第4話
あの子は船を指さしていたし、それに気になる事があった。
…通信装置ね。
ああ、あのノイズ、君も聴こえていたんだな。
この施設の設備と、あの子は何か関係があるんじゃないか?
…俺が確かめてくる。君は残るんだ。
い、いやよ!
この部屋から出てはいけない。
この部屋にいる事が君の一つの証明になる。
それなら、貴方と一緒にいた方が…。
確かにそうかもしれない。だが、今ここでは何かあり得ない事が起きてるんだ。
俺自身、一番の不安は君が君だと証明できない事が怖いんだ。
無線機は引き続き使用する。何かあれば連絡してくれ。
そして、君にはこれを託す。
これは、貴方の…。
"俺"は自身が身につけていたエンゲージリングを外し、"わたし"に差し出した。
これは、身につけられないわ。
だって、これは貴方の亡くなった奥さんの…。
構わないさ。…元々、君との関係にはそろそろケジメをつけなくちゃならなかったからね。
それにこれが君の証明の後押しになる。
世界にこれは一つしか存在しない。もう一つは故郷に眠っている妻が持っている。
…故郷へ帰ったら、きちんとしたものを送るさ。
…わかったわ。どうか無事でいてね。
…ああ。
しかし部屋を出た"俺"は困惑した。
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