第4話
千波夜に与えられた寝床は下位の使用人の部屋である。
相部屋でなかったため、多少は気を使われているのかもしれない。
だがベッドとサイドテーブル、椅子が1脚置いてあるだけの狭い部屋である。
勿論ベッドも硬い。
英雄職の4人は、それはそれは豪華な客室を1人1部屋割り当てられている。
国王が何も説明していないので、千波夜も同じランクの部屋を与えられていると思っている様だ。
もし千波夜の部屋だけこんなみすぼらしい部屋だと分かれば、美形兄妹が王に喰ってかかるであろうから。
千波夜は部屋に不満はない。
実際、元の世界で暮らしていた部屋もそう質に変わりはない。
訳アリの呪術師や半妖が住むシェアハウスの自室とそう広さも変わりがない。
和室で布団で寝ていたのが、洋室でベッドに変わったくらいだ。
異世界定番のファンタジー世界で魔術などに特化している分、文明が発達していないのが唯一の不満か。
風呂は王族や上流の来賓客が使う豪華なものがあるが、使用人たちは湯あみくらいしか出来ない。
それも3日に1度ほどしか順番が回ってこない。
湯あみの部屋はカーテンで仕切られている為、千波夜が素顔を見られなくてすんでいるのは救いではある。
正直な所、千波夜は自分の容姿が整っている事に自覚がある。
【蛇淫】の性がある蛇神の眷属のせいであろうか?
傾国と言われるレベルの容姿と肉体を自分が持っていることくらいは、千波夜は自覚があった。
そして傾国のその本性はまさに国を傾けるだけの影響がある。
おそらく千波夜が本来の姿を現せば、この国は魔王討伐どころでは無くなるだろう。
むしろ諸外国と千波夜の取り合いで戦争になりかねない。
なので下手に永遠や凜たちと一緒に浴場に行かなくてすんでいる今の状況には感謝しているくらいだ。
それに1人部屋であることで、人と話さなくて済む事も有難い。
千波夜は13回転生している。
蛇神の加護で肉体のピーク時の姿でほぼ人生を過ごす。
成長こそすれ、過剰な老いを知らない肉体なのだ。
そして寿命は1回あたり100歳前後。
単純計算で千波夜の精神年齢は1200歳オーバーである。
若者との会話はキツイ。
ジェネレーションギャップと言う奴だ。
特に若い女は話が好きなので、付き合っていると精神面がゴリゴリと削られる。
何時の時代も女の会話の内容は恋と美容と贅沢の話しが中心だ。
もうその話は「千年分以上聞いた」と言うのが千波夜の感想だ。
なので千波夜は1人の時間を大切にしているのである。
「しかし厨房では手ぬ抜き加減を間違えてしまった…すっかり料理長に目を付けられてしまったな……」
このまま王宮で英雄職たちが魔王を倒して帰ってくるのを待つのと、魔王を倒す旅びに同行するの、どちらが自分に利があるか千波夜は考えながらベッドに横になった。
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