第11話

朝になった。

朝葉は朝食にキノコのソテーと野菜スープを食べた。

「うーん、卵とパンが欲しいなぁ」

そう言いながらも二人前は食べていた。


朝食の後、冷蔵庫を見る。

冷蔵庫の中は野菜がいっぱいだった。

それもそのはず、あとマンドラゴラのポトフを十分の一しか作れなかったからだ。


「何か、良い物作れないかなぁ・・・・・・」

食事を終えた朝葉は、次に作る物を考えていた。

そのときドアをノックする音が聞こえた。


「はい」

朝葉が答えると、返事があった。

「セリスだよ、おはよう!」

「おはようセリス」

そう言って朝葉はドアを開けた。


「良い匂いだね」

「うん。キノコ炒めと野菜のスープ、食べる? 」

朝葉が台所に行きかけるとセリスは手で制した。

「いいよ、いま食べてきたところ」

「そっか」


セリスは空いている椅子に座ると、言った。

「マンドラゴラのポトフとやらは上手く出来たのかい? 」

「ああ、それね。ちょっと待って」

朝葉はそう言って、ポトフの鍋に火をつけた。

どういう原理か、薪など使わずに普通に火が付いている。


朝葉は灰汁と余分な油を捨ててから、味見をした。

「うん、すっごく美味しく出来てるよ」

「そっか、それは良かった」

セリスは笑って言った。


「そういえば、トワロは? 」

セリスは鼻をヒクヒクさせながら、朝葉に聞いた。

「さあ、まだ来てないけれど・・・・・・ 」

朝葉達がそう言っていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「トワロです、朝葉様。おはようございます」


「おはよう、トワロ、マンドラゴラのポトフ出来てるよ」

「そうですか・・・・・・。 贅沢をしましたね」

トワロは若干怖じ気づいたような表情でそれだけ言った。

「一緒に食べよう!! 」

朝葉が嬉しそうに誘うと、トワロとセリスは遠慮がちに頷いた。


「いただきます!」

「いただきます」

「いただきます」

三人は、マンドラゴラのポトフを一口食べて顔を見合わせた。


「美味しい!? 」

「カブとジャガイモの中間みたいな味ね、マンドラゴラって」

「ほろ苦さが良いアクセントになってますね」

三人はそれぞれ感想を言い合うと、あとは夢中でマンドラゴラのポトフを食べた。


「あー、美味しかった! 」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

朝葉は満足げなトワロとセリスを見て、にっこりと微笑んだ。


「ねえ、トワロ。この辺にまだ食べてないモンスターっている? 」

朝葉は三人のお皿を片付けながら、トワロに聞いた。

「朝葉様、まだモンスターを食べるのですか? 」

「だって、角ウサギは食べ飽きちゃったンだもん」

朝葉は口を尖らせる。

「それならさ、森の奥にフルーツバットっていうコウモリがいるんじゃない? 」

「セリス、余計なことを言わないで下さい」


「じゃあ、つぎはそのフルーツバットでハンバーグ作ろうかな? 」

朝葉は楽しそうに言った。

「ハンバーグ? 」

セリスが問いかける。

「肉を細かく叩いて、パンとか卵を混ぜて、形を整えて焼いた料理だよ」

「へえ、美味しそうじゃないか」

「野菜がいっぱい残ってるから、ベシャメルソースで煮込みハンバーグにしようっと」


トワロは、一応朝葉のレベルを見た。


剣士レベル10

調理師レベル20


どう見ても調理師として成長している。

途中経過を女王にも報告しなくてはいけない。

若干の焦りを感じながらも、トワロも森の奥への遠征に頷いた。


「朝葉様は、勇者様ではなく調理師様になってしまうのだろうか・・・・・・ 」

トワロは一人呟いた。


「じゃあ、森の奥の洞窟に向かいましょう! 」

朝葉は元気に、冒険の準備を始めた。

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