第16話接敵




ゲートに突入する。

今まで見て来た中でも遥かに赤黒いゲートを潜った先は神秘的にさえ感じる神殿だった。

それを見てSランクで情報も1番持つ紅葉は瞠目する。


「聞いていたと違う……報告ではフィールド型のダンジョンだって!!!」


「………ここまで完全に近い神殿型ダンジョンは初めてです」


「情報と違うのなら世界で2例目に確認された内部構造が変質する進化型ダンジョンだってのか芥!!」



紅葉が狼狽えて鹿島が吠えた。

フィールド型ダンジョン

ボスが存在せずそこそこ強めのモンスターとダンジョンコアが有るだけのダンジョン。

その中はゲートが出現した周辺の地形を完璧に再現されている。


そして進化型

洞窟型、フィールド型から突然変異するダンジョンの事だ。

確認された例は半世紀以上前に起こった時以来である。

その時はダンジョンランクがCランクからAランクになり当時Sランクが3人もおらずその場にいたSランクハンターだけでなんとかなった。

出た被害は記録されているだけでハンター、一般人含めて21万人とされている。

それがデルガとアグリードと同じ悪魔族だったいう報告も


「もしかしたら…私達だけじゃ足りないかも知れない、かも」


「やばそうだったらアグリードかデルガに頼みますよ」


「今すぐじゃ……ダメか?」


「無理っす」


肩を落とす紅葉

周りを見回してから真が口を開く


「何故モンスターがいないんですか……ね?!」


ガギンッッ!!


突如飛来した物を《紫紺の短剣》でなんとか防ぐ

そこから芥と鹿島がすぐさま戦闘態勢に入り紅葉は静かに自分の獲物を抜刀した。


投げられた物を見るとそれは


「剣?」


《紫紺の短剣》や《毒鳥の羽剣》、鹿島に渡した長剣と比べると見るからに劣る代物。

しかし異常だった


(音が殆どしなかった……!!)


紅葉はその剣の来た方向を強く睨む。


「真君…でいいんだよね?」


「え、は、はい!」


突如名前を呼ばれて真が焦る。


「よく防いだ」


紅葉の顔をチラりと見るとその瞬間思わず背筋が凍る

そこにはSランクハンターたる所以とでも言うべき圧倒的なオーラ放つ紅葉詩乃がいた。


紅葉がおもむろに剣を拾うと飛来して来た方向と同じ所に向けて全力で投擲をする。


パンッ


ソニックブームでも起きたのか乾いた音が鳴ると風も吹き荒れた。

音速で神殿の奥に突き進む剣見えなくなると金属同士が交わる音がする。


そして数秒すると目の前にゲ・ー・ト・が現れた。

見慣れた光景に目を開く真。

中からアグリード達と似ているが確かに違う意匠の鎧が現れる。


『今……俺に剣を投げ返して来たのは誰だぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!』


魔力、殺気、暴風が一気に5人を襲う。

しかしアグリード咄嗟に指を鳴らすと魔力防壁が作られて5人の体を守った。


お礼を言いたいがそんな余裕がない4人

何故なら目の前の存在は体感とはいえアグリードと同じ領域の強さを感じたからだ。


『へぇ、誰かと思えば懐かしい顔がいる』


ガチャという音を立て一歩踏み出すそれと同時にアグリード以外の4人の脚も下がる。


『久しいな?アグリード』


「「「「なっ?!」」」」


アグリードの顔見知りという事実に4人は思わず混乱する。


「声を掛けて来てなんのつもりだ。ゴレマス」


ゴレマス

それが目の前の鎧の名前だった。


『おいおいおいおいぃ〜〜何のつもりもクソもねぇだろ?なんでお前人間側にいるんだよ!お前も悪魔族だからど〜〜考えてもこっち側だろうがよ!』


「私の一族はある血筋と契約した……そして私はその血筋の者に仕えている!!!」


初めて聞くアグリードの怒りの声

理性は残っていいるおかげで抑えられているがそれでもその圧倒的すぎる魔力が漏れ出ていた。


『っおいおい!俺はお前と敵対するつもりはねぇ!ただ俺の意見を言っただけだろうが!』


かなり焦った様子でアグリードを嗜める

指摘されたアグリードは深呼吸をしてから今一度目の前の存在を見る。


「ゴレマス……貴様よもや私がいる前で人間を襲おうつもりか?それにいい加減そのマスクを外せ声が聞き取りづらい」


頭に纏う魔力を解くゴレマス

その中からはイケメンフェイスが出てくる。


(悪魔族っめ全員顔がええんか?)


(うっわ……イケメン)


真は謎のツッコミ、紅葉はその顔の良さに思わず吐息を漏らす。


「何故こんな所にいる?お前はあ・ち・ら・側にいるのでは無かったのか?」


「いや、こちら側に一部の上の奴が反乱の準備をしていると報告が入ったからな。それの処理に来た」


「一体誰なんだ?」


「それは…来たぞ!!!」


更にゲートが開く

そこからクラスターデーモンやらハイオーガ中にはオーガキング等が出てきた。


「「なに?!」」


そして最後に1人の男が出てくる。


「よもや…勘づかれるとは思わなかった」


枯れた老人の声。

しかし威厳に満ち溢れていた。

ゴレマスとアグリードはその姿を認識すると声を上げる。


「「主様てめぇらぁ!!!全力で警戒して下さい(しろぉおぉ)!!!!」」


2人が大声で警戒を呼びかけると老人の背後に無数のゲートが開きそこから更にクラスターデーモン級のモンスターが出てくる。


ゲートが閉じると更にまたゲートが開き今度は単体戦力Sランクハンターと同等のシングルナイトと言う最上級のナイト型モンスターが軍隊で出てくる。


「これは………」


あまりの光景に絶句する紅葉含める4人。

口を震わせながら真が口を開く


「アグリードお前は俺の事を気にせずに全力であの親玉を叩いてくれ。倒せるだろ?」


「倒せますがしかし!!!!」


「アグリード親玉を叩け!そしてこのダンジョンからモンスターを1匹もだすな!!」


真の覚悟を決めた声に一瞬声を失う。


「お前がアグリードの主か、アグリードに免じて今回はお前を守ってやる。アグリード俺じゃアイツを倒せねぇ。代わりに頼む」


「分かっています」





「いけ」


老人の無慈悲な声が響きSランクモンスターの大群が真、芥、鹿島、紅葉にゴレマスが加わった5人がぶつかる。



そして老人とアグリードが対峙する。


「ふぉっふおっ。ただの小僧が勝てると?」


「主の願いを叶えるまで……」


魔力を放出する。

右手に集まり己の半身とも言える武器を形作る。


「……殺す」


殺意がぶつかり2つの戦いが始まる




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る