第29話 型
《紫紺の短剣》を振り上げて斬り下ろす、返す刀もとい短剣で更に切り上げる。
そして左手に握られている《毒鳥の羽剣》でモンスターの体を両断する。
既に死んでいるが目の前のモンスターに死体撃ちならぬ死体斬りとして止めの一撃を放つ。
「ふぅ……」
「流石です主、もう自身の型を見つけて更には自分の物にしています!」
「途切れる事のない斬撃、超攻撃特化の型。正に攻撃は最大の防御ですね!」
デルガとアグリードは口々に真を褒める。
ことの始まりはデルガにどうやって強くなればいいか聞いたからだった。
デルガ曰く「頭で考えるよりも速くなぞれる自身だけの型を見つけて習得する。それだけでいざという時に役に立ちます。それに余計な事を考えなくて済みます」と言っていた。
かれこれ真は自分の型を見つけるのに3時間、見つけて反復練習として3時間雑魚モンスターを狩り続けていた。
夢中で狩り続けたおかげでレベルも一つ上がりまた少し強くなった。
そして気付けば既に昼食の時間である12時20分になっている。
「デルガ、アグリードご飯にしよう。あ、でも途中でモンスターに邪魔されたら嫌だな…」
(仕方ない…外に出るか?)
「2人ともーーー」
「主、安心してください」
「???、食べるなら全員でだぞ?」
釘を刺す
「心得ております」
アグリードが魔力を掌に集めて少し弄る。
弄った魔力を周りにばら撒くと3人を覆うようにドーム状に変化した。
「おぉ!」
「これで襲われても完全防御出来ます」
「壊れない?」
「勿論です!」
ふふん!といった様子でアグリードが胸を張る。
そのアグリードに少し不満があるのか頬を膨らませるデルガ。
「じ、じゃあ食べよう!さぁ座って」
シートを敷いてアイテムボックスからバスケットを取り出す。
その中からサンドイッチを出して2人に手渡す。
「「これは?」」
「サンドイッチっていうんだ。パンの耳を取って中に具材を挟んで切っただけだけどね?口に合うかな?」
2人がサンドイッチを一口食べる。
そして驚いた様に真を見て捲し立てる。
「これは良いですね!パンと卵が良くあっています!」
「私はこの、なんでしょう……これが好きです!」
「シーチキンサンドって言うんだよ」
デルガは卵サンドの虜になりアグリードはシーチキンサンドの虜になってしまった。
そんな2人の様子に大袈裟だと思いながらも自分もサンドイッチを食べる。
1つ目のサンドイッチは直ぐに食べ終えて真をキラキラとした目で見つめるデルガとアグリード。
「「他に…何かありますか!!」」
この時に真が2人に対して腹ペコキャラの疑惑を持った瞬間だった。
「次は……これだな。ほい」
それぞれ同じサンドイッチを渡す。
渡したサンドイッチはフルーツを挟んだ真の大好物であるフルーツサンドだ。
挟まれているフルーツは王道な苺だった。
「美味しいです!主!これは病みつきになります!」
「中々どうして、この美味しさはまるで姉上の本気のパンチかの様な衝撃です」
「そこまでか?」
ここまでの反応に流石の真も苦笑いを禁じ得なかった。
昼食を終える。
シート、バスケットを片付ける。
最後に喉を潤してから午後の狩りを再開させた。
ワザとモンスターを集めて多対一の戦闘を無理矢理を再現をする。
自身だけの型を身に付けた所で、それをどんな状況でも繰り出せる様にならないと、万全ではないからだ。
「主!頑張って下さい!いつでもデルガが助けますよ!!!」
(ゴブリンやウルフ系のモンスターに遅れをとるほど俺のステータスは低くない。過保護というか心配症なのか?デルガは?)
駆け出す
全てのモンスター相手に練習している型をいちいち叩き込むのではなく我流の戦い方の中で無理をせず、自然に繰り出せる瞬間にだけ出すという感じだった。
真正面から飛びかかって来たゴブリンの攻撃を短剣を交差させて受け止める。
止まった時に胴体を蹴り飛ばし後続のモンスターにぶつける事で時間を稼ぐ。
次は左から飛びかかって来たウルフを右手に握っている《紫紺の短剣》で刺して防ぐ。
そこから居合のように斬り払うと、振り切った先にいる事を確認している別のモンスターに調整して当てる。
この攻防で2体のモンスターが絶命する。
このダンジョンに出てくるモンスターに自我はない。仲間が死のうとも真に襲いかかる。
躱し
斬る
躱し
蹴る
躱し
斬る
そして絶好のタイミングで型の体勢になる。
少し大きめのゴブリンを相手に定めて振り上げた短剣を勢い良く下ろす。
右腕が落ちる
次は振り下ろした短剣を斬りあげる
今度は左腕が落ちる
最早抵抗が出来なくなった所で左に握っていた《毒鳥の羽剣》で首を斬り落とした。
即座にその場から跳び離れる。
目の前にいる雑魚全てを目視して短剣を構えた。
「お前らには…短剣術獲得の糧になってもらう」
再度駆け出してモンスターと交戦をする。
戦闘が終わりステータスを開く
【短剣術】
その文字が真のステータスに浮かんでいた。
「よしよしよっし!!!【短剣術】ゲットぉ!!」
「おめでとうございます主!努力が身を結びましたね!!」
「素質が無ければスキルとした発現する事はまずありえませんから。主は素質があったという事でしょう。喜ばしい事です」
2人は何度も頷き真のスキル獲得を喜んでいた。
少し照れながら【短剣術】のスキル効果を確認する。
【短剣術】
短剣使用時
筋力+10 俊敏+20
凄い効果だった。
2つの項目だけとはいえレベルが10と20上がったのと同じだけの効果だからだ。
(あと、少し……あと少しで響の治療費も貯まる。そうすればまたアイツが陸上で笑う姿を…………)
真は響の治療費が後少しで貯まる事に何故か緊張してしまい顔が強張ってしまう。
その真に気付いたデルガは声をかけた。
「主?大丈夫でしょうか?」
「あ、あぁごめん。少し疲れただけだ。狩りを続けよう」
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