真実は紅く染まる
「・・・。」
アリスは強く瞳を閉じた。だがおかしなことに、アリスの体には痛みと呼ばれる感触がやってこない。耳には銃声、鼻には硝煙の火薬っぽい臭いが残る。この距離でまさか外すほど、冷静ではなかったのだろうか。いや、違う。しばらくして伸し掛かる体。アリスは恐る恐る瞼を開けた。
「なぜ、貴様が・・・。」
まさかの邪魔者にローズマリーが唖然としている。
「・・・猫さん?」
アリスの服が自分ではない血で汚れる。肩に手を、そっと離してみると、チェシャ猫の真っ白なブラウスからとめどなく滲む血は一箇所から。そう。アリスを庇って撃たれたのだ。そんな事はわかっている。でも、なぜ。という疑問がまだ。
「どうして・・・?」
細い呼吸を繰り返す。息をするのさえやっとなのだろうに。こんな状況においても、笑顔だった。
「・・・猫はね、いい子じゃない・・・君だから、助けたんだよ・・・。」
穏やかにも見える彼の微笑みか口端から微かに伝う血を見てアリスは大粒の涙を流した。拭うことも忘れて。感情がそのまま涙となって溢れ出しているような。
-貴方はいい子よ。-
-大切な人を守ってみせたのだもの。-
チェシャ猫にはほんのわずかな間だが、幻聴と聞こえ、幻が見えた気がした。今はいない大切な人が微笑みが重なっていたがすぐに現実に戻ると、泣いてぼろぼろのアリスがいる。
「ねえ・・・なんで泣いてるの・・・?」
力なく手を差し出す、アリスはその手を握り返した。チェシャ猫は虫の息で続けた。
「泣くのは・・・悲しい・・・から、じゃあ・・・。」
途端にアリスは箍が外れたように泣き出した。
「じゃあなんで貴方はそんな嬉しそうに笑ってるのよ!」
きつくあたるようにしか言えない自分に嫌気が差した。でも感情を制御できない心に余裕などなかった。
「・・・君が・・・いるから、嬉しいのに・・・。」
チェシャ猫は笑っていた。でも泣いていた。
「なんで・・・猫も泣いてるんだろう、わからない・・・。」
自分で自分の流す涙の理由がわからなかった。人間がもつ複雑な感情も。アリスもわからなかった。彼は嬉しいのか、悲しいのか。もはや手に力も入っていない。霧のように消えては現れる彼の手はまだ温かかった。
「ねえ、お願いが・・・あるんだ・・・。」
アリスは苦しそうに嗚咽する。
「何かしら?」
片手で乱暴に涙を拭い呼吸を整えた。
「・・・僕と・・・ずっと、友達で・・・いて、くれるかな・・・?」
今あるだけの力で彼女の濡れた手を握った。アリスは、必死に負けないぐらいの笑顔を作って頷いた。
「私達はずっと友達だわ。」
しばらくチェシャ猫は目を丸くさせた。しかし、それはほんのわずかで彼は満足げにそっと瞳を閉じた。気のせいか、綺麗すぎる顔に、頬に、何かが伝ったようだった。
「ありがとう、アリス・・・。僕、は・・・。」
そう言ったきり黙ってしまった。
「・・・チェシャ猫さん?」
アリスは急に静かになった彼の名前を呼んだ。返事はなかった。
「猫さん!?ねぇ、僕は何?何なの?ねえ!返事してよ!!」
ふいに体を軽く揺さぶる。もう息すらしてないのを感じた。
「返事がしないなんて躾がなってないわ!わ、私のペットなんか名前を呼んだら鳴き声で返事するおりこうさんなのよ!!」
なんでもいい、なんでもいいからとにかく彼の声を待っていた。心にもないことだとも思ったが、それでも文句でもいいからチェシャ猫はまた何かアリスに答えてくれると願ったのだが、まるで人形かぬいぐるみのように力の加わった方へ体が傾くだけの脱け殻で・・・。
「チェシャ猫さん・・・なんで?嫌だ・・・こんなの嫌だ・・・!!嫌だああぁ!!」
もう全てが崩れたアリスはその場でチェシャ猫の動かなくなった体を抱きかかえながら我も忘れて泣き喚いた。
「哀れなことだなァ!貴様には弾が通じぬと思ったから無視していたが・・・いらぬ感情を得ると脆くなるモノよ!!」
冷静さをすっかり失ったローズマリーは怒りに任せて、感情任せで衝動的におもむろにその銃口をアリスに向けた。
「すぐに天国にて会わせてやりたいものだ。しかし、貴様と違ってこの娘はこの国全てにおいて必要不可欠ッ!!」
アリスは寸前で気付いたがもう何をするにも遅すぎた。
「しばらくその足を動けぬようにしよう。」
彼女は引き金に添えた指に力を入れた。銃声が鳴る。しかし、撃たれたのはアリスではなく、撃ったのはローズマリーでもない。銃声と共にキンッと、金属が割れる音がした。
「痛ッ・・・!」
それから後に呻き声。アリスは恐々と顔を上げた。ピーターはいつの間にか気を失っている。チェシャ猫はとっくに死んでいる。ローズマリーは、黄金の装備が粉々に崩れ落ちそこから覗く白く華奢な右腕を抱えながら苦痛に顔を歪ませていた。血が抑え込む左手を伝って、落とした銃の近くにこぼれ落ちる。そこには先ほどの銃と明らかに別の誰かが撃っただろう弾丸が落ちていた。アリスがキョロキョロと辺りを見回すと、茂みから覗くのは、大きめの銃を構えるシフォンの姿が。
「帽子屋さん・・・!」
無意識に声の主の名前を呟く。気づけば、ぞろぞろと人が集まってくるではないか。でも、もう皆はこの状態を見て何も起こす気力がない。兵士も戦意喪失。だって自分たちを仕切る一番上が絶対絶命なのだから。いや、ならば今にでも敵をとらえ、上を助けるはず。
「・・・何故なのよおおぉ・・・!!」
ローズマリーはその場に崩れた。血の量が次第に増えるは増える。今の彼女に抗う術も女王としての威厳もない、それ以上にその姿が無様にも、はたまた悲痛にも見えた。
「やっと自由に・・・なれると私は・・・私は・・・っ!」
しばし泣き言を言っていたがアリスの視線を感じると表情が険しくなる。
「・・・何を見ておる!平和ボケした小娘風情が!!」
ローズマリーはひっきりなしに叫んだ。
「早くこの小娘と罪人を捕らえぬか!!誰か・・・誰でもよい!早く・・・!!妾の命令が聞けぬか!!」
しかし、何の音沙汰もない。妙なほど静まりかえっている。
「妾はこの国の女王だぞ!?」
虚勢を張っている一国の統治者のなけなしの命令は誰にも聞き入られることはなかった。にしてもこのあまりの静寂はおかしい。向こうからの兵士のざわめきすらぴたりと止んだような。
その時だ。
「アリス!今だ、女王を倒せ!」
城門の方から声がする。見ている者の中のうち一人だ。それだけではなかった。この国の住人だろうかなりの大勢の人が駆けつけていた。
「え・・・?」
アリスは何が何だかわからない様子で彼らを視界に入れる。彼らはこちらには来ない。あれだけの人がたったひとりの死を望んでいる様はとても異様で気持ち悪さも覚えた。
「もう独裁国家はうんざりだ!!」
「この国はこの国に住む人のものだ!じゃないならなんのために俺たちは存在するんだ!」
「我らに自由を!!」
そういうことか。アリスが求められているのは、革命か。
誰もが皆、暴君の死を望んでいる。今なら怖くないと、彼女に仕えていた兵士まで。
アリスの一声で彼女は救えるだろう。しかし、救った後はどうする?アリスが女王になった後の彼女は?
アリスの一声で彼女は救えるだろう。どうにかできるはずだ、女王になったあとも。いや、どうだろう。これだけの数に納得のいくような提案ができるだろうか。だって、今でさえ恐怖として体を震えがらせているのに!もっと和平的解決案はないのだろうか。どうしても彼女が死ななくてはいけないのか?仲間の姿が見える。
マーシュがいた。一緒になって同じことを叫んでいる。
シグルドはいない。フィッソンもやはりいなかった。
エヴェリンは周りの勢いに押されていた。アリスを心配そうに見ている。
レイチェルもやはり、同じように煽って拳をあげていた。フランネルは寝ている。
シフォンは・・・。睨んでいた。悔しさを堪えたような顔だ。その視線の先にいるのはアリスか、女王か。足元にはしばらく動けない者と二度と動けない者が倒れている。
やめて、そんなことしないで。誰か一人でも違うことを言ってよ。アリスは膝が震えたまま動けない。
「・・・妾は、どうすればよかった?」
するとローズマリーが何か小声でいい始めた。よく聞かなければ、胸糞悪い雑踏にかき消されそうな声で。
「母は優しかった。だからうまくいかなかったのだ。皆も恐れる暴君でも駄目だった・・・。何が正しかった?・・・私はこうなる為に頑張ったんじゃない!!」
そんなかわいそうな女王の嘆きもアリス以外には届かない。皆からしたらいい見ものでしかない。黙ってくれたら、彼女の本音も聞こえるはずなのに。もういい、いっそ自分が・・・。
「でも、結局無意味なんだな。」
ローズマリーは笑っている。己の運命をほくそ笑んでいる。
「女王様・・・。」
「これでわかった。何もかも無意味なんだと。・・・もういい、疲れた。アリス。」
今度は自然な笑みだ。いつか見た威厳など欠片もない。穏やかな表情で残酷な言葉を口にした。
「妾を殺せ。楽にさせてほしい。」
アリスはしばらく思考が止まったがすぐ我にかえり首を横にぶんぶん振った。殺すことなんて、もううんざり!というより、アリスにはできない。こんなにも惨めな終わりはあんまりだ!
「命令だ・・・いや、これは「お願い」だ。頼む。」
「聞かない!嫌よ!」
頑なに拒み続けるアリスに早くも痺れを切らした。
「いつまでもこんな奴らの見世物として晒されとうない!!体も痛いし心も痛い!・・・もういい!せめて銃を取れ!貴様ができぬなら自分でやる!!」
それもできない。死なせたくないのだもの!アリスにはまだわからなかった。死で救われる者がいることを。誰か、助けて。つい、心で叫んでしまった。
―・・・だっさ。
アリスの脳内に、思考を邪魔して「あの声」が占領してきた。夢に出てきた、十三番目のアリス。
―生きることが幸せで死ぬことが不幸とは限らないのよ?―
「でも死んじゃったら・・・。」
―こいつがろくな人生遅れると思う?アンタは何も知らなすぎる。―
十三番目がアリスを説き伏せようと語りかける。
「だからって・・・。
―だからって、なぁに?―
小馬鹿にしたような笑みが頭をくすぐる。
―殺すことなんかできない?―
―それだけ?なら・・・―
ついに彼女は魂をもって「動き出すことを」決めた。アリスがふと隙を見せたから、今のアリスは十三番目のアリスのものになってしまった。
アリスは立ち上がり、血液にまみれた銃を手に取り力一杯斜め下に振れば、ローズマリーがいつか持っていた等身大の黄金の鎌に姿を変えたのだ。
「アリス・・・?」
シフォンがその光景を遠目に見ていて疑問の声をもらす。だがローズマリーはそんなことはどうでもよかった。血に濡れた手で滑らぬよう力をこめてしっかり握るって、一歩ずつゆっくり近づいた。
「女王様。」
アリスの呼び掛けに顔をあげる。
「アリス・・・。」
きっと誰も気づいてない。今のアリスがアリスであってアリスでないことを。
「さようなら。」
そう言いながら、アリスはおもいっきり鎌を振り上げた。心なしか、笑っていた。それはアリスもだがローズマリーも。そして、残酷な刃は最後、何人もの身と頭を断ち切ってきた彼女の頚部を綺麗にはねて、優しい笑顔は地面に転がり落ちた。
「――――・・・!!」
ブツンと頭の中で何かが切れる音がした、同時にアリスは手繰り糸を断たれた操り人形みたいに体が崩れ力なく座り込んだ。目の前にはローズマリーがこっちを見て優しく微笑んでいた、首だけが。
「・・・・・・。」
彼女がやったことは正しいことではない。だが、自分の知らない間に終わらせてくれたのだ。悲しい。やるせないけど。張り詰めた感情からは解き放たれた。代わりに、途方もない虚無感に襲われた。体に力が入らない。
「アリスが・・・とうとうアリスが女王を倒したぞ!」
「まさか・・・!」
周りは思いそれぞれにみな同じようなことを口々にしていた。アリスにはただの雑踏にしか聞こえなかった。沈黙が続いたあと。
「女王アリス万歳!」
誰かが叫んだ。アリスはたった今、女王になった。
「女王アリス万歳!!」
「女王アリス万歳!!!」
それを口火に次から次へと沸き上がる新しい女王を讃える歓声と、拍手!鳴り止まない大合唱!
「女王アリス万歳!!」
「アリス女王陛下万歳!!!」
やや遅れてから今度はなんとローズマリーに仕えていた兵士が続けて合唱を始めた。
「アリス女王万歳!!!」
同じような称賛の声が空間を、アリスの耳を頭を侵した。やがてエコーまでかかったように聞こえる。延々と、ぐるぐると。
「アリス女王万歳!!!」
機械的にも思えてきた。おぞましさや気持ち悪さも。・・・アリスになるという事をこの国に来て始めに聞かされた時はそれはとても誇らしく嬉しい事だと思っていた。自身がどういった存在であれ「誰かに認められる」のが悪い気のする人はそうそういない。
「女王アリス万歳!!!」
女王を倒すのが存在証明になるのは納得がいかなかった。だがアリスは倒すを最悪の形で捉えてはいなかった。少なくとも、こんな形では。深刻に捉えるのも無駄なぐらい。
「女王アリス万歳!!!」
ひたすら続く女王コールを閉ざし思考する。自分は今ようやくこの国の女王・・・ん?待てよ?思い出した。女王になるのはアリスではない。次の女王が決まるまで、と聞いた記憶が蘇る。そうだ、思い出した。ゲームには勝ったし、女王も倒してしまった。そうした自分はここではようやくアリスとして認めてもらえるらしい。・・・すなわち「アリス」になったのだ。
「女王アリス万歳!!!」
アリスを無視してアリスコール。アリスはいろんな疑問を含めて「これでいいの?」
と小さく呟いた。
「女王アリス万歳!!!」
―このまま戻っていいのかしら?―
「女王アリス万歳!!!」
―でもこのままこの国にいてもいいの?―
「女王アリス万歳!!!」
―こうでもしないと私はアリスとして認めてもらえなかったの?―
「女王アリス万歳!!!」
―猫さん。女王様・・・私、アリスになったよ。―
「×××××××!!!」
―ごめんなさい。ありがとう・・・。―
「×××・・・××・・・××・・・!!」
―私、一生忘れないから。―
「・・・あら?」
ふと金色に光る物体が視界に飛び込む。アリスは気になりその物体を拾った。
「これは・・・懐中時計ね。兎さんのだわ、きっと。」
ピーターが何らかの拍子で落としたのだろうと推測した。足元に目をやる。二つの亡骸と気絶している者。このまま放置するわけにはいかない。ひとまず目の前の状況だけでもなんとかしないと。悲しむことは後でもできるのだから。最初に、叫ぶのに必死な皆をなんとかしないと。すると、時計の針が急にかなりの速さで逆回りし始め。
「まあ、おかしな時計だこと!」
まるでアリスが手に取った瞬間に回り始めたような。一周、二周、何周も普通とは何倍もの速さでぐるぐると回り続ける。
「私が、壊したのかしら?」
どうあれ一度はピーターの家を大破壊してしまったアリスは自分に自信がなくなっている。段々と針の動きが遅くなってやがては止まった。
「12時35分、今の時間かしら?」
――アリスちゃん!――
突然、また頭に直接話しかける。だがそれはこの国にはいない、自分の身内の声だった。少し懐かしさと安堵を覚える、が、今やそんな悠長にしている場合ではない。アリスは耳をそばたてた。
―帰ってきて・・・お願い・・・!―
すがり付くような声、妹を溺愛してやまないロリーナのことだから心配で心配で仕方がないのだとアリスは焦りながら空に返した。
「大丈夫よお姉さま!今すぐ帰るから―・・・。」
そんなアリスの頭の中に大量の映像がかわるがわる流れ込んだ。記憶のようなそれは瞳に焼き付いて剥がれない。
「なんなのこれ・・・。」
それらは全く見に覚えのない映像ばかりだった。いや、違う。見に覚えのないのは確かだが全く作られた物ではない。そう、それが何故ならば最初に見た光景はアリスが穴に落ちたあの場所の景色そのまんまだったのだから!次に流れ込んだのは自分が穴に落ち続ける場面でもなければ本来止まっている時間内のロリーナでもない。「たいして深くもない」穴の底に横たわる自分の姿とそれを見て泣き叫ぶロリーナと、あわてて駆けつけた家族のあわてふためく場面だった。
「嘘よ。私はここにいるじゃない。」
そう言ってから止めどなく次々に映像が流れる。穴から拾われるアリスは何度体を揺さぶられても起きようとしない、家族や医者の懸命な処置でもびくともしない。頭には血が、打ち所が悪かったのか。
映像は断片的に変わる。次は、少し大きめの箱に沢山の花に包まれて静かに仰向けで眠っている自分の姿。お気に入りの絵本やおもちゃもある。この箱は、なんだろうか。
「いや・・・待ってよ。」
更に、お墓の映像。家族が喪服を着て、ひたすらに誰かの死を、悼んでいる。誰かとは誰だ。
「私は・・・ねえ、気付いて!私は死んでなんかないッ!」
アリスは必死に叫び続けた。しかし、無惨にもお墓に彫られてあった主の名前は・・・。
―アリス・プレザンス・リデル―
「よくわからないけど早く帰らなきゃ・・・私、いない子になっちゃう!」
あんなものを見たら居ても立っても居られない。帰れる方法なんて全くわからないけど、じっとなんてできなかった。ところが。
「・・・!?体が熱い・・・。」
いきなり、火照るような熱さを感じた。でも、内側からじゃない。まるで外から焼かれたような熱さだ。次第に熱は増していく。
「あ、熱い・・・いやああぁ!熱い!!」
実際に焼かれているわけでもないのに、火炙りにされているよう。体を襲ってきた業火の炎に燻られるような熱さに身悶えした。さすがの見ている人はみなだまり、代わりにざわめく。側からすれば、突然叫びながら踊り回っているのだから。でも苦しんでいることからただ事はないのは明らか。どうしていいかわからない人の群れの中、躊躇いもなく駆け出していく一名。
「お、おね、お姉さまっ、あ、あああああぁ!!!」
苦しさに悶えながら手を伸ばす。誰もいない。いや・・・。
「アリス!!!」
彼女の元に駆けつけたのはシフォンだった。わずかな意識の中で霞んで見えた。熱さは止んだのか否か、いずれにせよ耐えられなくなったアリスは彼の腕の中で気を失って倒れた。
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