第2話

辺りを見渡しても、人の気配はない。

2人の足音だけが、広い施設に反響していた。



本当に誰もいないのかしら…?

廃棄された施設でもなさそうだな…。


施設内には電力が供給されているらしかった。

2人の移動速度に合わせて、各フロアの照明が点灯していく。


ねぇ、今ふと思ったんだけど、

此処、私たちの基地に似ていないかしら?

確かにそうだな。


施設内の部屋の間取りは、2人が所属する月面基地と同じであった。

外壁の一部は透明な材質で出来ており、着陸した船体が施設内からでも見渡せた。


軍の秘密施設かしら?

分からない。


暫く進むと、通信設備のある部屋にたどり着いた。


やはり、誰もいない。


施設の情報端末機にアクセスすると、

そこには施設に現在登録されている者は自分たち2人だけだと表示されていた。


…ここは一体何の為の施設なんだ?

"俺"は疑問に思っていたが、救援信号を発信する事に専念した。


…だめだ。

やはり宇宙空間で発生している電磁波のせいで、

ここでも通信機器は使用する事が出来ないみたいだな。


しかし、幸いな事に、

情報端末機の検索によると、

この施設内に船体の修理に必要な部品や燃料がある事が分かった。



…詮索は後にしよう、とにかく船体を修理するんだ。

今は出来る事をしよう。


その後2人は必要な資材を求めて、

二手に分かれて探索する事にした。


気がつくと、

施設内にも霧の一部が入ってきていたが、何ら身体に害はなかった。


しかし、念のため2人は施設内にあった宇宙服に再び着替え、小型の無線機を起動した。


船体や施設の通信機器が使用出来ない為、

無線機にも期待は出来なかったが、

距離の問題なのだろうか、

施設内で有れば問題なく使えるようであった。


2人はこまめに連絡を取り合う事を決め、探索を開始した。


だが、不思議だ。

ここまで密閉され、まして施設内の気圧は調整されているはずなのに、

何故この気体は入り込んできたんだ?


少々の不安を感じながらも、"俺"は探索を進めた。


…"俺"が気が付かない内に、

膝下を漂っていたはずの霧は腰の高さにまで迫っていた。


霧の量が増えてきている。

このままじゃ何も見えなくなるぞ。

一度戻ろう。

"俺"は"わたし"に通信を試みたが、

所々にノイズが入り、不鮮明な応答が返ってくる。


…くそっ。どうしてこんな時に…!。


しかしその時、"俺"は自身の肩を掴んだ存在に気がついた。

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