第4話 初美と美岬のサボタージュ
ピンポーン
「おはよーございますセンパーイ!」
窓際のベッドから聞こえただけじゃなく、階下にあるインターホンからもしっかり聞こえた元気いっぱいの大声にびっくりして飛び起きた私は、パジャマのままインターホンまでダッシュする。
「な、何やってんのよあんた……」
私が呆然としていると、モニターに映った美岬が満面の笑みで
「え? 何って、一緒に学校行こうって思って?」
「はあ?」
「だって
インターホンのモニター越しの笑顔が胸に痛い。思わず私は絶句する。
「初美、お友達? 早く準備した方がいいんじゃないの?」
なんて親まで言い出すから仕方がない。大急ぎで着替えてトーストかじって家を出た。
「うわー、パンくわえて登校する人なんて初めて見ましたー! いつもそうなんですかあ?」
「うるさいわね! 美岬が朝早すぎるの!」
パンをかじりながら美岬に言い放つ。あれ? 私いつの間にか美岬を名前呼びしてる? いや、最初からだったか?
だけど学校の近くまで来ると足が重くなる。私の好きだった
「どうしました?」
「学校やだな……」
まっすぐ目の前二百メートル先に私の通う学校の、六階建ての校舎が見える。
美岬が立ち止まった。私の腕をぐいっと引っ張るからドキッとする。私は小さな路地に引き込まれた。そこで私の腕にしがみ付いてくるからさらにドキドキする私。あ、赤くなるな赤くなるな赤くなるな私の顔! そんな私の動揺なんて知るはずもない美岬はこちらの顔を覗き込むようにして、上目遣いにちょっと悪い微笑みを浮かべて言う。
「じゃ、サボっちゃいません? センパイ」
「えっ」
その美岬の大胆な発言には呆気にとられた。
だけど、私の中でむくむくと悪い考えが頭をもたげる。それに、美岬とだったら何でも楽しそう。昨日会ったばっかなのになぜかそう思える。
私はふふっと笑って
「悪くないね」
と言うと、美岬はウィンクをして
「ね、悪くないでしょ?」
といたずらっぽい笑みを浮かべた。
お互いがお互いの保護者に成りすまして端末から通信をして仮病で休む。美岬は意外と演技派で、あれならきっとうちの担任なんてコロッと騙せたはず。
まずはブティックによってとにかく安い服を買って着替える。探してみると意外と安い。まあデザインはあれだけど。
次はどうしようかな?
「あ、タワー行きません? タワー。私登った事なかったんですー」
「よし、いってみよ!」
タワーの展望台に登ってみると本当に高くて、足元の人間が米粒より小さい。重力も低いし“地平線”が丸いのもよくわかって面白い。
「ほらほら跳んだら宙に浮いちゃいそうですよお」
「あ! こらこらスカートスカート!」
「そういうセンパイだって丸出しですー」
「えっ! もっ、もっと言い方ってのが、ひゃあ」
「うそでーす」
「こいつめえー!」
「きゃー」
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