第200話 十四条軽海の戦い5

「はあ、はあ、はあ」

軽海の地まで逃げて来た斎藤軍。


「くそっ、何であんなに強いんだぁ!」

日根野弘就が叫ぶ。


「取り敢えず、ここで迎撃の体制を整えよう」

長井道利は冷静に言うが………。


「いや、逃げきれて無いだろう、追手がそこまで来ている。もう終わりだ。散開してバラバラに逃げよう」

日根野弘就が怯えながら逃げて来る斎藤軍の兵士達を見詰める。


「待て! あれは何処の軍だ」

長井道利が指差す。


大勢の軍が軽海の地に近付いて来るのが見えた。


「あの旗は西美濃三人衆の………、安藤守就、………稲葉一鉄、………氏家卜全」

軍勢が近付いて来ると旗も見えてくる。


「勢揃いじゃねえか。あのジジイども、重い腰を上げて今頃来やがったか」


「西保城主の不破光治もいるぜ。兵も2万はいるな、これで大うつけ者の信長を倒せるぜ」


「ちょっと待て! 今頃来るなんておかしいな。義龍からも再三出兵要請がいってたのに、動かなかったジジイどもだぞ」


「このタイミングで大軍で来るのは確かにおかしい。………ちぃ、寝返りかぁ!!!」


主君を裏切り寝返った二人だから感じた嫌な予感は、確信に変わった。


「挟撃されるぞぉ!!」


「ヤバイな、………退散だあああああ!!」

長井道利が叫ぶと緊急事態の退散の太鼓が鳴り響いた。


蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げ出す斎藤軍。一番追撃し難い逃げ方だ。


慌てて西美濃三人衆の兵が斎藤軍を取り囲もうとするが間に合わない。


なんとか取り囲んだ斎藤軍の兵士は二千程度だった。


追撃していた織田軍は、急に現れた西美濃三人衆の軍と対峙して、様子を窺っていた。


そこにゆっくり登場した俺達。


「おう、あれは味方だ。西美濃の実力者に内応して貰った。戦闘体制を解除して休憩に入れ」

と言って、帰蝶と軍師達、三好政長、斎藤道三を連れて西美濃三人衆の軍に向かった。


「皆大義であったな。久しぶりだな安藤守就、そして氏家卜全、稲葉一鉄、不破光治、内応に感謝する」


「信長様、ご無沙汰しております。この度の戦いはお見事な勝利、誠におめでとうございます」

安藤守就が跪き頭を垂れると、他の三人も同じ様に跪く。


「うむ。援軍感謝する」


そして改めて西美濃の四人の城主達も恭順の意を表し俺の家臣となった。


捕らえた二千の美濃軍の兵はそのまま俺の家臣として召し抱える事とした。


安藤守就・氏家卜全・稲葉一鉄は西美濃三人衆と言われるが、不破光治も含めて西美濃四人衆とも呼ばれる。


西美濃四人衆を明智光安と竹中重元によって調略していてのだ。想像通り悪魔に魅入られていた為、同行した小天狗が聖属性の術で正気に戻したところ、行いを悔いて内応し家臣になる事を誓った。


俺と話をした後、西美濃の四人の城主達は頭をさげながら、なにやら斎藤道三と話をしている。


これで西美濃は織田家が制圧した。残るは東濃と本丸、義龍が籠る稲葉城がある中濃だ。


その後西美濃にあった竹中重元の居城である大御堂城を取り戻した。


そして墨俣城に木下藤吉郎を軽海西城に池田恒興を城代におき、三好政長を西美濃統括として十九条城代を任せた。


木下藤吉郎は弟の木下秀長に留守居を任せ、池田恒興は家老の片桐俊元に留守居を任せ、木下藤吉郎と池田恒興は俺の城に来るらしい。


尚、各城には5百の兵を配置した。西美濃四人衆もいるし、これで西美濃は大丈夫だろう。


因みに明智城と妻木城は東美濃にあるので、明智光安と妻木広忠の城を取り戻すのは、またの機会となる。

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