閑話休題3「ジャックの日記」
(今回は特別に、とある方の視点での物語になります。)
1枚目
4月2日 天気:晴れ
記念すべき1ページです。今日はなんと、俺がこの世界で迎える初めての1日でした!もう何がなんだかさっぱりですが、天才ですから、きっとすぐに馴染んでみせますよ。とりあえず俺は淘汰の国の一番偉い人に仕える結構な偉い人だそうです。
2枚目
4月3日 天気:晴れ
やること学ぶべきことがいっぱいでさすがのジャックさんもへとへと。新しい自分の名前でさえまだしっくり来ないのに。しかもバージョンダウン!召喚される前の俺がいかにチートだったか・・・とほほ・・・。あと同期のエースてやつムカつく。嫌いではないですけど。クソ真面目な奴ほど利用しやすいし。ピーターていういいおもちゃも見つけましたし。
7枚目
○月○日 天気:
女王陛下が強い覚悟を蔑ろにしてしまう気がしたので、可哀想になんて言いません。彼女が決めたことですから。でも、女王の覚悟というか、精神力はすごい。普通、あんなことがあってすぐに立ち上がろうとはならない。
15枚
5月14日 天気:曇りのち晴れ
女王は少々生き急ぎだと思うのです。戦争というのはそうすぐにおっぱじめたら、こちらまで不利に追い込んでしまうというもの。じっくり準備を進めて圧倒的力で蹂躙するのです。
20枚目
6月15日 天気:曇り
淘汰の国には四つの勢力があり、それぞれトランプのマークを象徴している。俺が仕えるのはハートの女王。みんな国を独り占めしたいのは山々だけど、戦争はやはり避けたいので外っつらだけは仲良くしていた。今日、女王が宣戦布告をするまでは。
21枚目
8月21日 天気:雨
忙しくてしばらくかけませんでしたよ。だって戦争ですよ?なのにこうして日記を書く余裕があるというのは、我が国がひとまず完全勝利をおさめたから。スペード軍は油断していましたね。我が城のクソ堅物筋肉頭のエース野郎が鍛え上げた軍は只者ではないのです。
22枚目
8月22日 天気:
22日と言いながら次の日の朝に書いてるんですよねぇこれ。せっかく楽しい宴のことを書こうとしたのにいつの間にか寝ていたようです。しかも、夜の記憶がほとんどない。エースに聞いたら「貴様は二度と酒を一口たりとも飲むな」と言われました。どういうことでしょうか。
26枚目
8月30日 天気:曇り
城でちょっとした催し物がありました。スイーツバイキングもあったのですがエースはしばらく釘付けになってて、いやその可愛い女の子ならまだしも普段から筋肉の鎧着てるようなゴツいぶっきらぼう野郎のそういうギャップいらないんですって。女性目線からしたら違って見えるんでしょうが残念俺は男なので。スイーツはとても美味しかったですよ。
35枚目
10月11日 天気:
少し仕事が忙しくて日にちが空いたのですがそれよりうちの女王はまた宣戦布告!もういい加減にしてほしい!相手は白旗上げて降伏してるというのに攻めてどうするんですか!
40枚目
11月5日 天気:晴れ
クローバー軍はもともと弱いのをわかっていて降伏したので、圧勝でした。しかし、これはあとからこっそり捕虜から聞いたことですが、もしクローバー軍に手を出さなければダイヤ軍と手を組み我が軍を奇襲。仮に協力にこじつければ共にダイヤ軍を攻める予定・・・と。面倒ごとになりそうなのでやはり倒しておいて正解でした。
45枚目
ダイヤ軍が攻めてきた。油断していたところを。いきなり腕っぷしの強い奴らを潜伏させて、こちらの上から狩ろうという戦法です。少人数だからよかったものの、俺は両腕をバッサリ切られる羽目に。さすがの俺も怒りましたよ。この痛みと屈辱は、皆殺しにするまで忘れない。
46枚目
いやー!やりました!ざまあみろです!言いたいことはいろいろありますが、勝ちました!失った腕は二度と戻りませんが、まあよしとしましょう!それに、これでこの国はハートの軍のもの!腕を代償に国を得たのですからこれほど嬉しいことはあるものか!
48枚目
1月2日 天気:晴れ
今日は俺とエースに直属の部下ができました。セージとアルカネット。元はダイヤ軍のエースとジャックだった二人は向こうの女王をおびき寄せる捕虜でした。いらなくなれば殺そうとする女王に待ったをかけたのは俺です。なんでかはよくわかりませんが・・・。しかしセージは女性。女王陛下は自分の城に自分以外の女性がいるのは気に入らない。そこで「彼」としてこの城に仕えるなら命を助けてやってもいいと仰ってくれたら・・・ええ、そりゃもうセージの方はあっさりと・・・。ちなみに、手術云々を経て帰ってきたセージは立派に男になっていました。しょんぼりです・・・。
56枚目
3月5日 天気:晴れ
初めてのアリスとのご対面。好奇心旺盛、おてんばで、純粋な少女。いいですねぇ。あ、ロリコンではなくて。一緒にいると心が清らかになれるというか、童心に帰れるような気がして、ああいう人間の内面と触れるのはいいことです。そんな少女を・・・。ええ。哀れだとは思いますが、それだけです。
78枚目
6月15日 天気:晴れ
今回のアリスは少し変わってましたね。赤い服だったので女王はたいそう気に入ってましたが・・・。ピーターもお疲れなんでしょう。連れてくるアリスがああではちょっと。
125枚目
8月2日 天気:
なんと、少年のアリスときた。ピーターは一体どうしてしまったのでしょう。疲れすぎてそっちに目覚めてしまった?といったら蹴られました。他には、拷問を自らの手で行うのは初めてでした。間近で見たことはあります、前の世界で。だって今はそんなことする前に殺しちゃうんだもの。
・
・
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「しばらく書いてませんねぇ。」
自分に割り当てられた部屋、ジャックは机の引き出しの中から一冊のノートを取り出した。少し角が傷んでいるものの、状態は綺麗。書かれた文字も美しい。強いて言えば途中文字が崩れている所が多いページがあるが、それは45枚目から50枚目まで。彼の腕が義手になってしばらくの間だった。
「途中で流石に飽きたんだっけ。・・・懐かしい。」
毎日でないとはいえ記してきた今までを、1ページずつ目で読んでいく。思い出という名の、特に印象深かったページを。
「そうだ、久々に書きますか。今日の日記は長くなりそうだなぁ。」
真新しい万年筆を片手に、日記の新しいページに今日の出来事を記していった。
315枚目
11月2日 天気:曇りのち晴れ
久しぶりの日記です。アリスが来るのも、特に目新しくもなくなってしばらく書いてなかったのですけど今日は特別。今回のアリスは少し変わり者というか、特別変人なわけではないのですが、やれやれしてやられましたよ。
あの子といると心が救われる。もっと多くの時間を共に過ごせば、俺もようやく自分ではなり得ないと諦めていた人間になれる。でも、ただ救われたい、癒されたい、慰められたい、励まされたいだけで側にいたいわけではない。それも含めてそれ以上を求めている。
自分の気持ちが分からないほど愚かではないつもりだが、認めてしまえばあとが辛いだけです。彼女はいずれこの世界を出ていく者。いい思い出だけでいられるように、この気持ちは捨ててしまわなければ。
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