第3話
魔王対峙と言っても勇者として召喚された御一行は全員が戦闘初心者だ。
剣斗なら戦闘経験もあるが、剣道と真剣では話が違う。
試合と死合いは比較すべくもない。
なので英雄職4人は現在王宮にて戦闘訓練の真っ最中だ。
聖女の永遠は法術をメインに習っている。
神殿仕えの司教直属だ。
刹那と凛は一緒に魔術の訓練を受けている。
刹那は剣聖である剣斗と共に剣術の訓練も受けている。
この国随一の騎士団長直属にだ。
毎日ボロボロになる刹那と剣斗を癒すのは聖女の永遠の一日の終わりの訓練だ。
凛はその頃には魔力がすっからかんになっている。
魔術訓練も容赦がないらしい。
何でも凛の訓練は、宮廷魔術師長が直に訓練を付けているとかなんとか。
更に凜は法術の適正もあるため、王宮仕えの神官長の訓練も受けている。
召喚されて1週間。
すでに英雄職の4人は国のトップレベルで無いと訓練を付けれない程のレベルアップをしていた。
流石に神に選ばれて異世界召喚された者たちだけの事はある。
そして巻き込まれ召喚の無職・スキル無しの千波夜は、主に厨房で働いていた。
瓶底眼鏡にもっさりとした三つ編みの少女を誰もが英雄職と同じ世界のものだとは思えなかったのか、散々メイド達から陰口を叩かれた。
それも初日の話しだ。
見事な包丁さばき。
丁寧な灰汁取り。
素早い洗い物。
綺麗に洗われ干された布巾諸々。
1日で厨房はススの1つも無いピカピカになり、鍋は新品の様になっていた。
そして丁寧に切られた形の整った野菜。
基本野菜を生で食べる習慣がないこの世界の住人に飾り切りは刺さるものがあったらしい。
盛り付けも完璧だ。
星5つのホテルのレストラン顔負けの美しい料理が皿には盛られていた。
そして何より動きが早い。
1人で5人前の働きはする。
正直、厨房で働くシェフや侍女たちにとって千波夜は手放せない人材になった。
現在厨房のスタッフは、千波夜を魔王討伐の旅に連行させるのを反対運動しているらしい。
実力さえあれば人間何処でも成り上がれるものである。
ちなみに千波夜のこのスキルは《蛇神の巫女》の力とは一切関係ない。
神としての力を使わなくても、戦闘以外に置けば千波夜の能力は様々な物事に置いてカンストしている。
転生も13回繰り返せば日常動作がカンストするのも納得モノだろう。
(にしても、あの4人…1週間でこれだけレベルが上がるとは…格は低そうだがそこ迄無能な神でも無さそうだな)
器用に皿を10皿のせて、器用に配膳をこなす千波夜を見て料理長は必ず千波夜を厨房担当の所属にしてみせると気合を入れるのだった。
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