第225話 鵜沼城攻城戦2

鉄砲の轟音が鳴る中、許二が鐘捲自斎に声を掛けた。

「扉、開ケルヨー」

「おう、行ってこい!」

と大声で叫ぶ鐘捲自斎。


「あ"ぁ、この音。……うっせぇわ!!」

鐘捲自斎は苛つき吐き捨てる様に言った。


「ウッセー」

「ウッセー」

「ウッセェワー」

「アハハ」

「早ク、行コー」

元倭寇達が笑ってふざける。


許二は飛び上がった。急に飛んだので鵜沼城の弓兵は反応出来なかった。


そして、一気に城門の中に飛び降りると。城門の中から悲鳴や罵声が聞こえる。


鐘捲自斎と元倭寇達は構わず城門の前まで歩いていく。


初めは雨の様に降り注いでいた矢も、弓兵が狙撃されて今では散発的に放たれ、矢が放たれると直ぐ鉄砲で撃たれて沈黙する。


「はは~ん。成る程、この城門では大砲でも駄目だなぁ」

鐘捲自斎が見上げる先にある城門は、大砲対策で鉄で出来た城門だった。


「ですねぇ」

辛五郎も城門を見て答える。


城壁は天然の岩山。堅牢な城というより「要塞」と言う言葉がしっくりくる造りだ。


「どれ、俺達も行くか」

と言うや否や鐘捲自斎はジャンプして城門を飛び越えた。


「殺ッタルデー」

「待ッテロヨー」

元倭寇達も城門の高さをものともしないジャンプ力で、次々と城門を飛び越える。


「がはは、なんだ正面突破かよ」

新免無二もジャンプして城門を飛び越えた。


その時、鉄の城門が開いた。


「開ケタヨー」

許二が笑っていた。


「ア!開イター」

「ヤッター」

「行クデー」

まだジャンプしてなかったオニヒトデの魚人陳東ちんとうとウツボの魚人方武 ほうぶ、オコゼの魚人李光頭りこうとうらが駆け足で城に雪崩れ込む。


開いた城門の中は死屍累々の光景だった。


「おお! 城門が開いたぞ」

木下藤吉郎が喜ぶ。


「突げ───」

斎藤道三は「突撃」の言葉を途中で飲み込んだ。


元倭寇達が城門の中に入って見えなくなると、城の中から鵜沼城の兵達が両手を上げて飛び出してきた。


「助けてくれぇ!!!」

「なんだぁ!アイツらぁ!」

「ひええええええ!」


その中で一際大きい男。2mは越えていて体格が良い割りに震えて怯えていた。


「基康! 降参するのか?」

斎藤道三が大沢基康に尋ねる。


「こ、降参します! 城の家臣達を助けてください!」

鵜沼城主・大沢基康が叫んだ。


鵜沼城主・大沢基康は蛇の獣人(マルガスネーク)だ。土下座して助けを求めてきた。


マルガスネークはオーストラリアで最も大きい毒蛇で、一回の噛みつきで流し込む毒の量も多い。


「分かった分かった。もう終わりにしてやる。藤吉郎! 鐘捲自斎にいくさが終わった事を伝えてくれ」

斎藤道三が木下藤吉郎に指示するが。


「承知しました。退却の太鼓を鳴らせ! 全軍城内に入って負傷者の救護と元倭寇達にいくさが終わった事を伝えろ! 鵜沼城の兵士には城の外に出る様に指示しろ」


木下藤吉郎が近くの兵に全軍に伝える様に指示すると、周りの兵士からぞろぞろ鵜沼城に入って行く。


「俺達はここで待ってるぜ」

津田監物と鉄砲兵300人は城外で待つ。


「ん? 退却の合図で元倭寇達は戻って来ねえのか」

道三が不思議そうな顔をする。


「元倭寇達は多分太鼓の合図を知りません。一人二人で伝えに行っても探すのに時間が掛かるでしょう。全軍を行かせます」

藤吉郎は平然と答えた。


「えええ! 退却の合図を知らねえのか?」


「無二さんは知ってると思いますけど、あの人は退却の合図で退却しない人ですからねぇ。私も城内に行って来ます」

木下藤吉郎は城内に走り去った。


「ええええええ! 俺の家臣達があああ!」

大沢基康は泣き崩れた。

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