断編 大戦の始まりの記憶1
どこか…懐かしい夢を見た――。
とある国境付近のそよ風吹くのどかな村に両親と少女はいた。
「あ!お父さん!お昼ご飯食べよう。」
「おっ!母さんも一緒か。」
母は常駐する医師として、そして父は村の警備長として従事していた。
「ふふっ、今日は診察に寄った家で果物をもらったんですよ。お昼も持って来たから、一緒に食べましょう。」
「今日はね、お母さんのお手伝いをしていたの。それでね…。」
いつもと変わらない、続くと思っていた
「はじめまして
全身を白い鎧で
広がる業火、周囲に響き渡る悲鳴――
――数刻で村は地獄と化していた。
「いい、ここに隠れているのよ!お母さんは…お父さんを探してくるから!」
「待って!――行かないで!お母さん!」
母は少女を村の外れに逃がすと…父を探しに再び村へ戻って行った。
少女はただ、震えることしかできなかった。
――父と母は、帰って来なかった。
尖兵が過ぎ去り、残ったのは数刻まで村だった残骸と僅かな生き残り、そして……おびただしい数の死体だった。
「ねえ、どこか行くの?」
「……。」
無力感に苛まれ、生きる気力を失い――行く宛もなく歩いた。村を抜けて小さな丘を越えて、ふらふらと道を歩き続けた。
「あっ…。」
そして――森の近くで
「グルゥ?グルゥアァァァッ!!」
草むらから出てきた獣は私に気づいたのか目と鼻の先まで迫って来ていた。逃げる気力はなく、獣に食べられるのをじっと待っていた。
『諦めちゃ…だめだ!!』
「えっ!?お父…さん?」
――不意に頭の中に父の声が響いた気がした。
ズシャァァァッ…!
「大丈夫か?君はひょっとして…あの村の生き残りか?」
そう手を差し伸べてきた人を、少女はぼんやりと見ていた。
「――誰?」
「ああ、自己紹介がまだだったね。俺は…」
『リュースハイト=ライナー』――そう男は名乗ってきた。
リュースハイトは少女を抱えると、来た道を戻るように村の跡地まで歩いていった。諸々の事後処理を、リュースハイトが所属しているドラングローナ王国の第三騎士団の団員に任せると、再び少女を連れて歩き出した。
「…どこに連れて行くつもり?」
「お前は放っておくと、フラフラと何処かに行きそうだからな。…両親のことについては村の連中から聞いている。だから、気持ちが落ちつくまでは、俺の師匠の所に預けようかと思ってな。」
そう話しながらリュースハイトは馬で駆けながら、王国北側のとある一軒家まで足を運んだ。
「失礼します!リーシャ師匠はいらっしゃ…」
ドゴォォォォォン!!
コンコンとノックした矢先、豪快な扉の破壊音と共に扉は木っ端微塵になっていた。
「…ったく。おい、ライナー!訪ねてくるんだったら、一報寄こしやがれ!」
民家から出てきたのは、左目に眼帯をした女性だった。
「す、すみません師匠…急な用事だったもので。」
「ふーん…で、そこのガキは?」
これが、剣聖"リーシャ=ヴェイラット”との出会いだった。
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