No.4 眠り鼠の場合



眠らせて欲しい。

たいして教養もないくせに朝早くから起こしてよくわからない躾を叩きつけられる。


眠らせて欲しい。

学校の朝は早かった。学校まで遠かったから早起きしなくてはいけなかった。近くの学校は高くて通えなかった。


眠らせて欲しい。

私の恋人は自分の思い通りにいかないとすぐ怒る人なの。機嫌の良い日はそうでもないから、死んだように寝てた。いっそ寝ているうちに死ねたらどれだけよかっただろう。


眠らせて欲しい。

睡眠薬をたくさん飲んでも永遠の眠りにはつけなかった。運が良い?最悪の気分。


眠らせて欲しい。

新しい恋人はとても優しい人よ。私が仕事で忙しくても責めない。そう、忙しくても・・・。子供ができたわ。もちろん、望んでいてのことだった、覚悟はしていたけど、子供を育てるってこんなにも眠れなくなるものなのね。


眠らせて欲しい・・・。

死にたい、死にたいといってなにもしなかったわけじゃない。死ぬ努力はしたの。でもやっぱり、痛いのは嫌だわ。それがいけないのかしら?


眠りたい。

薬の量がたりないのね。


眠らせて!もう嫌!もう知らない!痛くても苦しくても知るものか!!これで、このいつ終わるか知らない苦痛から解放されるなら私はなんだってやってやる!!!





・・・。


ここは、どこかしら?記憶が、いまいちあやふや・・・。森のようね。私は自分の部屋にいて、そして思いっきり腹を刺してやったのよ。あれだけぶっ刺したら死んでも当然。そもそも、今起こってることがあり得ないから・・・信じてはなかったけど、生まれ変わりでもしたのかしら。人は死んだ後のことなんかわからないものね。


ひどく眠たいわ。ずっと寝不足だもの。あぁ、ここでは満足に眠れたら良いのに。


「・・・やあ。」

後ろから誰かが来た。シルクハット、長いマント。手品で稼いでる少年?

「えっと・・・私・・・。」

なにから話せば良いのかわからない。少年は優しく微笑む。

「わからないことが多すぎてなにから聞いて良いかわからない、だろう?まずは僕の話を聞いてくれ。」

あ、図星だわ。いまいち胡散臭いけど、右も左も分からないもの。まずは聞かなきゃ。それで理解できるかわからないけど。

「私、生まれ変わったみたいなのっていったら信じてくれる?」

なにいってるのかしら、私。あら?少年がびっくりしている。無理もないわね。本当、私ったら何をおかしなことを・・・。


「なぜ、ここにくる前のことを覚えているんだ?」

「・・・えっ?」


私が理解するには、相当時間が要りそうだ・・・。


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