第12話危機の到来
誘導したシクスィナイトがそれぞれ剣を振り上げる。
剣が振り下ろされると同時に一歩下がりギリギリで避ける。剣が地面に食い込むと、まだ剣を握っている間に脚に体重を乗せて剣を踏む。
普通の靴だと脚が斬れ、動けなくなったその場で滅多刺しにされる。
だが魔力が込められている特殊な靴、Eランクモンスターの剣程度では微かに傷を作る事しか出来ない。
真は剣が更に地面に食い込みバランスを崩したモンスターの首を短剣で斬り落とす。
他のモンスターはその間に剣を地面からなんとか抜いて構えようとしていた。
だが構える前に近くのモンスターに首目掛けて短剣を投げ走り出す。上手く刺さりよろめいた所を追い越す瞬間に短剣を掴み振り抜いてモンスターを倒す。
(後2体……短剣に頼らずやってみるか!)
短剣を仕舞い拳を構える
上段構えをしながら走ってきたモンスターと対峙する。
初ダンジョン時潜る前によくモンスターの行動パターンを調べたのを思い出す。
Eランクのモンスターは殆ど決まった動きしかしない。それに比べDランクモンスターはEランクモンスターの動き+αをする。
普通のハンターなら必ず武器推奨だが行動パターンを完全に記憶し既にDランク相当のステータスを持つ真には徒手空拳も可能にする。
さっきと同じように剣に振り下ろしてくる。
相手の背後に回るように高く跳び避けると剣から片手離して裏拳を放ってくる。
モンスターの手首を左手で掴み右手を肩に掛ける。
そして片足を添えるように背中に置くとDランクのステータスを存分に発揮してモンスターの腕を根元から思い切り折る。
「ル、ォオォォオォオ!!!!!!」
痛みを感じるのか叫びながら蹲るモンスター
とどめを刺そうとすると背後から残りの一体が攻撃を仕掛けてくる。
ステップで距離を取るとすかさず接近し両肩の関節、胸の鎧を殴り壊す。
膝を着くとダラリと腕を垂らしたまま動かなくなる。
宙に跳び体に回転を掛けながら全力で蹴りを放つ。
「うっ……らぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ガゴッッ!!
歪な音が鳴り響くと兜が中身と一緒に吹き飛んでいく。
壁にぶつかり勢いがなくなると地面転がる。
4体いたうちの3体は既に魔石に変わっていた。
「思ったよりDランクのステータスは高いんだな」
吹き飛んで行ったモンスターの頭を見て呟く。
既に消えていて残った体の方にドロップ品が転がっていた。
「残り一体」
蹲って動けないモンスターの元に行く。
もう戦えないモンスターにまでステゴロを試すのは意味がないと判断し短剣を取り出す。
そして首に当て力をほんの少し入れると豆腐のように刃が通りドロップ品の魔石に変わった。
全ての魔石の拾い専用の袋に入れているとふと考えるがよぎる。
(魔石が出る確率や詳しい条件が分かっていない……今度デルガとアグリードに頼んで条件を探ってみるか)
「獅堂!終わったか」
「動きが途中まで一緒だったから裏拳には油断した、腹にいいの貰ったよ」
お腹をさすりながら拗ねた表情をする。
「ま、いい経験になっただろ?いいの貰ったって事は事前にモンスターの特性とか学ばなかったのが悪い」
「うぐっ、だけどどんなモンスターが出てくるか分からないと目星の付けようがないじゃないか?」
「俺が調べた限りだと低ランクのダンジョンはゴブリン、ウルフ系1種、ナイト系2種が殆どだからそこらを覚えるだけでいいの」
真に言い負かされ珍妙な動きで悔しがる
「なんだその動き」
「なんとなくだ。そんな物に意味を見出そうとすんじゃねぇ」
「は?」
「お?」
馬鹿をやり終えてステータスの確認をする
獅堂のレベルが1つだけ上がっていた。
「あと4つか、今日中に上げ切りたいからサポートしてくんね?」
「なら俺がタゲ集めたあと動きを軽く止めるからその隙に確実に仕留めろよ?複数相手ならさっきにみたいに俺にタゲ集めてる時にモンスターの背後から首をスパッといっちまえ」
「ありがてぇ……面目ねぇ……!」
「どんなキャラしてんの?」
このあと何回か休憩を挟みながら探索をして昼過ぎの3時に獅堂のレベルを上げ切った。
「マージで今日は助かった!!アイテムボックスも取れたしこれから快適生活が遅れる!!!何かお礼させてくれ!」
「彼女紹介して」
「お前にゃ無理だ」
「………!!!」
無言で膝をつき何度も地面を叩く真は涙を流していた。
どこかのAランクダンジョン
「クソックソッ…!!なんでこんなモンスターが多いんだよ!このレベルはSランクだろ?!A・ラ・ン・ク・ダンジョンじゃなかったのか!!!!」
「オルマ黙って逃げろ!!先輩が命張って俺達を逃してくれたんだ!なら絶対生きて帰るのが道理ってもんだろ!」
悪態をつく青年を逞しさ溢れる女性が叱りつける。
そんな2人の背中にはそれぞれ深い傷を負っている人がいる。
「ユーリや弾馬はずまがこんな状態だ早く帰って治療を優先。そして報告しなきゃならねぇ」
青年が喉をゴクリとならす
「ダンジョンが決・壊・したってな」
真や獅堂が探索を終えて魔石の換金を行った次の日の登校している時間帯と同時刻どこかのAランクダンジョンが決壊し真達に未曾有の危機が迫っていた。
「は?」
教師から発せられた言葉に教室全体どころか学校全体が凍りついた。
各クラスの担任は青い顔で生徒に事実を伝えた。
「つい先程ハンター協会から緊急の連絡が入った。2つ隣の区に存在していたAランクダンジョンが決壊してモンスターが溢れ出した。近くのハンターをランク、年齢を問わず召集してなんとかギリギリの所で区から出るのを防いでいる」
「せ、先生!なんとかなるんですよね!」
女子委員長が手を挙げて発言をする。
それを見た担任が首を横に振る
「残念ながら確実ではない。決壊したと言う事はそのランクに止まらないという事、つまりAランクダンジョンではなく国家が対応しなければいけないダンジョン」
「Sランクです」
1時間が生徒は全員帰宅していた。
そして更に離れた区の連携している区に避難していた。
そんな中真はデルガとアグリードを連れてその現場に走って向かっている。
一応ハンターである獅堂は流石にレベルが足りなさすぎると言う事て召集はされなかった。
「Sランクなら経験値も稼げるしレベルが上がればデルガもアグリードも目立たなくなる。急ぎたいけど人の足じゃあな」
「主、もし良ければ私はその現場まで運びましょうか?一切揺らさず現場にたどり着いて見せます」
「よし頼んだ!!」
一際大きなジャンプをする。
体が落下を始める前にデルガが真を回収して建物の上に移動する。
「5分でつけ!」
デルガが体に魔力を回して霞む程の速さで移動を開始した。
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