第23話 紅葉×デルガ



真を背負った紅葉達がダンジョンを出ると辺りは戦闘音などは一切なく鎮まりかえっていた。


「モンスターは……もう倒したのか」


「紅葉さん上を見て下さい」


「上?」


鹿島の言葉にゆっくりと顔を上げる。

目線の先にはヘリコプターが何台も飛んでおり中から撮影機材を持ち紅葉達を映しているのであろう人が見える。


「これは真君も明日から面倒毎に巻き込まれるな。流石に撮影されてたら言い逃れ出来ないわ」


「それ俺達も面倒毎に巻き込まれるって事ですね」


「また取材陣が家に押し掛けようとするよ……」


「俺もです」


「「はぁ……」」


この後の事を思う2人からは深いため息が溢れた。


「紅葉さん!!」


仕方がないと諦め歩き出すと誰かが紅葉の名前を読んだ。


「ん?…夜須賀よすがじゃないか。モンスターはどうしたんだ?もう倒したのか?凄いじゃないか!」


「あいや…その、実は……」


紅葉は同じギルドの後輩である夜須賀に良くやったと笑顔で称賛を送ると歯切れの悪い解答をする。

その様子を不審に思った紅葉は怪訝な表情になる。


「夜須賀どうしたんだ?白蓮騎士ギルドが主導して倒したんじゃないのか?」


「実は顔を隠した騎士風の鎧を装備した謎の人物がモンスターを瞬く間に倒していったんですよ。その人のお陰で私達はここ1時間ほど暇してます」


「1時間?!本当にモンスターは掃討出来たのか?!」


「はい。何人もの探知の魔法を使えるハンターを総動員して探しましたが1匹も見つかりませんでした」


「1匹も?!それはまた………あ」


「どうしたんですか?」


話の途中で紅葉は思い出す。

つい最近自分自身を助けた存在はアグリードとは別の存在なら可能なのではないか?と


「心当たりは1人だなぁ……。それでその人は?」


「それが見つからないんです」


「見つからない?」


「ほうなんですよ。いつの間にかどこかに消えてしまっーーーー」


『ここにいる』


何かを隔てて喋っている女性の声が響いた。


バチバチバチ


そして紅葉と鹿島はダンジョンの中で何度か見た光景を目にする。

赤・黒・い・ゲートがどこかはともな出現しその中から鎧姿の人が出て来る。


紅葉はその人を見上げる。

紅葉自身女性の平均的身長から比べても169㎝と高いが目の前の騎士風の人は少なく見積もっても180㎝はありかなりスタイルが良かった。


「あーーー!!!!この人です紅葉さん!この人がモンスターを色々と倒してくれたんですよ!!」


「あーー、貴方が街の人々を救ってくれたんですね?不足ではありますが代表して感謝します。ありがとうございました」


頭を下げて感謝を伝える。

中々頭を上げない紅葉に夜須賀は慌てふためく。


「こ、紅葉さんがそこまでする必要はありませんよ!感謝ならこの後政府の人がしてくれますって!」


夜須賀の言葉に紅葉は怒りが溢れる


「この街ひいてはこの私の恩人を目の前にして無視をしろと?!目の前のこの方が恩人だというのなら感謝の1つはしないと失礼だろう!!!恥を知れ!!」


夜須賀は初めて憧れの先輩に本気で怒られた事に戸惑いながら怒られたという事実を認識してその涙目になる。


「そんなっつもりは無かったんです…!ごめんない!」


「謝るのなら私ではなくこのお方に謝れ」


「はい……この街を救って下さりありがとうございました」


精一杯頭を下げる。

『ここにいる』の一言から何を言わなかった目の前の人物が夜須賀からの謝罪を受ける取ると顔を覆っている兜の魔力を解き素顔を現れにする。


「貴様の謝罪などどうでも良い。目の前から消えろ。それよりお前の背中に背負っている人間は荒鐘真で相違はないか?」


「そうだけど貴女は……真君のなんなんだい?」


「私の名前はデルガだ。それにしても貴様如きが主を君付けで呼ぶとは…不敬も甚だしい」


キレているのかデルガのこめかみがひくひくと動く


「別に後輩を君付けで呼ぶ事は不敬でも無いし普通だよ」


「不敬か不敬じゃないかは私が判断する。………(この世界じゃ君付けは普通なのか?)」


小さな声で紅葉に耳打ちする

紅葉は突然のデルガの奇行に驚くがニヤリと笑うと返事をする。


「(まさかと思うけどデルガさんも真君って呼びたいの?)」


「(当たり前だ!!主と呼んでは居ても私も女だ。あまり言いたくないが少しだ、ほんの少し好意を抱いているからな)」


恥ずかしいのか早口で告げる


(ははーーん!)


「デルガさんデルガさんちょっと…………」


耳うちをデルガにすると爆発したように顔が赤くなり挙動がおかしくなる


「ななななななにぇを言ってるだ!!そ、そんな事出来るわけないだろう?!」


「やってみましょーよーー」


今さっきまで凛々しく近寄りがたい印象だったデルガは恋する乙女のように慌てていた。

それを見た夜須賀の頭の中で何故が猫と鳥が踊っていた。


「あの……取り敢えずゲートの前で話さずにここを離

れて病院に行きませんか?治療とかも必要でしょうし上に報道陣もいます」


「あっそうだな行こう」


「ま、待て紅葉上の奴は何なのだ!ずっとこちらを見ている!敵か?落とすか?!」


まだ混乱が収まっていないデルガがやばい事を言い出しが紅葉が諫める。

デルガが落ち着くとゲートから離れる為歩き出すその時ダンジョンゲートが歪みだした。

すると上の報道陣や夜須賀、紅葉までもが慌て出す。


「な、何が起こってーーー?!」


「安心しろ、紅葉。帰って来ただけだ」


「「「帰って?」」」


あまり紅葉、夜須賀あまり会話に参加していなかった鹿島がデルガの言葉に反応する。

3人がデルガを見ているがデルガはダンジョンゲートをじっと見ている。

グニャグニャとゲートが動くと中からアスマディアを背負ったアグリードが出てくる。


「アグリード予定よりかなり遅い」


「姉上やばい事になりました」


「やばい事?」


「…大事な話があります」


「分かった。取り敢えず主を安全な所に移動させる。紅葉、病院?とやらに主を案内してくれ」


「当たり前だよ」


紅葉の背中で気持ち良さそうに寝ている真を起こさないように高速移動はせずに歩いて病院に向かっていった。




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