第2話 まだ中学生!?

「あっ、ありがとうございます! ありがとうございますっ!」


 深々とお辞儀をした後こっちを見る彼女は高一? それにしてもやけにかわいい。広めのおでこ。いくつも髪留めをしたショートに丸いフレームの眼鏡。スカート短めニーハイ。どっかとぼけた顔をしてる。ん? あれ? いや、かわいいだなんて私何考えてんだ。一昨日失恋したばっかなのに。佑希ゆうきとも全然違うタイプだし。共通してるのはショートなくらい。あとは全部真逆だ。でも、うんまあかわいい。それはほんと。かわいい。私はついまじまじと眺める。私はこの子のかわいさに少し動揺していた。


「あ、あんた、高一?」


「それが、よく言われるんです。はい」


 ほんの少し鼻にかかった声。語尾が間延びする独特の喋り方をする。これはちょっとアホっぽくていただけないな。


「え? じゃちがうの?」


「はいー、中二です」


「中二!」


「そうなんですよ。ねー、びっくりですよねえ」


 何他人事のようにおっしゃりますか。


「びっくりですよねえじゃなくて! どゆこと? だめじゃんこんな時間に街うろついちゃ! ねえ聞いてる? ちょっと、聞いてるかな?」


「んふー、今月のキャンペーンはシェイクが大当たりですねえ」


 とろけた顔でシェイクを飲んでいる中二。あ、そういえば。


「あんた名前は」


芦谷あしや美岬です。月嶺つきみね中の二年A組です」


「えっと、あたしは岡屋初美。鴎翼おうよく第一高校二年E組」


「それにしてもお強いですねえ。私感動しちゃいました。こうしゅっ、しゅっ、って。『あんたらついてなかったね』なんてかっこよすぎですー」


 美岬と名乗った子は私の真似をする。その突きの真似が下手くそだし、だからこそ余計に恥ずかしい。


「あー」


 私は呻いてテーブルに突っ伏した。彼女はさっきまで怖い思いをしてたのなんかすっかり忘れたかのように、もしゃもしゃポテトなんか食ってる。


「どしました?」


「やり過ぎ」


「ああ、でもいいんじゃないですか、あれくらいあっつーいお灸すえないと」


 ずれた眼鏡のつるを持ってくいっと直す。


「空手は凶器だからさ」


「ああ、あれ空手だったんですか」


 なんだと思ってたんだよ。


「ちょっとむしゃくしゃしてて暴れ過ぎちゃった」


「『ちょっと』には見えなかったですけど」


「うぐう」


 またテーブルに突っ伏す。

 本当だ、全然ちょっとじゃない。突然何の脈絡もなく佑希、今頃生明あさみとしっぽりねんごろいちゃいちゃなんだろうな…… なんて思いが湧いてきて思わず叫びたくなる。


「あー! あーもう!」


 叫んでしまった。


「失恋、ですか?」


 美岬が気づかうように私の顔を覗き込んでくる。


「うっ」


 私は絶句するしかなかった。勘がいいな。

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