのは荒鐘君だけですか?」


「いえ!女性1人、男性1人が居ました」


(デルガ君とアグリード君だろう。白蓮騎士ギルドの人を呼んだ日に来るとはね)


「3人を今すぐランクアップ試験会場に案内しなさい。私は白蓮騎士ギルドの人達に声をかけてくるよ」


古豪会長はギルドの人達がいる部屋に足を運んだ。




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