第241話 北伊勢攻略3

「義隆様、あの者達は切り札じゃないのですか?」

無言で大内義隆の後ろに佇む百足王と雀蜂女王を指差し、義隆に噛みつく陶晴賢。


「義隆様の護衛を兼ねた切り札として信長様に派遣されていますね」

義隆の隣にいる真田幸隆が無表情で答える。


「切り札を初めに出してどうするのですか」

更に義隆に詰めよる陶晴賢。


「いや、初回の攻城戦なので、派手にぶちかましてやろうかと思ったのじゃ」

シロナガスクジラの獣人である大内義隆は、大きな体を縮ませた。


「はぁ、切り札はここぞと言う時に使う物です! 次は出さないでくださいよ!」

陶晴賢が勢い良く強く言うが、大内義隆がプイと横を向いた。


一方、走井城主・矢田市郎右衛門尉を冷泉隆豊が蹂躙し、桑名郡は制圧が完了。


続いて員弁郡いなべぐんを攻略した。


員弁郡には「北勢四十八家」の城主も沢山いるが所詮小規模城主だ。侵攻したのは3万を超える大軍で強力な大軍に為す術がない。抵抗する城主は大砲と鉄砲と圧倒的な戦力で蹂躙した。


帰順した城主も多く、中には六角氏の傘下にあったり、他の郡の城主の傘下にある城主もいたが関係無い。裏切れば蹂躙するまでだ。


初戦で水を差された戦闘狂の陶晴賢も、暴れん坊の矢田冷泉隆豊も大満足で朝明郡あさけぐんの攻略に入った。


「朝明郡の状況はどうなのじゃ?」

大内義隆が真田幸隆、明智光安、滝川一益に尋ねる。


滝川一益は北伊勢に近い近江国甲賀の出身と言う事もあり、長年伊勢の諜報活動を担ってきた事で、長島統括も任せていたので、北伊勢攻略では副官の立場だ。


「『北勢四十八家』の朝倉家・赤堀家・南部家が組んで抵抗する意思を見せているのと、

『伊勢三家六人衆』の一家である萱生城主・春日部俊家が、『伊勢三家六人衆』の北伊勢の他の二家である三重郡千種城主・千種忠治と河芸郡神戸城主・神戸具盛と組んで徹底抗戦の構えです」

滝川一益が大内義隆に説明する。


「良く分からんが抵抗勢力が2つあると言う事かのう。『北勢四十八家』と言っても小規模領主じゃろう。そっちから倒すのじゃ」


「しかし、経路としては、初めに神戸具盛の家臣である沼木宗治の柿城があります」

と滝川一益。


「どういう事じゃ?」


「北伊勢の三家と先に当たると言う事です。攻めないで通り過ぎますか?」


「ふん、攻めるに決まっておろう。来るなら来れば良いのじゃ。どんどん進むのじゃああああああ!!!」


織田軍は沼木宗治の柿城を包囲して大砲の準備をしていた。


「義隆様、萱生城主・春日部俊家が、家臣の伊坂城主・春日部太郎左衛門尉と共に、2千の兵を率いてこちらに向かって来ます」

滝川一益が配下の甲賀忍者からの情報を大内義隆に報告する。


「2千ごときで狼狽えてどうするのじゃ」


「いや、別に狼狽えてはいません。奇襲を受けない様に放った、忍びの警戒網に引っ掛かったので報告です」


「ぐだくだ言わないのじゃ。一益、予定通り柿城は砲撃じゃ。隆豊、久秀、迎撃するのじゃ!」


「「「承知しました」」」


滝川一益は柿城に砲撃し、冷泉隆豊と平手久秀は併せて1万の兵を連れて迎撃に向かった。

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