第6話日常
GWも終わり高校の登校日になった。
ダンジョンでの出来事やその後の入院でGWの半分以上が無くなって残されたのはそこそこの量の宿題だった。
優等生という訳でもない俺が宿題に真摯に向き合い、全て終えたのは登校日の朝だった。
そして今少しでも家計の負担を減らす為に同じ高校に通っている妹の響と早歩きながら登校している。
「お兄ちゃん!だから宿題は計画にっていったよね?!」
「仕方ないだろ?!ただでさえ宿題多いしダンジョンで事故起きたんだしさぁ!!」
「死にかけたんでしょ?普通に働こう?ダンジョンで稼ぐより収入は減るけど安全だし……私別に大学に行かなくていいよ?」
「ダメだ。だいたい遠慮して大学に行かない事が選択肢なら俺は怒るよ」
「でも……」
「それに、まだ諦められてないんだろ?陸上」
「……」
響は中学生の間までは県でトップを争う長距離の実力者だったのだ。
それが高校に入って間もないころ居眠り運転をしているトラックが学校の帰り道に歩道に突っ込んできた。
なんとか響自身は避けたがかなり大きめの破片が脚に突き刺さり歩けるか分からないほどに傷ついてしまった。
治療をしてなんとか早歩きは出来る様になったが陸上の長距離の夢は絶たれてしまった。
「ダンジョンでのドロップには回復に特化した物もある。それを狙えば脚も治ってまた走れるようになる」
「そう…かな」
「また、走る姿が見たいよ俺は」
「うん、ありがと」
「………着いたな」
早く動かしている脚を緩め、上を見上げる。
真と響が通う高校はそこそこ大人数が通うギリマンモス高と呼ばれる規模の高校だった。
校門にはGWの明け久しぶり会ったのか「久しぶり」と声をかける生徒がチラホラと見受けられた。
2人が一緒に校門玄関に向かい歩き出すと女子生徒の声がかかる。
「あ、響〜〜おひさ〜!!」
振り向くとスポーティーな髪型の女子生徒がいた。
「楓久しぶり元気だった?」
「うん元気だよそりゃあ私だからね!響のお兄さんもお久しぶりです」
(……やっぱり元気だなこの子は。俺には合わないよ)
寿楓ことぶきかえで、響と一緒に入学し同じ陸上部長距離に入った子である。
響が事故に遭った後、いちばん寄り添ってくれた子なのである。
その時から交流が少しできた。
「お兄さんはGW中に初ダンジョンに行ったんですよね?どうでした?!」
キラキラと真に聞く。
苦笑いしながら楓の質問に答える。
教室
1歳下の響は2年3組なので真のクラスの真下である。
真が教室に入るとクラスのみんなが注目した。
その中から1人の男子生徒が意気揚々と近づいて来る。
「よう真!久しぶりダンジョンはどうだった?成功したのか!」
クラス1の陽キャ
麻倉獅堂あさくらしどう
小学生の頃からの腐れ縁であり不本意ながら悪友でもある。
「分かった分かったから席に着かせてくれ。ホームルームまでまだ少し時間あるから」
真は自分の席につくと我先にと近くの席に陣取った獅堂を見る。
「そんなに聞きたいかよ」
「親友の冒険譚は聞かないとな!」
「悪友の間違いだと思う」
溜息を吐きながらもGW中の出来事をデルガ達の事を伏せて話した。獅堂を含めたクラスのやつら全員がこういうゴシップに興味がある奴らばかりだからか反応がとても良かった。
「ま、マジで?!あ・の・紅葉詩乃と会って話したのか?!それにAランクの芥と鹿島とも?!」
クラス中がどよめいている。
紅葉詩乃
圧倒的なルックスと実力、そして他のハンターと比べると比較的メディアへの露出が多いのも相まってそこら辺のアイドルよりも人気が遥かにあった。
芥と鹿島にしてもそうだった。
知的でイケメン、人当たりの良さで女子にとってはジャ◯ーズと同じ扱い。
鹿島は芥と違いそのムキムキの肉体美と燻し銀なそのフェイスで一部の男子⤴︎と女子に大人気。
そんな3人と一緒にダンジョンに潜ったとなればどよめくのも無理はなかった。
真は紅葉詩乃の事は知っていたが芥と鹿島の事に付いてはあまり知らなかった。
「荒鐘羨ましすぎるぞおいぃ〜〜!!!!」
「芥様と鹿島様にも会えるなんて羨ましすぎるわ!」
獅堂と紅葉のファンの男子、クラスの芥と鹿島の大ファンで女子達が詰め寄ってきた。
「話したんだよな?話したんだよな?!」
「ま、まぁ話たよそりゃあ。芥さんと鹿島さんは依頼を受けてくれた人達なんだから」
「紅葉詩乃とは話したのか?!」
「少しだけ……」
「きゃあぁぁ良いな〜〜羨ましいなぁ!」
きゃーきゃーわいわい。
男子も混じって姦しいとはこれ以下に。
「連絡先とか交換しなかったのか」
ピシッ
1人の男子の何気ない一言がクラスの空気を凍らせた。
その男子も地雷を踏み込んだ事に気付いたようで汗をダラダラと流して固まっていた。
この後他クラスにまで情報が行き渡り放課後まで連絡先を聞かれまくったのは想像に難くなかった。
放課後
妹の響に家の鍵を渡し真と獅堂は本屋に寄っている。
「なぁ、今度一緒にダンジョンもぐらね?」
獅堂が唐突にそんな事を言う。
「真の話を聞いて俺もダンジョンに潜りたくなった」
「馬鹿言うな、言ってなかったけど人が1人死んでんだぞ?そんなダンジョンに潜るつもりか」
「それは話た通りイレギュラーがあったからだろ?それに聞く感じお前もレベル上がったようだし?」
獅堂は陽気にそんな事をいう
「お前、生き物殺した事は、1回ダンジョンに潜った時だけだろ」
「だけどお前がいる」
昔からの親友の断言するかのような口ぶりに少し赤面する真
「そりゃ……まぁ、何か有ったら助けるつもりだし悪友兼親友のお前を死なせるつもりはねぇ」
「悪友は取ってはくんないんだな」
「お黙り悪ガキが」
2人が笑うと真は思い出したかのように手を叩く
「そう言えば獅堂、ダンジョンに一緒に潜るならゴブリンやらに対応する為の武器が当然必要だ。それはあるのか?」
「一応サバイバルナイフならあるぜ。真は……あるのか?」
「あのダンジョンでドロップした短剣が1つな」
紫紺の短剣
紫紺の騎士が死んでドロップした武器
真はその短剣を思い出して笑う
「そんなにカッコいいのか?」
「とびっきりな」
好きなラノベの新刊を買い本屋をあとにする。
本屋を出て帰路に着くと
「きゃあぁぁぁぁ!」
悲鳴が聞こえる。
その声を聞いたあと僅かに通り魔という単語も聞こえる。本気の助けを求める類いの悲鳴だと判断した真は獅堂に声を掛ける。
「獅堂お前は帰れ」
「はぁ?!馬鹿言え真!助けにいくつもりか!ハンターの犯罪だったらどうするつもりだ!」
「言い忘れてたけど獅堂」
「あんだよ」
「俺はレベルが上がると同時に」
「最強の仲間を手に入れた」
真は獅堂にそういうとレベルが上がった事により上昇した身体能力で声のする方向へ向かう。
向かう途中でなんとなくデルガとアグリードの喜ぶ気配を感じた。
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