特別事象 帽子屋の場合(おまけ)
まったく。なぜ僕が?
ことの発端は管理者からの提案。
「夫人と君だけでは心許ない。せっかくだ、他にも似たような奴らを連れてきて適当な役に選べ。」
「なぜそんな事を、よりにもよって僕が・・・!」
「私は忙しい。じゃあ人は選んで連れてってやるからあとは頼んだぞ。」
自分でしようとした事を人に丸投げしやがって・・・!というより、今から死にそうな奴のところにいって声をかけて話になってくれそうなら死ぬまで待てって、無茶苦茶にも程がある。だけど、あいつのことだ。うまくいくようにしてくれるんだろう。
「人を救った気分になれるだろう?」
ふん。死神にでもなった気分だ。
そうして、白兎。芋虫。眠り鼠。海亀もどきをとりあえず連れてきた。モブはだいたい物語通りでいいと。ならこいつらも最初からそれでいいのでは?ちなみに三月兎は管理者が特別に一人だけ自分で呼んでくれたので詳細は会ってみないことにはわからない。公爵夫人が姉さん。僕は・・・帽子屋だ。
「疲れた・・・。」
「のわりに、ノリノリだったのでは?」
そう見えたんなら何よりだ。向こうにこんな言い方は申し訳ないが、こっちも人生訳ありなんだ。病みかけの人ばかり相手してると憂鬱になる。
「・・・まあ個人的にいいものが見れたから本当に良かったよ。」
そう。姉さんだ。
なぜか少し小柄になっていたが体に問題はなく、なにより自分の足でしっかり立って歩いていた。彼女にはここに来るまでの記憶がない。この事については事前に僕の方で承知してある。すぐに決断するに至らなかったが、新たな人生のスタートとして前向きにとらえる事にした。今までの暗い現実からおさらばする意味でもよかったのかもしれない。それなら僕もだ。記憶は残っているが、新しい僕として再出発しよう。
姉さん・・・もとい、公爵夫人にはナターシャ。響気が良くてつけた名前だ。
僕はシフォン。理由は同じ・・・いや。頭に浮かんだ、その時食べたいお菓子の名前だ。
「さあ、国が物語通りに動けるようになるまでは少し待とうではないか。君にはさほど関係ないのだろうけど。」
「あるような、ないような。まあいい。ぼくはここからまた始める。」
自分の書いた物語の登場人物のうちの一人、シフォン=ベルガモットとしての人生を今からスタートする。
ちなみに、後々この管理者は自らを「ジョーカー」と呼ぶように言った。ある人につけられて気に入ったようだ。
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