第252話 浅井長政2

浅井長政の兵が黙視出来る位置に来ると太鼓の音が鳴り響き、信長の10万の兵は規律良く迅速に方陣を敷いた。


「長政様、ああああの大軍がのののの信長のおおおおお──」

浅井長政の家臣である脇坂秀勝が信長の大軍を見て驚き浅井長政を見た。


「秀勝、落ち着け!」

長政は大声を上げた。長政もこれ程の大軍で信長が伊勢攻略をするとは思ってなかったので、自分も落ち着かせようと思った。


浅井長政の重臣である海北綱親かいほうつなちか雨森弥兵衛あめのもりやへえ赤尾清綱あかおきよつなは信長の兵を見詰めるが、その数の多さに冷や汗が流れた。


「こ、これ程の大軍だとは………」

「しかも生半可な錬度ではないな」

「うむ、兵が微動だにもしない」


そして連れて来た兵達の間では動揺が止まらない。


浅井長政達が織田信長軍に近付くと。


「構えええええ!」

と遠くで声をがして太鼓が鳴り響き、一糸乱れぬ機敏な動きで銃口を向けられた。


「ひゃあああ!」

脇坂秀勝が悲鳴を上げ、兵も逃げ腰になった。


「止まれ!」

浅井長政は進軍を止めて信長の大軍を見詰めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


信長本陣。


「宗朝!重政と安勝を連れて浅井長政を迎えに行ってやれ、長政の兵は左翼に案内して重政をつけろ、本陣に来るなら5人までだな」

小梁川宗朝に浅井長政を迎えに行かせる。


宗朝に近臣の中川重政と前田安勝を着ければ、卒無くこなすだろう。


「おう! 承知した。重政! 安勝! 行くぞぉ!」

小梁川宗朝はそう言うと軍馬のいる場所に歩いて行った。


「「はい!」」

中川重政と前田安勝は、駆け足で小梁川宗朝の後を追う。


「利家、馬を借りるぞ」

小梁川宗朝は前田利家のスレイプニルに乗った。


「はい。って、もう乗ってるし」

利家は小梁川宗朝を見ていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


浅井長政が、進軍を止め織田軍の陣を見詰めていると、突然陣の中央が二つに割れて道が出来た。


その道を馬に乗って颯爽と進んで来る3 人の男達。


その馬の足は8 本、普通の馬にはない迫力があり、意思を持って長政達を見ていた。


先頭の老兵が馬を飛び降りると、後ろの二人の武将もシンクロするように馬から飛び降りる。


老兵には隙が無く、歴戦を潜り抜けた風格と圧力が感じられた。


そしてその後ろに控える二人の若武者は、痩身で一見礼儀正しく見えるが、皮一枚剥いだ裏には獰猛な猛獣の様な強さが見え隠れする様だ。


「儂は織田信長の|名代≪みょうだい≫、小梁川宗朝だ! そのほう達浅井長政の兵で間違いないな。何をしに来た」

矍鑠とした老兵、小梁川宗朝は良く通る声で尋ねた。


「はい。私が浅井長政です。織田信長殿の援軍として3千の兵を連れて駆け付けました」

浅井長政が平然と答える。


「ふむ、承知した。援軍、感謝するぞ。兵はこの中川重政の案内に従って左翼に入るが良い。長政殿、信長様に面会するのであれば、従者5名まで連れて儂について参れ」

小梁川宗朝と二人の若武者は乗って来た馬に飛び乗る。鮮やかな手並みだ。


「はい。面会を希望致します。直経、弥兵衛、綱親、清綱ついて参れ、………それと父上同行願います」

浅井長政は重臣の遠藤直経、雨森弥兵衛、海北綱親、赤尾清綱と父である浅井久政を信長に面会する際の従者に選んだ。


「貞征、中川重政殿に案内して貰い兵を移動しろ」

そして、兵の移動を家臣の阿閉貞征あつじさだゆきに指示すると、浅井長政達も馬に乗り小梁川宗朝の後をついて信長の軍の中を進んだ。

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