第22話決着
無理矢理に魔法陣を完成させた事よって威力が数段落ちた雷撃がアグリードとゴレマスに襲いかかる。
「「【アクセラレーション】」」
2人は最小の魔力だけで数秒間の間超加速する魔法を使う。
何十も降り注ぐ魔法の雨の中を2人は針に糸を通すような正確さで駆け抜けていく。
「【クリエイト・ランス】!」
アグリードは自身が最も苦手とする魔力で武器を生成する魔法を使う。
「ゴレマス!援護を!」
「分かった」
ほんの少しだけ出来た余裕で確実な意思疎通をする。
アグリードが少し後ろに下がるとゴレマスが前に出てヴォルフレーの魔法をアグリードに当たらないように全て叩き落としていく。
充分な加速が得られたアグリードは思い切り神殿の床を蹴り飛び上がる。
加速した勢いがなくなる訳ではなくそのままヴォルフレーの頭上を通過した。
(背後を取るつもりか?!)
ヴォルフレーはアグリードが何をするのか瞬時に判断をしてゴレマスに攻撃魔法を放ちつつ迎撃する為の魔法を即座に用意した。
しかしアグリードは単純に後ろを取る事では無かった。
「【エクスプロージョン】」
クリエイトした槍に【エクスプロージョン】の魔法を込める。
そして空中に魔力で足場を作りそこに右足を乗せる。
加速した事により右足にかかる負担は計り知れなく軋みを上げた。
体を捻る。
ヴォルフレーに対して背中を向けていたのを反対に向き直る。
左足で踏ん張るためにもう一つ足場を作り乗せる。
(もう一度重ね掛けを…!!【エクスプロージョン】!)
ここまで来てヴォルフレーも異変に気気付く。
(槍の撃ち下ろしか?!迎撃などでは……!)
咄嗟に1番魔法陣構築が早い初歩の防御魔法である【プロテクション】を発動する。
悪魔族は魔法で身体能力を強化せずとも人間の身体能力を遥かに超えている。
人間がどんなに必死に技術を用いて槍投げをしようが悪魔族は適当に投げた槍が人間の倍を行く。
それをアグリードは全開で自身に強化を施しつつ本来なら悪魔族がたかが槍投げに使わぬ技術を使う。
そしてそこに更なる上乗せをする。
「爆ぜろぉぉ!!【エクス…プロージョン】!!!!」
爆裂魔法である【エクスプロージョン】を加速に用いてそれを放ち際に更に重ねて発動する。
三重掛け
ただ発動するだけでも人間の中で最高峰であるSランクハンターである紅葉詩乃を瀕死に追いやる威力がある。
それを加速に用いるともはやアグリードでさえ視認が出来なかった。
投げられた槍は刹那の時間でヴォルフレーの【プロテクション】に到達する。
ガリッ
ゴレマスの事は何も考えず【プロテクション】に全魔力を集中させてアグリードの一撃をガードする。
「……っぉぉぉぉおおおおおおおおあおおおおお!!!!!!!!!」
このダンジョンで真達と接敵してから遊び半分で叫んだりはしていた。
ワザと希望を持たせる為に。
だがしかし
この瞬間は間違いなく恥も外聞も捨てて全力でアグリードからの一撃から自信を守る為に咆吼した。
【プロテクション】ごとヴォルフレーを押しやり神殿の壁に背中が触れると同時に武器が大爆発をする。
起こった大爆炎は神殿全体を埋め尽くす勢いで発生する。
「「【プロテクション】!!!」」
アスマディアが爆炎に巻き込まれないようにゴレマスとアグリードは瞬時に防御魔法を自身とアスマディアに五重掛けする。
第一は爆炎で【プロテクション】が2枚割れる。
第二は爆風で【プロテクション】が1枚割れる。
第三は瓦礫等か飛んで来たが【プロテクション】は割れなかった。
爆煙が上がる。
アグリードはふと足元を見ると短剣が2つある事に気付く。
自分の武器を仕舞い短剣を拾い爆煙の先にいるであろうヴォルフレー向けて走り出す。
まだ視界不良な事を煩わしく思ったアグリードは魔力を空間全体に広げる事でヴォルフレーの場所を瞬時に探知する。
(あそこだ!!)
反応した魔力が壁際で微かに動く。
もう何もさせないとばかりにヴォルフレーに近づくと両手を切り落とし短剣を首に交差させるように構える。
「終わりだヴォルフレー。最後だ……何を企てているのか、またその首謀者を教える気はないか?言うのならばお前を殺した後魂は回収せずに輪廻に回してやる」
アグリードは悪魔族にとって最大の脅しを言い放つ
しかし目の前の悪魔族であるヴォルフレーは脅しに屈せず唇を無理矢理引き上げる。
「こんな…死に体の……老人に脅しとは…………騎士の名が泣くんじゃないか?悪魔族の異端一族め」
「御託は言い!!答えろ!!」
「そうだな俺も聞きたい」
ゴレマスが武器をしまった状態で歩いてくる。
「っ!ゴレマス!武器くらいは抜いていろ馬鹿!」
「この状況で俺が武器を抜かなきゃならん事態になるのか?」
「……させる訳がありません」
ヴォルフレーから一目も離さずにゴレマスと会話をする。
「ならいいだろ?ヴォルフレーのじじぃ、答える気はないのか」
「………あの方に……背くわけには…イカン」
「答える気は無いんだな?」
「当たり前だ…ワシはあの方に何百年仕えて来たと思ってーーーーーー」
「アグリード」
「おりゅっ」
ゴレマスがアグリードの名前を呼ぶと交差させていた短剣をノータイムで引き、その首を落とす。
静寂が神殿型ダンジョンを支配する。
もう神殿中からモンスターの気配は一つもしなくなっていた。
「アグリード俺は直ぐに魔界に戻る」
「そう…ですか。久しぶりなのでもう少し話をと思っていたのですが」
「またこっちに来る用事があるからその時頼むわ」
「分かりました。ならば貴方のお父上に宜しく言っておいて下さい」
「おうよ」
バチバチバチィィ
お馴染みになった赤黒いゲートが現れる。
もう言葉は不要とお互い思っているのかゴレマスはゲートに入り魔界に帰って行った。
「アスマディアさんを背負わないと行けないのは…少し面倒くさいですね」
思わず苦笑いを溢す
アスマディアを背負うとアグリードはダンジョンの出口へ歩いて行った。
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