第251話 浅井長政1

美濃国の岐阜城に着いた。

「全軍休憩に入れええええ!!」


「あははは、やっぱり普通の兵士なんですね。行軍中一言も話さないから、人形かと思いましたよ」

10万の兵達が一斉に休憩に入り、ガヤガヤと話しながら休む姿を見ながら姉小路頼綱が話し掛けてきた。


「あはは。頼綱、行軍中はなぁ、敵に察知されない様に出来るだけ音を立てないのが重要なんだよ。ねえ、爺さん達!!」

俺が無駄話ばっかりで煩かった爺さん達を振り替えると、爺さん達は視線を逸らした。


「信長様、お疲れ様です」

美濃国統括の内藤興盛が俺達を出迎える。


「おう! 美濃も準備が万端に整った様だな」


「はい。急激に増えた新参兵も、何とか動けるようになりました」


「信長兄さ~ん!」

斎藤利治が駆け寄ってきた。斎藤利治は帰蝶の同母弟で俺の義理の弟だ。


「よう! 利治の兵も錬度が上がってるようだな」


「本当ですか。そう言って貰うと嬉しいな。訓練を重ねた甲斐があります」

利治はそう言った後、姉小路頼綱を見た。


「頼綱もお疲れ、兵を連れて来てくれたのかい。有り難う」

利治の同母姉を妻としている姉小路頼綱は、義理の兄にあたるが歳が近いので、友人の様に接している。


「いやぁ、ははは、こんな大軍の中で300人だけで恥ずかしよ」


「いや、数じゃないだろ。駆け付けてくれた、その心意気が嬉しいよ」


「利治にそう言って貰うと、胸が軽くなるよ」


なんて、利治と頼綱が会話しているので、俺は興盛に美濃国の兵の確認をする。


今回出陣する美濃国の武将と兵は下記の通り、合計で3万人の出陣だ。


【美濃国】     計30000人

美濃国大将      兵5000人

 美濃国統括:岐阜城代・内藤興盛

西濃        兵10000人

 統括:十九条城代・金森長近 

 副将:北方城主・安藤守就 

 副将:大垣城主・氏家卜全 

 副将:曽根城主・稲葉一鉄 

 副将:西保城主・不破光治 

 副将:軽海西城代・織田信広

中濃        兵10000人

 統括:関城代・斎藤利治

 副将:堂洞城主・岸信房

 副将:加治田城主・佐藤忠能

 副将:鵜沼城代・前田利玄

東濃         兵5000人

 統括:兼山城代・森可成 

 副将:勝山城代・河尻秀隆

 副将:明智城主・明智光安

 副将:岩村城主・遠山景任(不参加)


東濃は武田信玄の信濃国と隣接してる為、武田信玄の抑えとして遠山景任は不参加だ。


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浅井長政の居城の小谷城で、浅井長政が重臣である遠藤直経と会話をしている。


「若殿、本当に行くのですか? しかも3千もの兵を連れて!」

遠藤直経が浅井長政に尋ねる。


「本気も本気、あの信長がいくさをするのだぞ。行かないでどうする」


「しかし、いくら財政が上向きになってるとは言え、3千の兵の出陣は戦費が掛かります。もっと少ない人数でも良いのではないですか」


「いや! 出来るだけ多くの武将、多くの兵に信長の戦いを見せておきたい。特に信長との同盟に反対していた者達には、信長のいくさがいかなる物か、目に焼き付かせるのだ」


「しかし………」


「直経、お前も信長がどんな存在か分かってない。良く観察するのだな。行くぞ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「浅井長政の兵が此方に向かって来るのじゃ」

饗談が現れた。


今度は長政か。


「総軍、迎撃態勢だ! 方陣だ!」

太鼓の音で淀みなく迅速に動き出す兵達。


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姉小路頼綱と歓談中だった斎藤利治。


「お! 迎撃態勢の合図だ。ごめん頼綱、話は後だ。陣は方陣か、比較的楽だな。信長兄さんは本気の迎撃は考えていない様だ」


「利治、この太鼓の音で、そこまで分かるのか?」


「頼綱、これは軍事機密だ。親族で同盟国とは言え、他国には教えられないよ」


「そ、そうだね。それはすまない。俺は信長兄さんのところに戻るよ」

利治の兵士が機敏に動くのを横目に頼綱は去っていく。


頼綱と入れ替わるように岸信房が利治の元に駆け寄る。


「浅井長政の兵が向かって来るようですな。ささ、利治様。陣の後ろに移動しましょう」


「長政か、市様の旦那だな。援軍のつもりなのだろう。ゆるりと行くか」

「はい」

斎藤利治と岸信房はゆっくりと移動した。

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