第30話 怒り
ひたすら目の前の敵を斬り伏せて行く
何も考えずにただ無心に飛びかかってくる雑魚モンスター斬り、返す短剣で別の雑魚モンスターを斬る。
背後からゴブリンが襲う
しかし体を捻りゴブリンの棍棒による一撃を避ける。
今度は真がゴブリンの背後に周り短剣を振るう。
「グギャ」
短い悲鳴を上げて絶命する。
真の周りにいたモンスターが死んでいき、最後の一体を殺した所で顔を上げる。
「5時……レベルも多少上がったから今日はここまでかな?」
「「お疲れ様です主」」
「うん、2人もモンスター集めてもらったりしてごめん。疲れた?」
「まっったく疲れません!主の為を思えばこの程度なんて事ありません!」
「姉上と同意見です。Sランクの大群を何時間も相手しろと言われたわけでもないので」
爽やかな笑顔で真に告げる。
デルガの言葉には何もおかしい所は無かったがアグリードのSランクの大群という言葉に顔が引きつるのを真は自覚した。
「もうそろそろ帰らないと響に飯抜きにされちゃうから急ごう。2人とも悪いけどハンター協会の近くにゲート出してくれ」
「恐らく人目につきますよ?」
「何かあったら存分に頼らせてもらうよ」
「……!!お任せ下さい主!」
バチッ、バチバチバチィィ
もうすっかりと見慣れた赤黒いゲートが現れる。
(テレビにも不本意ながらもう映っちゃってるし気にしてもしょうがない)
「じゃ、行こうか」
3人はデルガのゲートを潜った。
バチバチバチィィ
ゲートが開き中から真、デルガ、アグリードが出てくる。
周りを見渡すとハンター協会のすぐ近くにある公園だという事に気付く。
更には端の端にゲートを開いた為、人が全くいない。
「デルガ気遣ってくれたのか。ありがとう」
「いえ……」
真は小さな気遣いに感謝を伝えるとデルガは俯いてしまう。
そのまま歩いて1分のハンター協会へ向かう。
中に入ると色々な格好のハンターが数十人それぞれ飲み物を飲んでいたり食事をしていたり、受付で魔石などを換金したりしていた。
その数十人が真が入ってくると一斉に動きを止めた。
謎の統率感に気圧されながらも真は受付に向かう。
「換金をお願いしたいんですが」
「換金ですね。こちらにどうぞ」
受付嬢に案内され少し離れた換金ゾーンに移動する。
「それでは取得した魔石をお出し下さい」
そう言うと受付嬢はそこそこ大きめのトレイを持ってきてカウンターに乗せる。
真はアイテムボックスから魔石や取得したが必要のない武器などを取り出して行く。
「お、多いのですね」
「Fランクのダンジョンとはいえ朝から潜りっぱなしだったので……でも質があまり良くないです」
ほんの少しだけホクホク顔で受付嬢に伝えると少しだけ呆れた顔をする。
「怪我がないのはハンター協会としても何よりですがもしもの事があったらどうするのです」
頭を押さえながら真に言う。
「大丈夫ですよ。頼りになる仲間もいますし。しかも僕より遥に強いんですよ」
そう言いながら真はデルガとアグリードの事を強調する。
受付嬢は真の後ろに並んで立っている2人を見ると確かにと納得する。
組織の末端にまで真の情報は行き渡っていた。
そして真は知らぬ事だが受付嬢達の中で若くてお金の稼ぎも良い真の評判は物凄く良く激しい争奪戦が行われている
その中で勝ってもデルガ、アグリードの壁を越えなければ行けない。
その事実を知らない受付嬢達は無駄な戦いとなる事など知る由もなかった。
受付嬢は鑑定を終えると小さなトレイではなく封筒を差し出して来た。
真は受け取り中身を除くと驚く。
「万札が……こんなに?」
数えて見ると万札だけで20枚ある。
樋口さんは1枚、野口さん4枚ある事に気付きそんなに大金になるのかと疑問が浮かぶ。
「Fランクダンジョンでかなりモンスターを狩りましたが今日は運が無かったのかドロップ品の量が多いだけで質はそんなにだと思うんですけど」
「あぁそれはドロップした武器が良かったんでよ。Fランクダンジョンで落ちるにはまぁまぁ良い性能だったので」
「そう言う事ですか」
納得して真は今度こそホクホク顔で受け取ったお金をアイテムボックスに入れた。
受付嬢に軽く礼をしてハンター協会から帰ろうとした時野太い声が真を呼ぶ。
声のした方向に向くとかなり強面のオッサンが酒を飲んでいた。
「お前、まぐれで良いドロップ品拾ったからって調子に乗るなよ?………なぁ!!」
残った酒を一気に体の中に流し込むとジャッキをテーブルに叩きつける。
その音にその空間にいたハンター全員の視線が集まる。
明らかに理不尽な敵意に真の目が細められて行く。
「別に誰も調子に乗っていませんよ。それに…どこが調子に乗っているんですか?」
「新人如きがこの俺に挨拶もねぇ所なんだよ!!!」
勢い良く立ち上がるとズンズンと威勢良く真に近付いて行く。
即座に影が走るとオッサンの間にデルガとアグリード立ち塞がっていた。
「あ?なんだてめぇら?にぃちゃんの方は兎も角そっちのねぇちゃんは別嬪さんだなぁ?」
その口が汚く歪む
「おいガキ。こっちのねぇちゃんを貸せ、そうしたら今の無礼は許してやる」
「……は?貸せ?」
「分かんねぇのか。酌をしろって言ってんだよ!!」
(デルガを貸せ?)
「オッサン…何故『貸せ』なんだ?お願いして見ればいいだろう?」
「ごちゃごちゃうるせぇなぁ。女なんて消耗品みたいなもんだろうがクソガキ!」
「「っっ!!主こいつを斬らせてーーーー」」
殺気が爆発的に溢れ空間を支配した。
「お前、デルガを消耗品扱いか?」
(殺して……いいかな)
一歩踏み出す、オッサンが一歩後退する
「デルガは大切な家族なんだよ」
一歩踏み出す、オッサンはニ步後退した。
「殺される覚悟はあるのか?」
また一歩踏み出す、オッサンが一歩後退すると自身の脚に引っかかり尻餅をつく
その隙に一気に間を胸ぐらを掴んで顔を引き寄せる。
「俺の家族を侮辱したんだ。殺される覚悟を今からしろよ」
拳を力の限り握る
筋肉が膨れ上がり魔力が込められて見た目以上に頑丈なはずの服を破く。
それを見てオッサンは酔いが醒めたのか必死に謝る。
「すまん!すまんかった!!俺が悪かった!今日はドロップ率が悪くてヤケ酒してたんだそのせいだから!!!」
「知らん」
「死ね!!!!」
顔目掛けて拳を放つ
「「主!」」
デルガとアグリードの声が聞こえて振り下ろした拳を咄嗟にズラす。
ズドンッッ‼︎‼︎‼︎
拳はオッサンの顔に当たる事は無くハンター協会の壁に当たった。
激しい音と振動が協会全体に響く。
自分を容易に殺せる一撃を顔の直ぐ横を通った事を理解したオッサンの顔は見て分かるほどに真っ青だった。
オッサンを解放して受付に向かう。
「これ返す弁償。足りない分は俺がハンター協会に預けている分を差し引いておいてくれ」
封筒を返しそう伝えると真はデルガに声をかける。
「デルガ、ゲートを出してくれ」
「しかしここは人が……」
「心配してくれるのさ嬉しいけど、こんな気分の悪い事味わったんだ。今直ぐ家に帰りたい」
「分かりました」
バチバチバチィィ
ハンター協会の中に赤黒いゲートが現れる。
協会内にいたハンターの何人かは武器に手にした。
「帰るぞ」
真、デルガ、アグリードがゲートの中に入ると閉じて消えた。
ハンター協会内を支配するのは静寂だけだった。
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