第3話 懺悔の値打ちはありまくる
ルシアの正体は百年以上生きている魔族と人間のハーフだ。
美貌を保つ為に若い女の血肉を好む。
しかも可憐な娘を生きたまま食べるのが好きなのだ。
激痛と美貌が失われることに対しての恐怖に泣き叫ぶ声がどんな蜜よりも甘く感じるらしい。
彼女はミリアロゼの腹心であり「拷問具」の一つだ。
幼い王女に若い娘の血が美容にいいと教えたのもルシアだ。
皮膚を破り肉を裂く鞭の扱い方を教えたのもルシア。
そしてミリアロゼに聖女と勇者が恋仲だと吹き込んで聖女を拷問させたのもルシア。
全部自分が「御馳走」にありつく為にだ。どこまでも邪悪な存在である。
彼女も最終回の一話前に勇者によって殺された。
本来の退場には少し早いが、ミリアロゼが生まれ変わる為に犠牲になって貰うことにした。
◇◇◇◇
神聖で荘厳な空気が流れる。
長年、魔族に操られていたことを告白したミリアロゼは教会に呼び出されていた。
まず薄着にされ修道女たちに囲まれ聖水を溺れる程かけられた。その後濡れたまま放置され長々と周囲で祈られた。
内心寒いと呟きながら我慢していると、修道女たちが祈ることを止め別室に案内され王女のドレスに着替えることがやっと許された。
今は大聖堂で教皇から審問を受けている。正直緊張している。
「そうです。ルシアは私で幻術で操って、長年自分の餌集めの為に残酷な行為をさせたのです」
「成程、だが王女。あの女は兵士たちにろくな抵抗も出来ず捕えられたようですが」
幻術を使わなかったのは何故でしょうか。そう教皇が鋭い瞳で尋ねる。
普段なら王女がメイドの一人を処分する位でこのような大事にはならない。命の扱いが軽すぎるがこの国ではそうなのだ。
だが今回はわざと教会に介入させた。
今までの傲慢なミリアロゼ王女と自分は違うと印象付ける為にだ。
ミリアロゼの過去の鬼畜な所業は魔族に操られていたせいだと教会側の最高権力者に認めて貰いたい。
教皇ハイム。彼は聖女アデライトの父親だ。
アニメでは魔女認定された娘と一緒に拷問の後処刑されている。
教会も邪教認定され燃やされた。修道女たちも全員焼け死んだ筈だ。
ミリアロゼがそこまでしたのは理由がある。
恋敵である聖女が憎かったからだけではない。
この教皇は城の外では隠していた王女の残虐な本性を薄々見抜いていたからだ。
それがプライドの高いミリアロゼの癇に常々障っていたのだ。
この国では王族とその他の命では価値が違い過ぎる。クーデーターが起きないのが不思議なくらいに。
それは民がミリアロゼの表面だけの美しさと甘言にあっさり騙されるぐらい素直で愚かだったからだろうけれど。
貴族や重臣も王に溺愛され、民から絶大な支持を受けるミリアロゼに逆らったりしない。
何せ彼女は次期女王なのだ。アニメでは後半辺りで父を暗殺して即位する。本当に極悪な女だ。
しかし教皇は違う。ミリアロゼの美貌にも権力にも怯まない。それ故アニメの中では悲惨な死に方をしたのだ。
少し迷うような素振りをしてから彼の問いかけに答えた。
「恐らく……勇者様が魔王を倒したので魔力を使えなくなったのでしょう」
教皇の顔に一瞬驚きが浮かぶ。数秒後に納得したような表情になったので内心ガッツポーズをした。
だが納得してもらったところ申し訳ないが先程の言葉は大嘘だ。
ルシアは普通の人間よりも老化が遅いがそれ以外に特別な力などない。
だが魔王が倒されたのは事実だ。
「勇者様と聖女様が魔王を倒した瞬間、長年を私を支配していた呪いが解け自由になれました。とても感謝しております」
「成程。魔王の加護が消えたからルシアから人を操る力が消えたと……」
勇者様たちが戻られたら直接感謝の言葉を伝えたいと思います。
そう、教皇を見つめ敬虔な信者のように指を祈りの形にして話す。
「きっと聖女様の守護獣である白鳩が近い内に討伐成功の報せを持ってくるでしょう」
アニメで見た光景なので自信満々に話すことが出来る。
だから今は少し疑われていてもいい。魔王が既に倒され済みなのは事実なのだから。
そういった余裕が彼には落ち着いているように見えたのかもしれない。
単純に中身が以前の極悪王女と違うことに気づいたからかもしれないが。
教皇は暫くの沈黙の後「貴女を信じます、王女」と告げた。
第一関門、突破だ。
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