第5話・三色スミレ、ローズマリー、匂い草

サチは調子のいい時に、この前の草のいっぱい生えたところへ、陽が当たっていきれていた青年のいた所へ、自分の足でヨタヨタあるいてむかっていった。


辿り着いて、サアとこの間の木草をかき分けると、その中に薬草摘みするパリスの姿が徐々に見えてきた。

それでサチはひっそりとその場へ入っていったのだが、だが草を踏みしだく音が辺り一面に聞こえてしまっていた。

麦門冬やますげを採っていたパリスが振り向くことなく「お前、何してるの?」と声を掛けた。

サチはもじもじして後ろ手に手を組み合わせながら言いあぐね、

「ダメなの?」と尋ねた。

パリスは答えることなく無視して作業を続けていた。

「だって、何してるの?」

だがパリスは少女の問いに答えなかった。

芝に生えているのは三色スミレ、ローズマリー、匂い草、はっか。

水の隣には葦がそよいでいる。

連翹いたちくさを折り、藁本そはらし女青かはねくさ玄参おしくさ、それから升麻とりのあしくさ白笈かがみを摘んで束ねパリスは一つにした。サチは、

「何を摘んでるの?あたしもやりたい。」と言って勝手に隣へ来、パリスのしていることを見よう見真似で同じようにし始めた。

パリスはそのサチの様子を見、ヨタヨタした足取りや手付きをみて、ニヤりと笑った。

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