第32話
朝が来た。
「今日は曇ってるなあ」
朝葉は外を様子を見て呟いた。
「おはようございます、朝葉様。昨日はディナーお疲れ様でした」
バンガローの外からトワロの声がした。
「おはよう、トワロ。トワロもお疲れ様」
朝葉はそう言って、バンガローのドアを開けた。
「お邪魔します」
「どうぞ」
朝葉は紅茶を入れて、トワロと自分の前に置いた。
「いただきます」
トワロは紅茶を一口飲むと、ほっとため息をついた。
「今日は、シンから新しい依頼がありました」
「そうなんだ」
朝葉は朝食を取り始める。
パンとスクランブルエッグという簡単なものだった。
「砂漠に巨大ミミズがでたとのことで、討伐依頼です」
「ミミズか、たいしたことなさそうだね」
朝葉の言葉にトワロは首を振った。
「それが、大人3メートルくらいの巨大なミミズらしく、土の魔法も使うらしいです」
「ええ!? それじゃ結構強敵じゃない?」
「ですから、気をつけて戦いましょう」
「うん、トワロ。分かったよ」
朝葉は食事を終えると、身支度を調えた。
トワロと朝葉は砂漠にむかった。
「ここだね」
朝葉の言葉にトワロは頷く。
「一応、餌に鶏肉を持ってきました」
そう言って、トワロは鶏肉を砂漠の中央部分に置いた。
すると、巨大なミミズが現れた。
朝葉は毒鑑定のスキルを使った。
無毒。
「よし、それじゃ、解体!!」
朝葉は剣を構えて巨大ミミズに躍りかかった。
巨大ミミズは土の剣を大量に作成した。
土の剣が朝葉達に向かって飛んでくる。
「えい!!」
トワロが剣で、土の剣を打ち崩した。
朝葉も、器用に土の剣を躱し、巨大ミミズに近寄る。
「解体!!」
朝葉のスキルで、巨大ミミズは皮と身と内臓に分解された。
「やったね! トワロ!」
「はい、朝葉様」
朝葉達は巨大ミミズの身をバンガローに持ち帰った。
「今日は、巨大ミミズのハンバーガーを作るよ!」
「ハンバーガーですか?」
トワロは、それは何だろうという顔をしている。
「まず、丸いパンを用意して、それからハンバーグを作るよ」
「ハンバーグというのは、フルーツバットで作った挽肉の塊ですね」
「うん」
朝葉は巨大ミミズを挽肉にして、ハンバーグを作った。
焼くと、じゅうっといい音がした。
「で、トマトケチャップと辛子で味付けするよ」
朝葉は畑から取ってきていたトマトのスライスとレタスとキュウリのピクルスを、オリーブオイルを塗ったパンに挟んだ。
そして、できたてのハンバーグを挟み、味付けした。
「出来たよ!」
「おっす! 朝葉、トワロ、お久しぶり」
「セリスさん、丁度いいところに来た!」
朝葉は笑顔でセリスを迎えた。
「今日は何を作ったんだい?」
「巨大ミミズのハンバーガーだよ」
「へー。パンに挟んであるのか。それにしてもミミズまで調理しちゃうんだ」
「うん」
セリスはちょっと引いていた。
「さあ、食べよう!」
「いただきます」
朝葉達はできたてのハンバーガーを両手で持ち、頬張った。
「おいひい!」
もぐもぐとしながら、朝葉は言った。
「ピクルスの酸味と食感が、良いアクセントになってますね」
「うん。ミミズもさっぱりした肉って感じで美味しい」
トワロとセリスも口々に言った。
三人は食べ終わると、残りのハンバーガー5個を持って冒険者の館に討伐報告に行った。
「シン。倒してきたよ!」
「朝葉、またいつも通り早いな」
シンは奥から出てくると、朝葉達に微笑みかけた。
「そうそう、ライトとブロウから、レストラン最高だったっ言われたぞ」
「本当!? 嬉しい!!」
朝葉はにっこりと笑った。
「今日も、なんか料理を持ってきたのか?」
「うん。巨大ミミズのハンバーガー。5個だよ」
「それじゃ、2000ギルで買おう」
「うん。ありがとう、シン」
朝葉達は用事を終えると、それぞれの家へ帰って行った。
「ミミズって、結構グロいけど美味しかったな」
朝葉は一人呟いて、バンガローの中へと入っていった。
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