第10話 想定外の事が起きたら、誰だって混乱するよね

「驚くのも無理はない。遙か遠い昔に死した私が、こうして再び、現世に蘇ったのだから」

 ジャンヌはそう、穏やかな口調で告げた。

 ふと、何かの気配を感じ取ったティオが、気配がした方向に顔を向ける。

「悪魔の気配だ」

 にわかに険しくなった表情で呟いたティオに、私の目つきも険しくなる。

「それなら……変身しないとね」

 自力で立った私は、首にぶら下げた金の十字架を手繰り寄せる。天にかざした十字架から放たれる、眩い七色の光に包まれ、私は金髪の美女戦士、その名も神使いへと変身した。

「さぁ……どこからでも、かかってらっしゃい!」

 黄金の剣となった十字架を携え、勇ましく私の両脇に立つシュオン、ティオとともに身構える。

 どこからともなく姿を現した三体の下級悪魔が一斉に闇魔法を放つ。黒、赤、緑と三色の光線が前方から飛んでくる。瞬時に結界を張り、光線を防ごうとした時だった。


 バリンッ!


 なんと、どんなに強力な闇魔法でも忽ちけるほど頑丈な結界が、超がつくほど弱い悪魔の攻撃に耐えきれずに破れてしまったではないか。

「……っ?」

 予期せぬ事態に頭が追いつかず、三色の光線をまともに食らった私は立ったまま放心状態とかす。これは一体、どう言うことなのだろう……

 予期せぬ事態に放心状態と化したのは、シュオン、ティオも同じだった。やがて、私の方に顔を向けて、呆気にとられていた二人が、はっと我に返る。

「美果子!大丈夫か?!」とシュオン。

「悪い!近くにいながら防ぎきれなかったぜ!」とティオ。

「はやり……か」

 落胆したように呟いたジャンヌがすっと、私の面前に佇んだ。

「説明する前にまずは、この話からせねばならない。今から半年前……悪魔を封印する役目にある神使いおまえが、戦闘の最中に行方不明となった。

 私は神使いおまえの代りとして蘇り、天空の騎士団と共に悪魔と戦い、封印しながら、行方を捜していたのだ。

 そして今、ようやっと神使いおまえを見つけ出すことが出来たのだ。まさか、ロビンに術をかけられ、セシルと言う名の魔人少年の姿に変えられていたとは、思いもしなかったがな」

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