第5話 初美と美岬のデート
次に行きたかったのは水族館。魚が泳いでる姿ってすごく神秘的で好き。
でも考えてみれば、これってデートコースじゃない。私、私って今美岬とデートしてるってこと? そう考えるとなぜか心臓がドキドキしてとまらない。
おかしい。あたし
「んふふー、これってまるでデートみたいですねえ」
そう言う美岬の笑顔が胸にきゅんと来る。
「ちがっ、違うってっ!」
「まあ、わたしはデート大歓迎なんですけどねえ。センパイ真っ赤ですよ」
「!」
「うそでーす」
「こいつっ!」
「きゃー」
でもやっぱりデートコースなだけあってカップルが多い。女性同士っぽいのもいたな。みんな手を繋いだり腕を組んだり。
そしたらなんだか意識しちゃって、美岬のことを。もの凄い意識しちゃった。だってあんなに可愛いんだもん。ドキドキするし、急に目を合わせらんなくなったし、会話もできなくなった。手がムズムズする。ヤバい、私美岬の手を握りたいんだ。どっどうしちゃったの私?
がっちがちになった私を見て美岬は
「ふふっ」
って笑って、私の手に指を絡ませてきた。
「んふっ!」
変な声が出ちゃったけど、美岬は臆せず囁く。少し鼻にかかった甘い声。
「どうせ誰も見てないんですから、いいですよね」
と言っても私にもたれかかってきた。
ヤバい、血が頭に登って来て血管切れて死にそう。心臓の鼓動と息が早まる。死ぬ、死ぬ、死ねる。この後の私はもうガチガチで、手と腕の感触に意識の全部を持ってかれてとても水槽の魚どころじゃなかった。
水族館を出た時には私はぐったりしているように見えたと思う。
「センパーイ? ちゃんとお魚見てましたあ?」
「見てたっ! ちゃんと見てましたっ!」
「とか言って、本当は美岬のお」
「んっ」
と美岬は私の手を握る手に力を入れる。って! 水族館出ても私たち手つなぎっぱなしだった!
「ほら、こうしてこうして、恋人つなぎにしましょ。ふふー」
私は全く抵抗できない。美岬の小さくて柔らかな手の感触が心地いい。すごい手汗だけど。
それでも辛うじて平静を装う。そうよ、先輩なんだから先輩らしいところ見せなくちゃ、と咳払いをする。
「このあと行きたいところある?」
「そうですねえ、ムービーかあカフェかあ」
どうせならちょっと変わった事やってみたい。私はそう思った。
「水族館のあとだから魚釣ってみない?」
「お魚釣れるんですか!」
「もちろん」
「でもどこで」
「ここのすぐ隣に釣り堀があるの。海水魚も淡水魚もつれるわよ。よかったらやってみる?」
「やりますやりますやってみたいですー!」
「よし、決まり! 大物釣るわよー!」
「おー!」
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