【オマケと美貌のカカンの賢王】

「ほぅ、お前がクロナに召喚された上にオマケ扱いされた奴か」


 食事が並べられたテーブルはあの長いテーブルでなく円卓上の5~6人掛けのテーブルだった。

 ホカホカと湯気を上げる料理は質素ながら大変美味しそうなのだが、テーブルに着いているメンバーがとんでもなかった。

 深海の事を値踏みするような目で見た後唇に弧を浮かべてそう言ったのは、深海がこれまでお目にかかった事のないレベルの美貌の男だ。


 多分男、声が低かったから。

 白磁のようなシミ1つない雪のように白い肌。

 髪は耳が隠れるくらいの少し長い艶のある綺麗なビロードのような黒髪。

 トロリと蕩けそうな琥珀色の瞳が淫靡的で色気が半端ない。

 スッと通った鼻筋に形の良いやや大きめの薄い唇。


(……これこそ傾国の美貌ってやつだな)


 正直クロナを見た時もかなりの美少女だと思ったがカグウは比べるのも烏滸がましいほどの圧倒的美貌だった。


 にしても似ていない兄妹だと思った。


 クロナは昼の月のような儚い色合いであったのに対してカグウは全てを飲み込む漆黒の夜のようだ。

 美しさという点ではカグウに軍配が上がるがどちらが好みかと問われれば意見が真っ二つに分かれそうなくらい似ていなかった。


 正直深海はカグウの美貌の方が苦手であった。

 美しすぎてどう言う態度をとれば良いか困ってしまう。

 クロナ位のレベルなら中身は天然だが黙っいれば美少女の片割れを見慣れているので大して緊張はしはしない。


 しかしカグウは言うなれば好みの顔すぎて緊張してしまう。

 何故テーブルが昨晩の形でないのかと深海は誰にぶつける訳でもない文句を心の中で呟く。

 円卓上のテーブルでは距離が近すぎる。

 そして更に困ったことにカグウとラキザ以外のメンバーも美形ぞろいだった。

 緊張するのも仕方ないだろう。


「君がオマケちゃん?クロナ姫は見る目無いね。俺はフィルド、この国の宮廷魔術士長だよ、ヨロシクね♡」


 明るい色合いのタンポポの綿毛ような柔らかそうな髪。

 触ったら気持ちよさそうだな、と深海は思った。

 目が見えない程の長い前髪が特徴的だ。

 ニヤニヤと弧を描く口元がチシャ猫を思わせる。

 身長はラキザより少し高いだろうか?座っているため詳しい身長は分からないが相当な長身であることはその状態でも分かった。

 目元が見えないのにイケメンオーラを放っている。

 喋り方は軽薄そうだが頭は切れそうだ。


 服装はゴシック調の貴族衣装と言った感じか。

 魔導士長と言う立場なのに魔道の要素が服装のどこにも見られなかった。

 だがちょっと可愛い感じが少しチャラそうなフィルドには良く似合っていた。


 この男は多分物凄くモテる、と言うのが深海の感想だ。

 しかしラキザに並んで喋りやすさは抜群に良さそうだった。


 そして席について居る者は他2名。

 カグウの右隣りに座っている黒色の短髪に紅茶色の瞳の男。

 端整な顔立ちなのだが動かない表情筋と合わせて死んだ魚のような目が非常に怖い。


「コキョウだ。以後お見知りおきを」


 動かない表情で言われても本当にお見知りしたいのか信用出来ないというのが本音なのだが。


「コキョウはね~カグウフェチなの。生まれた時から傍仕えとして一緒に育ったからカグウの性格や外見に惚れ込んでいて国随一の頭脳や指導力に心酔もしてるの。多分この国で1番カグウを敬愛してるのはコキョウだよ。んでもって嫉妬深いから気を付けてね~」


(何を気を付ければ良いんだろうか……)


「最後俺ね。チノシスだよ。この国の宰相をしている。宜しく、ふわぁ…」


 この若さにして渋めの色気を漂わせた、黒髪青目の恐らくこの中で1番長身であろう男が自己紹介した。


 ちなみに1番身長が低いのはカグウだろう。

 華奢で中世的な美貌なのでこのメンバーに囲まれていると見ようによれば女性に見えなくてもない。

 いや、寧ろ女性に間違われることの方が多いんではないだろうか。

 そんなカグウでもそこそこ身長はあるようだが。

 深海にすれば高身長イケメンの集まりは羨ましい限りだ。

 せめて後10センチ身長があればもっと男らしく見えただろうにと臍を噛む。


「で、オマケ扱いちゃんの名前は何てゆーの?」


 コテリ、と小首を傾げてフィルドが問うた。


「成人男性がする仕草じゃないですよフィルド様。可愛いから似合ってますけど。俺は漣深海です。漣がファミリーネームで深海がファーストネームです。お見知りおきを」


「フカミか。食事が覚める前にテーブルに着け。ラキザの料理は食材が良くなくても味の方は保証できるぞ」


「承知しましたカグウ様。ではテーブルに着かせて貰います」


 深海が席に座ると食事が始まった。

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