第11話 葛藤

「少年の……姿に?」 

「そうだ。ロビンにより少年の姿に変えられた神使いおまえは、彼の使い魔として生活をともにしていたのだ」

 私には、ジャンヌの言っていることが理解できなかった。魔人、ロビン・フォードは魔王に仕える幹部級の悪魔である。

 真逆の立場にある私が、使い魔として彼と生活をともにしていた……これが事実だったとしても、甚だ信じがたい。

「……今の神使いおまえは、下級悪魔にも勝てないほど、弱くなってしまっている。原因として考えられるのはおそらく……この私だろうな」

「えっ……?」

 面食らった私は、俯いていた顔を上げ、ジャンヌと視線を合わす。

「私が現世に蘇った代償として力が弱まってしまったのだとしたら……即刻、神使いおまえに還元せねばならない」

「そしたらジャンヌは……どうなってしまうの?」

 まさか消滅なんて……ありえないよね?私は一抹の不安を覚えた。

「……判らない。こればかりは、未知数だ。だが……」

 肩をすぼめて返事をしたジャンヌは

「私はおまえであり、おまえは私でもある。ひとつになっても、互いに支え合うことが出来る。私達は、ずっと一緒だ」

 凜々しい笑みを浮かべて、励ました。女騎士としての威厳がある一方、まるで肉親のような優しさや愛情がにじみ出ている。私はいたたまれなくなった。

「……形はどうであれ、私達はずっと一緒だよ。だけど……別れるのは、判っててもやっぱり辛い」

 ガバッとジャンヌを抱きながら、私は嗚咽おえつする。

 私は知ってしまった。この世界にジャンヌがいる限り、私は神使いとしての使命を果たせないのだと。

 そんなこと、知りたくもなかった。このまま、ジャンヌと離ればなれになるのは嫌だ!でも……私の我儘わがままで、ジャンヌを困らせるのも……嫌だ。

 どうしようもない現実に直面し、葛藤した。いろいろな感情が渦巻く中、私はジャンヌと向き合うと

「辛いけど……最後は笑って別れないとね!ジャンヌ、私はあなたのこと忘れない。ずっと、大好きよ。今までありがとう!」

 満面の笑顔で別れと感謝を告げた。

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