第4話 黒い場所

 『木の板草原』を出て3週間。

 もうコニコニ動画の跡地に着いていてもおかしくはないのに、まだ着かない。

 辺りは段々と黒いもやで包まれていく。少年は暗視ゴーグルをファイルから取り出し、装着する。

 草原に隠れていた黒いカラスが少年の動きに驚き、カァカァと鳴きながら上空へと飛んでいく。

 急に出てきたカラスにビクッと少年は驚くが声は出さない。

 少し進むと、右側の林の方から「やめてくれぇぇぇ」と男性の叫び声が聞こえる。

 少年は気になり、少年と同じくらいの背丈がある草に隠れながら叫び声がした場所へと向かう。

 少しすると茶色くて太い木の幹が目の前に現れる。その木に背中をくっつけ、そろりと右から目だけ出す。

 見えたのは少年のコートよりも長い黒のコートを着た男2人が、青色のパーカーを着て、スウェットパンツを履いた男に銃を突き付けている。

 男2人が持つ銃はネットでは使用禁止の『ウイルス銃』。その銃の弾に当たると様々なウイルスがアバター内に入り込み、アバターのプログラムやデータをすべてぶち壊す。

 男が命乞いをする。

「お願いだ! 金は何とかする! この前サツにバレない薬のサイトを作ったから、な? 頼む! その銃を、しまってれないか?」

「そのサイト、もうバレたそうじゃないか。嘘をつくなんて、な!」

 男の片方が、命乞いをする男を強く蹴る。

 そしてもう片方が引き金を引いて、撃った。

 サプレッサーを付けていたのか、大きな音は鳴らなかった。

 見つかる前に逃げなくては、と少年は思い、後退りする。

 そのとき、地面に落ちていた枝を少年が踏んでしまう。それはポキッと鳴った。

 静寂の空間でその音はかなり目立った。

「おい! 誰かいんのか!」

 やばい、死んだ、と少年は死を悟り急いで自転車のところへ走る。

「あ、いたぞ! あそこだ!」

 少年は死ぬ覚悟で自転車をこぎ始める。

「逃がさねぇ、これでもくらえ!」

 先ほど銃を撃った男が急いで銃口を少年に合わせる。

 そして、銃口からウイルス弾が放たれ、少年の肩に突き刺さる。

 少年は、あっ死んだ、と思ったが最後の力を振り絞り、全力でこぐ。

 闇の靄を抜けたところで少年は意識を失った。

 

 

 目を覚ますと、そこには1人の女性が。

 女性は青い髪に、肩が露出した灰色の服、その露出した肩には『01』の数字が。

「あ! 大丈夫ですか? 道端で倒れていたので……。しかも、体内に多量のウイルスがあってびっくりですよ!」

 少年に女性の声は聞こえなかった。

 聞こえていたが、頭が朦朧もうろうとしていて理解ができなかった。

「その……恰好かっこうは?」

 ふと、気になった女性の恰好を訊く。

「あぁ、これですか? 『初音ミク』のコスプレですよ! ――あ、知ってます?」

「ということは、ここは……?」

「ここですか? ここは『コニコニ動画』ですよ! まぁ、跡地ですけどね……」

 旅をして約6年。

 少年はたどり着いたのだ。

 かの有名な『コニコニ動画』に。

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