第28話 相談



ゲートから出てハンター協会まで走る事5分

真達はハンター協会の目の前にいた。

躊躇う事なく中に入りハンター協会の受付に向かう。


「すいません。荒鐘真ですが……」


「え、荒鐘……すいません!会長を呼んできますね!」


真が受付嬢に名前を告げると慌てた様子で奥に走って行った。


「主何かここにようが?」


「古豪会長にランクについて少し相談をね」


「ランク?」


少し2人と話していると奥から受付嬢が戻って来る。


「荒鐘様こちらへどうぞ」


別室に真を案内する受付嬢は少し緊張していた。

緊張するのはそうおかしくない事だった。

先日起こったSランクハンターの紅葉1人ではまともに対処出来なかったダンジョンの決壊にお供が3人付いたとはいえ被害を最小限に抑えた人物だったからだ。

真はまだ知らないがハンター協会の間では古豪会長から直々にSランクハンターと同等と思って振る舞えと達しが来ている程だ。


「着きました。このお部屋に会長がいます」


「ど、どうもありがとうございます」


丁寧な受付嬢の言葉と仕草に少し驚く。

部屋に入るとそこには古豪会長とその秘書がいた。


「荒鐘君久しぶりだね。何か相談事かね?」


「あ、そのランクの事ですが」


「ランク……あ、今のランクでは低ランクダンジョンにしか潜れないからランクの審査を受けたいと?」


察しがいい古豪会長は一瞬にして真の頼みの内容を看破する。

あまりの察しの良さに顎が引けたがそのまま話し続ける。


「いきなり高ランクにしろと言うわけではなくですよ?FランクのままなのでE、Dランクに上がる為の試験を受けたいんです。やっぱちょっと我儘に過ぎますかね?」


念を押すように真はいきなり高ランクにはするなと伝えた。

少し欲張り過ぎてたかという様な真の表情に苦笑いをして古豪会長は答える。


「その程度か、全く構わない。なんならDランク試験をクリアしたら即座にCランクB、A、Sと試験を受けても構わない。なんなら今からCランクになるかね?」


「「な?!」」


その場にいた真のみならず古豪会長の後ろでずっと控えていた秘書が同時に驚きの声を上げる。

あまりにも例のない古豪会長の提案に秘書は狼狽た。


「か、会長!それはいくら何でもやり過ぎです!日本最年少Sランクの紅葉さんでさえしっかりと手順を踏んだんですよ?!それを無視するのは!!」


「荒鐘君の力が信じられないのかね?」


「当たり前です!!調べればほんの少し前にハンターを始めたばかり!レベルと対して上がっていない筈ですよ?!それに!ダンジョン決壊を止めたうちと1人と言われていますが!助けられただけに決まっています!!」


秘書の真へのあまりの評価にデルガとアグリードは顔を顰める。

出会った当初なら直ぐに手を出していたが普段から真に「いきなり手を出すな」と言われていたお陰でなんとか顔を顰める程度で押し止まっている。

古豪会長はそんな秘書の言葉を遮るように手を上げる。


「君、世の中に数えられる程しかいないテイマーという人達を知っているかね?」


「知っています」


古豪会長の言葉に疑問を抱くが秘書は直ぐ様答えた。


「荒鐘君は広い意味ではテイマーに位置するのだ」


「はい?!何をテイムしたと言うのですか?!」


秘書は驚愕の声を上げた。

裏返った秘書の声に噛み殺すように笑うと古豪会長は指を指す


「そこの2人のデルガさんとアグリードさんをだ。どういう意味かは君は知らなくてよろしい。兎にも角にも荒鐘君はSランクハンター試験を受ける資格がある。これは紅葉君からの証言でもあるんだ」


ジロリと秘書を睨む

普段から割と温厚な古豪会長の真剣でかつ威圧感のある視線に萎縮してしまう秘書。

溜息を吐き秘書から視線を外す古豪会長は真に向き直る。


「所でこんな朝早くからどうしたの?」


「いえ、この後ダンジョンに向かおうかと思いまして」


「3人で?」


「いえ、戦うのは基本僕だけです。2人は強すぎるので戦うと僕がお姫様ポジションになっちゃいますから。そうなるといざという時に自分が動けなくてポカやらかしてしまいそうで怖いんです。少しでもレベルを上げて強くならないと」


「主私達が稽古付けますか?」


「いや、まだいいかな」


真はデルガの提案をやんわり断る。

少ししゅんとするデルガに苦笑いが溢れる。


「それで今からダンジョンに潜っていきます。朝早くの訪問失礼しました」


真は立ち上がり深く礼をする。

それを見た古豪会長も真に習い深く礼をする。


「それでは気を付けてダンジョンに潜って来なさい。くれぐれも死なぬようにしてくれたまえ?君や芥君鹿島君はあのダンジョン決壊のヒーローだからね」


最後の方は悪戯をしかけた子供の表情のようになる。

もう一度例をすると真はその部屋を出てダンジョンに向かう。


「君、今直ぐに紅葉君がいる白蓮騎士ギルドに連絡を取り全てのランクで試験監督役を選ぶよう伝えてくれ。全てが決まり次第荒鐘君に連絡をいれる」


「分かりました」






真達はダンジョンにゲートの前で立ち止まっている。


「ここは報告通りならFランクダンジョン……かぁ。一回そこやばいのに出会してるからイマイチ信用できねぇ」


そう言いながら真は頭の中でアスマディアの事を思い出す。


(あいつダンジョン決壊で助けてくれたけど最近見ないな、死んでないといいけど)


軽めの装備確認をしてダンジョンゲートを睨む


(強くなるには単純なレベルだけじゃない。色々な状況に対処する力が必要)


「くれぐれと手出しするなよ?レベル上げは二の次だからな」


「「主が言うのであれば」」


「入る」


気合いを入れて真はダンジョンゲートを潜っていった。





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