第25話 転入生

「おい、荒鐘ぇ……テレビ映ったからって調子に乗ってんじゃねぇぞ」


身長を見れば190㎝

体重も90は余裕で超えてると窺わせるシルエット。

一般人の枠組みではかなり恵まれてる部類のガタイだった。

そして顔も強面という事から真が通う学校含めた近辺の高校では名の知れた男だった。


「女に背負われてダンジョンから出てくる…情けねぇよな?俺なら恥ずかしくて堪らないわ。しかも学校再開して登校も再開したら女2人として登校、なぁ?俺の名前知らねえの?ここいら近辺で1番喧嘩のつえぇ男で有名な田沼隆二たぬまりゅうじ様だぞ?」


(こいつ、ダンジョンでレベルを上げて手に入れ力で喧嘩してんのか?)


田沼はダンジョンにかなり積極的にダンジョンに潜っていた事でも有名だった。

ダンジョン内の事故でそれっきり潜っていないが


真は気絶していた為にダンジョンから出て上空の報道陣に写真を撮られている事を知らなかった。

そのため入院して翌日の朝には全国に名前と顔が広がっていた。

それを見た田沼は憤った。

田沼にはハンターの中でも最高峰のであるSランク、ましてやアイドルも顔負けする美貌を持つ紅葉、謎の騎士風の鎧を身に纏う名前の知らない女を侍らせているように見てたのだ。


しかし紅葉はともかくデルガに至ってはあながち間違いでもないのが真にとって最悪となった。







朝8時 学校登校



「おいおいおい!し〜〜ん!!あの紅葉詩乃に背負われてどうだったよーー!!」


「煩い……獅堂。昨日知ってめちゃくちゃ恥ずかしかったんだぞ……!しかもこれを見ろ!!!」


真はスマホを取り出してツブヤイターのトレンドを良く見れるように獅堂の顔を近づける


「近い近い、どれどれ〜〜『誰だあの男!僕の紅葉たんに背負われてるんじゃねぇ!タヒね』『あの男なんなん?荒鐘真?調べたけどハンターのランクはまだFだぞ?カスくね?』『住所特定したけど家凸る?』『お前らそんな事より横の騎士風の鎧着てる美女だれだよ!結婚してぇ……』『そんな事って、なんだぁ?てめぇ……』『ニート!キレた!!』う、うわぁ中々愉快な事になってんなぁ……」


「これが……これが愉快であって溜まるかよぉぉ!!朝登校する時近所の目や通行人の目がどれだけ痛かったかお前には分かるまい!」


教室のドアが開く

別のクラス女子が数人入って来ると真に群がる


「ねぇねぇ!荒鐘君!あの鎧を着たイケメン知り合いなの?!もし知り合いなら連絡先知ってたらする?!」


「し、知らない!知らないから元の教室に戻ろう!!あと5分でホームルームだから!!」


渋々数人の女子が自分の教室に戻っていく。


「獅堂、これがこれから毎日起こると思うと……胃薬の常備を検討しなきゃならん。お腹が…いたいぃぃ」


「うん、ごめん」


獅堂や周りの野次馬男子も真を不憫に思い慰める。

その慰めに真の胃痛が一緒に痛んだ気がした


ガラガラガラ


このクラスの担任であり、生徒の皆からはその体格からゴリ先生と呼ばれて慕われている。


「お前ら座れーー!!!今日は転入生のビッグゲストが3人来ているぞーー。見たら凄い驚くからなぁ!今連れて来るから静かに待っていろ!」


その転入生を呼びに教室から出て行く。


ざわざわざわざわ


教室中が誰だろー、イケメンかな!、可愛い子来てくれー!!という雰囲気になっていく

3分ほど待つとゴリ先が教室に戻って来る。


「すいません、ここで待ってて下さい……、お前らーー!転入生ははっきり言って凄い人だ。お前らの中の殆どの人はしってるだろう!朝知った者もいるはずだ!では入ってきて下さい!」


教卓の前から退き窓際に寄り転入生を教卓の前に誘う。

女性が2人、男性が1人入って来た。

入ってきた瞬間クラス中が爆発した。


「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」」


3人が並ぶ


「では自己紹介をお願いします」


「じゃあ私から!皆も知ってると思うけど一応日本で20人しかいないSランクハンターをしてる紅葉詩乃です!高校行かずにハンターになっちゃったから青春不足してるんだーー。卒業までよろしくねーーー」


紅葉は人生で初めての高校の制服にワクワクしているのか声が弾んでいる。


「紅葉終わったのなら次は私だ。私の名は荒鐘…デルガ。私は主の護衛の為に転入生とやらになっただけだ気安く話しかけて来るなよ」


クラスの一部の男子と一部の女子はその突き放すような態度に胸を撃ち抜かれたのか机の上で悶えている。

だがデルガの話をしっかりと聞いていた者は自己紹介の名前で引っかかった。


「荒鐘……」「荒鐘って言った?」「え、同じ……!」


何かを察したように一斉にクラスの端っこで縮こまる真に視線が集まる。


「姉上が終わったのなら次は私が自己紹介の番ですね。私の名前は荒鐘アグリード。主とは血は繋がってませんが事情により同じ家の戸籍に入れさせてもらっております。皆さんよろしくお願いします」


アグリードは真が主である事を強調して挨拶をすると胸に手を当ててお辞儀をした。


「「「「キャァァァァァァァ!!!!」」」」


かなり多い黄色の悲鳴が上がる。

例によって一部のクラスメイトが真に一斉に振り向く。


「席は荒鐘の周りに3席増やしておいた。家族と顔見知りだからそれが良いと思ったが大丈夫だったか?」


「大丈夫です!」


「「えぇ寧ろ嬉しい」」


紅葉が元気に答え姉弟である2人は息ピッタリに答える。

ゴリ先が腕時計を見る。


「ホームルームが終われば5分休みだ。荒鐘!3人を1時間目の間に校内全てを案内してやってくれ」


「え、授業は?!」


「校長と教室陣が出席扱いにしてくださるそうだ。それじゃあホームルームを終わる!」


「えぇ……」


(授業サボれるのはラッキーだ!!なるべく遅く案内するか!)


ゴリ先がホームルームを終えて教室から出て行く。

クラス中が真に釘付けになったまま固まっている。


「えっと…3人を校内案内しなきゃだから。来て案内する」


いそいそと3人を誘導して教室から出る。

教室から出て少し、曲がり角を曲がると真を影が覆う。

その影が人の物だと気付今日見上げる。


「お前ぇ……荒鐘ってやつか?」


その人物も紅葉を見て少し面食らっているようだった。


「そうだけど……何?」


「昼休みに体育館裏に来い。待ってるぞ?」


それだけ言うとどこかに行ってしまう。


「主、殺しますか?」


「あれは不愉快です」


「真君、まさか虐められてる?」


三者三様

しかし3人とも真の為に怒っていた。


「いや、いいよ。最終手段でハンターの力使うから。そんな事より校内の案内が優先だよ!ささ行こう!」


「真君…まさかサボれるのがそんなに嬉しいの?」


「そげな事ないばい!」


「なんで方言?しかも混じってない?」



これが田沼隆二に呼ば出され昼に体育館裏に行くまでに起こった出来事だった。






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