第26話 青春のカケラ
昼休み
田沼に呼び出されている真は体育館裏に向かう。
教室でデルガに「私もついて行きます!」と駄々を捏ねられてしまうがなんとか宥める事に成功する。
そして体育館裏に行くと田沼にイチャモンを付けられる。
「調子に乗ってるって言うけどさ?どこがだよ」
理由を吐き出させる為に態と挑発する態度をする。
すると田沼は顔を真っ赤にさせて怒り出す。
「テメェみたいななよなよしたカスがなんでSランクハンターの紅葉詩乃と知り合いだってんだ!しかもそれだけじゃ飽き足らず見た事も聞いた事もない女も連れて歩いて!!良いご身分だなぁ!!」
(こいつ、つまり……)
「自分の周りには可愛い女の子が居ないからってまさか嫉妬か?」
田沼の堪忍袋の緒が切れた。
「死ねぇ!!!」
アイテムボックスから剣を取り出して真に斬りかかる。
真も短剣を手に取り迎撃しようとするが
真の後方から紅葉が目にも止まらない速さで駆け抜けて田沼に切迫する。
「な?!」
気付いた時にはもう遅く紅葉の拳は田沼の腹に突き刺さる。
「ゴホォッ?!」
そしてゲートから現れたデルガが宙に浮いた田沼の背後を取る。
紅葉は更に追い討ちを掛けるように拳を握る。
「貴様が」
「真君に」
「「触るな!!」」
ドゴァア!!!
紅葉の拳はまたもや田沼の腹を捉えるとデルガは地面にめり込むように
なんとかデルガのパンチで田沼が死ぬ事は無かったが白目を剥いており呼吸も浅かった。
そんな田沼を紅葉とデルガはゴミを見る目で見つめる。
「はぁ……別に何とかなったのに。紅葉さんもデルガも対応が激しすぎやしないかな?」
「私の命の恩人である真君を襲うなんて……許せないからね」
「主にもしもの事があったらどうするのですか!心配をさせないで下さい!!」
紅葉は普通の制服のままで体育館裏に来ていたがデルガは鎧まで身につけていた。
制服は着たくないと言っていたデルガは鎧のパーツを外したラフな格好で学校にいた。
鎧を付けなくとも億が1でも負ける可能性ないのに鎧を付けて来た事でデルガがどれほど真を心配しているかがよく分かった。
「紅葉さんもデルガもその優しさは嬉しいけど過保護はされたくないんだ。でも本当にヤバい時はガッツリ甘えるからそれで許してくれないかな?」
「真君がいいならね〜……」
「主がそう言うのなら」
少し不服そうではあるが何とか2人は真の言葉に納得する。
「ありがとう。よし!昼休みはまだ30分近くあるから一緒にご飯でも食べようか、学食もあるし。」
微妙になった空気を変える為提案を出す。
「学食?私お金持って来てない……?!」
「あ、主!私もお金という物を持って来ていません。どうすれば……はっ?!主1人で昼食を楽しんで下さい私は側で護衛していますので!」
「紅葉さんお金は大丈夫ですよ。デルガそれ他の人から見たら俺が酷い人に見えるからその考えは無しだ!全く安心してくれ。ハンターという職業にもう就いているんだからお金が無いわけないだろ?それにこの前のダンジョンでデルガ達が倒したモンスターから出た魔石とか売ったらもの多少の贅沢しても一生暮らしていけるほどの凄い額になったしな!!!!」
後ろの背景に『ドン!!!』という擬音が浮かびそうなほどに堂々と2人に伝える。
「これは真君と結婚すれば老後が安泰か?」
「こ、紅葉ぁ!けけ、結婚などとぉ?!?!」
「紅葉さんあんたSランクで稼いでるでしょ。デルガ俺はまだ結婚する意思はねぇ。立派な大人のイメージを持ってたのに日に日にダメ人間になっていってないか?」
ジト目で訴えるが何やらキャッキャウフフな雰囲気が治まらない。
「はぁ……」と真が溜息をついて歩き出すと2人は慌てて真について行く。
田沼を地面に沈んだままにして3人は教室に戻るため歩き出す。
体育館裏から体育館の中に戻る為に大きめのドアを開けるとクラスメイトが何人も崩れて来た。
「はぁ?」
「あいや、その」
「あはは〜……お前ら逃げろ!!」
「見せもんじゃねえー!!!」
ドタバタと躓きながら教室に戻って行くクラスメイト、その中で獅堂だけはその場で正座していた。
遠目でこちらを見ている奴らは驚愕の目で獅堂を見ている。
「嘘だろ?!」「獅堂やる気なのか!」「お前にゃ無理だって」「バカヤロォォォ」
そんなヒソヒソ声がレベルが上がり強化されている真の耳に届く
「紅葉さん」
「うぇ?何?」
「好きです付き合って下さ「あ無理無理」ごはぁあぁあぁぁあ?!」
勇気を振り絞って告白した獅堂が紅葉に食い気味に告白を拒否される。
その獅堂のダメージの受け具合は見ている者に吐血を幻視させるほどだった。
サラサラサラ…………
獅堂の青春が5秒と持たず崩れりその後ろ姿は告白を断った紅葉に煤けて見えた。
そのまま煤けた獅堂と一緒に教室に戻ると残っていたクラスメイト全員が入って来た獅堂に驚愕する。
しかし微妙な表情で教室に入って来た紅葉を見て全て悟る「告白して玉砕したんだな」と
真は時計を確認すると財布を取り出す。
「紅葉さんデルガこれをどうぞ」
2人に2000円ずつお札を渡す。
「やっぱ悪いなぁ」
「主私も……」
「紅葉さんは青春出来なかったんでしょ?ならご飯は他の女子と食べて来て下さい。デルガも合流してきなよ、もう隠す方が面倒くさいからね」
「むぅ、ここは親切を受け取るとするよ。デルガ学食という物を食べに行こう!」
「こ、紅葉あまりを手を引っ張らないで下さい…!」
元気に教室を飛び出していく。
「なんだろお札渡してる時イケナイ事を頼んでる気がして謎の罪悪感が」
「変態ーー」「サイテーーー」
そんな事を呟くとクラスの女子から弄るような罵倒が飛んでくる。
「うっさいわい!」
自分の鞄の中から家で作ったご飯を詰めた弁当箱を真は取り出すと食べ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます