第7話デルガ
1歩進む毎に騒ぎの音も大きくなる。
「デルガ聞こえるか」
《なんでございましょう》
デルガに声が届くかどうか分からないまま問いかけると当然の様に頭の中に答えが返ってくる。
それに驚く
「もしかしたら高レベルの相手の可能性も含めて出てきてくれ」
脇道に入りデルガにそう伝えると赤黒いゲートが開きその中から完全な鎧姿ではない格好で現れる。
鎧姿も姿もそうだったが体のラインが意外と分かる服装なため思春期盛りの真には少し刺激が強かった。
「デルガ鎧姿じゃないんだな」
「先日の騎士より強い気配はカケラも感じないのでこれで良いかと判断しました。変えましょうか?」
「いやいい。怪我人が出てる可能性も含めて一応回復させるつもりでいてくれ」
「分かりました」
真は「口調はもう少し砕けてもいいんだけどな」と考えながらデルガを連れて現場に向かう。
現場に着くとそこは酷い光景だった。
道端に倒れている人、血を流している人が想像以上に多かった。
「どうしましたか?!何があったんです!」
詳しい話が出来る人が周りにいないと判断し、真はデルガに怪我人を治す指示を出して治療した人に何があったかを問う
「ハンター……ハンターらしきやつが急に声を上げながら通行人の女性に切り掛かったんだ。
しばらくここら辺の人達を襲った後に建物に入っていったよ。そのあと俺はなんとか警察、ハンター協会に連絡はしたがまだ到着していない」
「ハンターが?」
「あの身体能力の高さは明らかにハンターだ!
しかもアイツはダンジョンに潜って使うような本格的な武器まで使ってた!」
興奮したような捲し立てると真に見られている事を思い出し咳払いをしてから頼み事をする
「ゴホン……兄ちゃん俺にしたように怪我を治せるんなら他の人にもやってくれねぇか?」
(話を聞く為にこのおじさんには強めの回復魔法を使って貰ったが、ここで大々的にデルガが回復魔法を使うと後々に面倒に巻き込まれそうだ。ここは動ける程度の回復魔法を使ってもらおう)
頭の中で今後の為に目立ちすぎる行動をしない選択をした。
「デルガ見える範囲の人を動いて避難できる程度に回復させてくれ」
「承知しました」
一言真に返すとデルガはまず怪我人を1カ所に集める為にこの場を離れる
「おじさんその自称ハンターは今どこにいますか?」
中年のおじさんは手を上げその犯人がいる場所を指し示す。
そこは直ぐ目の前、向かいの建物だった。
「あそこに?…」
「今まで何人かハンターを見てきたがあれは中でも上の方の実力だったように思う」
(実力が高いのか、一般的に高いと言われる奴はランクがDになってからだその中から更に高いと言われるならC、最悪Bランクはある事を覚悟するしかない。俺1人で出来るか)
そこまで考え被りを振る
(いや、今はデルガやアグリードもいる寧ろ2人に任せるのをアリだな。………よし)
「分かりました。私は中に潜って様子を見てきます。おじさんは離れて他のハンター達を待っていて下さい」
「ま、まて!1人で行くつもりか」
「3人ですよ。もう既に2人は中に入りました」
「嘘だろ」
「本当ですよ」
(嘘だけど)
中年のおじさんをその場から離れるのを見るともう1度脇道に入り呼ぶ
「アグリード、デルガと同じ感じで来て」
ゲートが開き中からアグリードが姿を現す
それと同時に怪我人の治療を終えたデルガもゲートから姿を現す。
「そのゲート便利なの?」
「はい、極端な表現になりますが短距離転移と変わりませんので」
「ふ〜ん、まぁいいか。取り敢えず2人にお願いがあって呼んだんだ」
「「なんなりと」」
例の建物を指差し
「あの建物に立て籠もっているハンターの確保と怪我人の救助を頼みたい、絶対死人を出すな。俺は今後の事を考えるとあまり目立ちたく無いから2人に頼む事になるけどいいかな?」
「「断る理由など」」
「俺は裏口で行く。2人は鎧姿で顔を隠して正面から堂々と言ってくれ、注意が2人に向いてる間に怪我人の回収をする。あと…俺は2人の事を知らない体でいく」
言葉を終えると2人の体を白い魔力が覆い鎧姿に変身する。
正直この姿にいつでも変われるのは羨ましいと思いながら真は裏口に向かいデルガとアグリードは正面から建物に侵入した。
建物に2人が正面から入る
「おかしいな、いると思ったがこの付近には人がいない」
「犯人が一か所に集めているのならそれを納得出来ますよ?」
「それもそうか。時間もあまり掛けたくないし一気に見つけるぞ」
手に魔力を集め、水を撒くようにしてそれを放つ。
建物全体に広がる魔力。
反応が1つ、2つ、3つ、4つ………。
「変な感じだな。明らかに外で見た一般人とは違う反応が沢山だもしかしてこれが……あ、1つ反応が弱まったな」
「犯人が弱者を甚振っている可能性がありますね。主に死人は出すなと言われたので急ぎましょう」
ゲートを出し2人は犯人と反応が弱くなってゆく者のいる位置を再度確認してその場所とゲートを繋げる。
そしてそのままゲートをくぐる。
ゲートをくぐり出ると目の前には血だらけの、デルガから
見てだがみすぼらしい武器を持っている人間がいた。
そしてその周りには恐怖に震えている魔力を感じない一般人、そして微かに魔力を感じるハンターと呼ばれる人がいた。
悪魔とはいえ騎士道を重んじる2人にその光景は顔の表情を無にするに足る光景だった。
ほんの少しだけ真とは関係のない私情、怒りを覚える。
「あぁ?!どっかから入って来やがった!俺らを誰だか分かってんのかよ!」
「騎士様の格好でヒーローごっこ!助けに来たつもりかぁ?」
「アグリード」
「何ですか姉上」
「この汚い奴らは……殺しては駄目なのか」
「主の命に殺人はありませんので、しかし」
ブゥゥン
魔力が2人の手の中で形を成す。
デルガは長剣、アグリードは持ち手と刀身の長さがそれぞれ90㎝の剣を握る。
「沢山遊んでやればいい」
複数の犯人の内の1人はサバイバルナイフを持ちデルガに切りかかる。
体を出来るだけ沈め、剣を天高く斬りあげる。
「ぎゃああぁぁあぁぁ!」
たった一つ動作だけでデルガに襲いかかった1人は下半身のアキレス腱、上半身の腕を持ち上げる為の腱を切り刻み行動不能に追い込む。
犯人だけでなく一般人、ハンターも息を飲む
「クズは尽く……死ね!」
「殺しちゃ駄目だって」
デルガの言葉を合図に空間内にいた全ての犯人が2人を襲う
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