第10話 リセットデート

 翌日の日曜日。


 やっぱり少し気が重いし体も重い。それでも約束しちゃったんだもんな。よし、行こう。リセットしよう。


 美岬は九時ちょっと前にはうちの前まで来てくれていて、そのまますぐに出発となった。美岬は相変わらず大きなバッグを背負っている。あー、私またいっぱい写真撮られちゃうんだな。ちょっと恥ずかしい。


 さあ、どこに行こうかという段になって、美岬が動物園に行きたいと言い出したので動物園へ。小学校以来だなあ。


 熊とかバクとか象とか眺めてはしゃぐ美岬が可愛かった。まだ子供だなあ。一方の私はレッサーパンダを眺めながら、昨日の試合のことを考えていた。あの時こうすれば、あの時ああすれば、そんなタラレバの話ばかりが頭に浮かんでは消える。そんな物思いにふける私を美岬はいっぱい撮っている。もう止めるのも面倒なので好きにさせることにした。でも流出とかだけはするなよ。


 お昼は美岬がお弁当を作ったと言うのでそれをいただくことにしたが、が、うん、あまり作った事ないねあんた。でも経験なくても健気に作ってくれたことが嬉しい。あー、ちょっとバカップルっぽい感想になったかな。

 でも佑希ゆうきならもっと上手に作ったのにな。そう思った時、心がちょっとビクってなった。

 私、どうしていつもいつも終わった事ばかりうじうじ悩んでるんだ? 佑希のことにしても試合のことにしても。

 ああ、だから美岬は私に「リセット」って言ったんだ。も一度一からやり直そうねって。フラれた時、負けた時、その出来事はもう終わっていて、その次の瞬間に新しいスタートが切られていたんだ。

 美岬だって私よりずっとつらい目に遭っていて、それでも頑張っているんだ。私だって。


「ねえ美岬」


「はい?」


「今日は本当にありがとね。嬉しい」


 美岬はふわっと満面の笑みを浮かべた。


 この動物園には小さいながらも観覧車があった。二人でそれに乗ってみることにした。


 初めは対面して座って、美岬が私に色々なポーズをさせて撮りまくっていたけれど、それもひと段落すると私の隣に無理やり座ってきた。


「ここ狭いですぅ」


「じゃあそっち座りなさいよ」


「いやでーす。狭いからもっとセンパイの方に寄っていいですよね?」


「こらあんまりくっつくなって」


「にへへへぇ」


 美岬にくっつかれるとドキドキする。身体が熱くなる。それが美岬に悟られてないか気になる。


「観覧車の一番上でキスをするとずっと幸せカップルでいられるそうですよ」


「いやっ、やめろ、こんなところじゃ見えるってっ、やめっ、みっ見られるっ、こらっこのっ」


 狭いので逃げきれず隣に座った美岬からキスをされてしまった。そうなると私もたがが外れてしまう。抱きあってしばらくキスを続けてしまった。ヤバい、もうクセになっちゃったかも。

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