第17話シングルナイト



激しい攻防が続く

芥、鹿島、真の3人は死に物狂いで連携をしてSランクモンスターを倒していく。


少し離れた位置で紅葉詩乃は1人でB〜Sランクのモンスターを相手している。

本気を出しているのか何でもない剣の一振りがAランクモンスターを即死させ、Sランクモンスターの腕や脚を斬り飛ばしている。


圧倒的だった。3人よりも遥かに

だが、傷が増えてゆく。

たった1人で大群のモンスターを相手にしているから隙が出来るのも仕方がなかった。


真、芥、鹿島を襲って来るモンスターは紅葉詩乃が相手取るモンスターと比べて見劣りするが、それでも最高Aランクはあった。

紅葉詩乃と比べ傷が少ないのでは死に物狂いの連携があったからだ。


「離れて!!」


芥が手に集めた魔力を前方に放つ。

ライフルの銃弾の様に回転が加わり貫通能力が増してBランクやCランクのモンスターを纏めて経験値に変える。


「ふっ!」


両手に握っている剣のうち一振りをモンスター群に投げる。

そしてそのままガムシャラに剣を振る。

鹿島の離れた所でモンスターが死に、自身の目の前でも同時にモンスターが死んで行く光景は以前の鹿島を知る者は開いた方が閉じなかっただろう。


そして真

この3人の中で1番の火力を持つ芥の護衛兼モンスターの討伐サポート。

一撃で殺すのではなく脚の腱、目を使えなくし後続から来るモンスターの進行を邪魔物を作りつつ芥の魔法の完成の時間を稼ぐ。

そして芥が撃ち漏らしたモンスターを迅速に処理していった。


「くそっ!多すぎる!」


「荒鐘さん大丈夫ですか?!」


「まだ全然大丈夫ですよ!モンスターが経験値に変わっていくのが楽しいくらいです!おわっとと!!」


体勢の崩れた真に襲いかかったオーガを芥が灰に変える。


「っ!すいませんでした!!」


すぐさま復帰して芥の援護に回る。


苛烈

ひたすら苛烈に目の前のモンスターを殲滅していく3人に多少怖気付いたのかほんの少しモンスターの進行速度が遅くなる。


戦い開始から10分

何故Sランクの進化型ダンジョンで真達がまともに戦えていたか。

それはこのダンジョンで出会った初対面の男のおかけだった。


「どけどけどけぇぇ!!雑魚がぁあ!!!」


槍を縦に振れば直線上にあった空間まるごとえぐり取りランクに関係なく経験値になる。

刃先に魔力を込めてモンスターに突き刺し解放すると神殿の空間を何十mと消し飛ばす。

そんな男が真達が対処出来ないSランクモンスターだけを殺していたからだった。


だが1匹たった1匹のモンスターがゴレマスの所に向かわず3人の所に歩いてゆく。



《シングルナイト》


ナイト型モンスターの最強格

ナイト型のモンスターはその強さによって数字をつけられている。

6番目シクスィナイト

5番目フィフスィナイト

4番目フォースィナイト

3番目サードナイト

2番目セカンドナイト


そして真達に歩み寄っている。

最強のナイト型モンスター


《シングルナイト》


その佇まいはどこかデルガを彷彿とさせる。

抜剣し3人の火力の要である芥に急迫し剣を振る。


カキンッ!


「抜け目ねぇ…なっ!!」


シングルナイトの剣を受け止め言葉を返すと同時に押し返す。


バランスが崩れた瞬間姿が掻き消える


「あくっーー!」


ゴッ


「ぐぅうぅうぅぅぅ!!!!」


シングルナイトがいつの間にか芥に近付き蹴りを放っていた。

体がスーパーボールの如く神殿の柱やら壁に当たり跳ねる。


そして地面に転がると血が流れ出し動かなくなる。




陣形が崩れる


「な?!おい!ってくそっ!数が多すぎだろぉぉぉ!!!!」


ゴレマスが叫ぶ。


陣形が崩れる

真達に襲いかかっていた分がゴマレスに向き、ゴマレスはその場から動けなくなる。

シングルナイトは真達に襲っていたモンスターがゴレマスの所に向かうまでじっと動かずに佇む。


空気が軋む





鹿島が仕掛けるそれに続き真もシングルナイトに挑む。


剣を投げ遠隔斬撃をする。

すぐさまシングルナイトが鹿島に近づくが真がそれを阻む。

何度か剣を交え大振りの一撃が来ると大きくその場から跳躍して逃げる。

一瞬出来た隙に鹿島が遠隔斬撃でシングルナイトの剣を抑え手に持つ剣で斬りかかる。


鹿島の剣が肩を捉えるが斬り裂くことは叶わなかった。


「グゥゥ…ガァアァァ!!!」


初めて声を出す。

砲声したのは何故か、己の鎧に傷を付けた怒りか。

自身が本気を出すべき相手だと判断したのか分からない。

しかし魔力が溢れてその体を覆ってゆく。


少しガタイが良かった鎧が徐々にシャープになり人間の皮膚がそのまま鎧に変化したのかと錯覚するほどまでになる。


「グァア!!」


2人対1人の戦いがより苛烈になって行く。


一振りで地面を削り取る斬撃

それをスレスレで避ける真と鹿島、挟み込む様に回り込み同時に斬りかかるが避けるまでもなく刃がその鎧に阻まれる。


「硬すぎだろ?!」


真が持つ《紫紺の短剣》さえその鎧を斬り裂く事が出来ず微かな傷を付ける程度だった。


全身から魔力を放出して2人を吹き飛ばす。

また仕掛ける


何度も、何度も

斬る

避けない。


斬る

防がれる。


斬る

反撃を喰らう


「「ごはぁ?!」」



2人が膝をつく


シングルナイトが歩み寄りその剣を掲げる

振り下ろそうと手を動かすと、シングルナイトに声が掛けられる。


「ちょっと〜私のハンターの後輩に手を出さないでくれる?」



ッッッガン!!!!


紅葉の蹴りを左手で受け止める。


「グルルルルァァ………」



着地する。


SランクモンスターとSランクハンターが相対する。

立ち直った鹿島と真も紅葉に合流する。


「真君、鹿島さ〜ん。ここから本番だよっ」





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