第8話終息
ピーポーピーポー
警察や救急車、更にはハンターが合計で60人以上集まる。
警察は一応は一般人だが中にはハンターを引退して元ハンターもいる。これによりハンターを呼べない状況下での対応も出来る。
救急車はデルガが応急処置をした怪我人達を運んでいる。
治療したとはいえあくまで最低限。
病院でのしっかりとした治療が必要だ。
そしてハンター。
警察のハンターより戦闘能力の面で上回るのが10、同等か少し劣るのが18人いた。
最低ランクでさえD、トップはCランクの並のハンターでさえ逆立ちしても敵わぬ戦力だ。
それが40人近くも集まっているのは一重に通り魔が彼らの間で密かに噂になっている。テロリストの可能性があるからだった。
「小鳥遊たかなし中から異常な魔力を感じるか?」
Cランクの安曇あすみ高悟こうごは同じギルドの小鳥遊に声を掛ける。
声を掛けられた青い顔で震えている。
「あ、あそこにヤバい気配がする。少なくとも俺達じゃ絶対敵わないレベルの奴が……」
「は?こっちは40人近くいるんだぞ?そんな馬鹿な話ある訳」
自分ほどでは無いにしても魔力を平均以上に感じる事が出来る安曇の言葉に小鳥遊は声を荒げる。
「魔力を感じるクセに分からないのか?!この異質さを!Aランクダンジョンを直接目の前にした時に感じる魔力と似たこの感覚を!」
「そりゃあ感じるがそれがどうした?この人数がいればAランクダンジョンもなんとかクリア出来るぞ?」
小鳥遊は友人の理解していない発言にキレる。
「だから!ダンジョン化していない建物からAランクダンジョン並の魔力が漂ってくるって事は!個人でダンジョンに相当する魔力をもった敵かもしれないって事だぞ!そんなの勝てるわけない!まだダンジョンに潜ってら方が遥かにマシだ!」
この言葉に安曇だけでなく周りのハンター達も顔を強張らす。
中には顔を絶望に染める者もいた。
「単独と決まった訳じゃないだけまだ救いはある。お前ら準備を整えろ。直ぐに突入するーー」
ドカァァン!!……パリィィイン
大きな爆発な中から起きたと思うと複数の人が落ちてくる。
「「な、何が起こった」」
「た、助けてくれぇ!あんな奴相手にしたくない!捕まる、自首するから!助けてくれ!!」
「「「「誰やお前」」」」
いきなりの展開につい周りのハンターがツッコミを入れる。
そして小鳥遊な反応する。
「何か来ます!」
バチバチバチィィ
まるで苛立っているかのう様に魔力が弾けながら形を作っていく。
「まさか……感じる魔力の持ち主?」
ハンター達が青ざめる
赤黒いゲ・ー・ト・から騎士が2人現れた。
その手には気を失って泡を吹いている男が4人の襟を掴んでいる。
「貴様らは何者だ!ハンターか!ランク、名前は!国籍は!!」
「よせ!刺激するな!」
ただの拳銃ではない魔力が篭った銃を突きつける
警官にハンターは宥める。
「主の命によりこのゴロツキ供を再起不能にした。貴様らはコイツらの身柄が欲しいのであろう?」
手に掴んでいる人を軽々と投げてよこす騎士。
それだけでもただならぬ実力だという事がハンター達には分かった。
「中の弱き者たちは無事であろう、1人弱っていた奴がいたが、最低限ではあるが私が回復させておいた。直ぐに来るだろう」
そしてそのまゲートの中に帰ろうとする騎士を見て小鳥遊と安曇は声を掛ける。
「まて!」
「まってくれ!この際事情がある事は分かった!ただ名前ぐらいは教えてくれないか!いつか礼がしたい」
「礼だと?」
「そうだ、貴女方のお陰でこちらのハンターに死傷者が出る事を未然に防ぐ事が出来たからです」
「この程度で死傷だと……名前は教えられぬが顔ぐらいは見せてやる」
片方の騎士が頭部に纏っていた魔力を回収する。
そこには凛として美しく、強いと一目で分かる女性がいた。
「これで良いでしょう。礼など不要です」
「あ、ちょっと!」
ハンターや警察の言葉の静止も虚しく騎士達はゲートの中に今度こそ帰っていった。
「何だったんだ一体…………」
「長身……凛とした瞳」
「小鳥遊?」
「…タイプだ」
ある1組のハンターに春の嵐が訪れた。
ビル群から離れ商店街が立ち並ぶ場所の路地裏
真は息を荒げながら膝を着く。
「はぁ、はぁ、はぁ、……人質を一階に案内した後バレない様に全力で逃げるのこんなにキツいのかよ」
流れる汗を手の甲で拭い、付着した汗を振り払う事で不快感を取り除く。
「デルガ、アグリード」
「「ただ今戻りました」」
「毎度思うけど名前呼ぶと直ぐ反応するから分身してる事を疑うよ」
ハハハと笑い2人に笑顔を向ける。
だが何故かデルガが気まずそうに身をよじる。
「主…その言いにくいのですが」
「ん?どうしたの?」「去り際に名前を求められたので代わりに顔を晒してしまったのですが」
(え、晒す?………顔を)
数秒間じっくり考えた後、真はその意味を理解する。
「嘘でしょ?!なおさら余計にデルガに頼ってダンジョン攻略が出来なくなったな…………バレたら絶対突っつかれる!!」
頭を抱え座り込む真にデルガはひたすら焦りまくっていた。
その鎧を着ていなければ学校の委員長が焦っている様にも見えた。
「申し訳ありません!申し訳ありません!!」
「そこまで謝らなくてもいい、そもそも頼る前提の攻略を見据えていた俺が悪いんだ。やっぱ自分の実力で頑張れって事だよ」
甘い考えを期せずして打ち砕かれ現実を知った真の顔は少し引きつっていた。
「取り敢えず家に帰るか」
「そうですね」
帰路に着く真の後ろでトボトボ歩くデルガ、そしてその更に後ろで、アグリードがギリシャの彫刻にありそうなポーズを決めながらデルガの後ろ姿を見ていた。
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