第3話 木の板の草原
緑の草原が広がり、濃い緑色の木々が奥のネット山に向かって伸びている。
しかし、緑色の草原は少し変わったところがあった。
土の道を挟んで両脇に木の板が、それも無数に等間隔で地面に刺さっているのだ。
木の板には『今日はランチに行きました』や『まじ、いつメンサイコ~! あたしらいつまでも友達な!』、『ガチャ260連、無事爆死!』など短い文が書かれている。でも、どれも60年以上前のモノばかりだった。
少年の周りに人はおらず、とても静かだった。
少年は自転車から降りて、手で自転車を押しながら木の板を1枚1枚ゆっくりと見ながら進む。
『これが、次世代の野球!』
『政府、緊急事態宣言発令』
『9年ぶり! 大塚先生の【三角定理の覚え方】』
『400万の時計、友達のクレカで購入したったw』
『【温滅の土地改良】興行収入325億! 歴代1位!』
どれも少年の知らないモノばかりだったが、その時代に人が生きていたということだけで少年はなぜかうれしくなる。
ドンドン進んでいくと木の板の終わりが見えてきた。
その木の板の内容を見る。
『just setting up my wooden board』
海外の言葉でよく分からなかったので翻訳アプリで翻訳しようとしたらエラーが起きて使えなかった。
木の板の日付を見る。
日付は『2006』と書かれていた。今から81年前のことだ。もしかしたら、この人はこの世にいないのだろう。そう思うと悲しくなる。
少年はファイルからデジタルカメラを取り出し、その木の板を撮る。
少年は、「よし、良いのが撮れた」と笑顔でつぶやき、自転車に跨る。
そしてまた自転車をこぎ始めた。
少年が最初の町から発って6年。
サルテン・ハチュランはもう近い。
その証拠に『ここからコニコニ動画敷地』と書かれた大きな看板がドンと置かれていた。
コニコニ動画跡地を抜けると、もう3日も経たないうちにサルテン・ハチュランだ。
少年は今日も元気に進む。
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