第9話 凜然たる女騎士
あなたは悪魔向きではない。それを知っても尚、私はあなたと一緒にいたかった。
哀愁漂う微笑みを浮かべて、ロビンは愛おしむようにセシルを見詰めた。もうじき術が解ける。元の姿に戻り、自身が
セシルにとっては酷であるが、ロビンが決めたことは間違いではない。これで良かったのだ。
「……時期に術が解け、元に戻る筈です。ここを去る前に、ひとめでもあなたにお目にかかれて光栄ですよ。ジャンヌ・ダルク」
いささか皮肉を籠めて神使いにそう告げたロビンは、徐に歩み寄ったシュオン、ティオの二人にセシルを託し、シュッと姿を消した。
ふと意識が戻り、ゆっくりと
「目が覚めたか?」
「ティオ……私……」
「もう安心だ。よく頑張ったな」
水色のブラウスの襟元に結わかれた赤い大きなリボンが特徴の、上下紺色の制服を着た私を、愛しさと優しさが入り交じる微笑みを浮かべて見詰めるティオが、励ますように返事をする。
今まで、自分が何をしていたのか思い出せない。こんなところに何故、ティオがいるのかも理解するのにいくらか時間を要した。
「無事に戻って来てくれて、本当に良かった」
この場に居合わせているのは、ティオだけではなかったようだ。ほっと安堵するシュオンの顔に、優しい笑みが浮かんでいる。
そしてもうひとり……私が目を覚ましたことに安堵するシュオンの身体越しから、横長の旗を持った、精悍な佇まいの女騎士の姿が見える。
プラチナの鎧を着けた戦闘服に身を包む、耳にかかるくらいの、短い金髪の女騎士。凜々しい青色の目には、まるで聖母のような優しい光が宿っている。
「ジャンヌ……ダルク……」
思わず目を見張った私は、無意識のうちにその名を呟いていた。信じられない光景だ。私が憧れる歴史上の人物が、すぐ目と鼻の先にいるなんて。
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