第2話

 光の洪水から目を覚ますとテンプレの王宮の広間だった。

 4人は既に目を覚ましている。

 千波夜がどうやら最後の様だ。


「と、言う訳で魔王を倒して欲しいのじゃ勇者様」


 既にテンプレの会話はなされた後だったらしい。


「あの、相武さん。どうなっているんですか?」


 千波夜は膝枕してくれていた永遠に説明を求めた。


「何か、異世界召喚で私たちがこの世界の魔王を倒す勇者パーティーらしいの。お兄ちゃんが勇者で、私が聖女。剣斗君が剣聖で凛ちゃんが賢者なんだって…で、その、破上さんが……」


「聖女様!その無職は必要ありません。どうぞ4人で魔王を倒して下さい。その無職は城で適当に衣食住の面倒は見ましょう。手違いとは言え召喚された者ですからな」


 国王が千波夜を養豚場の豚を見るかのような目で見下す。

 

 ”無職”


 どうやらソレが千波夜の職業らしい。

 確かに魔王討伐の役には立たないだろう。


「でも、無職だからって別行動するのは!」


「聖女様、その者は無職でさらにスキルなしです。そこいらの平民にも劣るステータス。連れて行ったところで邪魔にしかなりません。むしろ足手まといとしてパーティーを危険にさらしかねないのです!」


「だが、同じ境遇の者を放っておいて旅をするなど、気がかりで旅に集中できない。戦闘要員としてではなく、王国から派遣されるサポート部隊に入って貰えれば良いだろう?」


 刹那が王へ食って掛かる。

 正義感に溢れたセリフである。

 心底真面目に言っているのだから人が出来過ぎている。


「サポート部隊とも言っても魔王討伐に出る者はある程度のステータスがあります。本当に雑用しかさせれないですよ、良いのですか!?」


「まぁ刹那の言うように同校の奴捨てておけないよな」


「下級生を守るのは上級生の仕事だよ~私、賢者なんでしょ?破上ちゃんの分まで頑張って働くから一緒にいかせて下さい~」


 剣斗に凛のセリフだ。

 流石にカースト最上位は言う事が違う。

 勝手に異世界に呼び出して魔王と戦えと言われ。

 ソレを承諾し、無能な足手まといを”同校のよしみだから”と連れて歩く。

 お人好しも過ぎるのではないだろうか?

 千波夜は思った。


 千波夜は戦力外通告を受けた時点で、己だけ元の世界に帰ろうと思っていた。

 千波夜のステータスは【無職・スキル無し】の平民にも劣る数値の数々らしいが、ソレは千波夜が己に”封印”をかけているからだ。


 千波夜の本性は日本神話にも伝わる蛇神の眷属で巫女である。

 主の宝を探すべく幾度となくに転生している。

 今の千波夜の体で13代目くらいになる。

 未だに探し物は見つかっていない。


 そしてこの《蛇神の巫女》のステータスはこの世界の数値では表せないので封印状態のステータスが出たのだろう。

 

 ようするにこの世界の神は力がない。

 蛇神の巫女である、千波夜の本来の力をステータスに反映できなかったのが良い証拠だ。

 簡単に言えば格が低い。

 脅せばすぐにでも帰還は可能だろう。


 だが、召喚された4人をどうすべきか?

 4人はカースト最下位で地味な千波夜を本気で心配してくれた。

 ほうっておくのはしのびない、は千波夜の心情である。


(これも何かの縁か……)


「皆さんの足を引っ張らないよう、出来るだけ頑張ります……」


 カースト最下位の仮面を被り、千波夜は勇者様達に感謝の言葉を紡いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る