第199話 十四条軽海の戦い4

大砲の轟音が鳴り響く中を許兄弟と剣豪達、鶴姫が、鶴翼の陣の中央に突撃した。


「がはは、景気が良い音がするぜ」

新免無二が斎藤軍の前衛が構える槍衾をスレイプニルで飛び越えた。


「二番ヤリー」

「ガンガン行クヨー」

「危ナイヨー」

許兄弟と剣豪達もスレイプニルで空を駆けて無二に続いた。


「ちっと待ってで。オタイも行くでぇ!」

鶴姫は鶴翼も槍衾を飛び越えた。


大砲の玉が斎藤軍に降り注ぎ、驚き慌てる斎藤軍を、許兄弟が情け容赦なく斬り倒す。


「おっと、待って貰おうか。ここは簡単に通り抜けられると思うなよぉ!」

無二が前に進もうとすると、立ち塞がる真木村牛介。


「ん? 何か言ったか。がはは」

一瞬のうちに無二の癬丸で牛介の首が斬られていた。


「無二さん、そいつ大将首じゃないすか?」

諸岡一羽が無二に声を掛けた。


「こんな弱っちいヤツが? 大将首な訳ねえだろう。がはは」


「それもそうすね」

無二と一羽は前に進む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


斎藤軍本陣。


「何ぃ! 前線を突破されただとぉ!」

日根野弘就はあまりにも早い報告に焦り、冷や汗を流す。


「真木村牛介はどうしたぁ?」

長井道利は伝令の兵士に尋ねる。


「瞬殺されました」


「はぁ、しゅ、瞬殺ぅ!」

日根野弘就は目を点にする。


「鶴の翼を閉じて包囲殲滅してやれ」

長井道利の号令で太鼓が鳴る。


しかし、鶴の翼が閉じ様とした時、百体のゴーレムが左右五十体づつ現れた。


驚き戸惑う斎藤軍の兵士達。


「た、退却だああああああああ!!」

日根野弘就の号令で退却の太鼓が鳴った。


斎藤軍は退却をしていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「え? あいつら退却してるぜ!」

俺はあまりにも早い斎藤軍の退却に驚いた。


「………そうですな」

山本勘助が目を細めて撤退していく斎藤軍を見詰める。


「追撃しましょう」

明智光安が進言する。


「そうだな」

俺はそう言って山本勘助・真田幸隆・竹中重元・三好政長の顔を見ると皆頷く。


罠の心配をして他に意見が無いか確認したのだが、皆罠は無いと判断したようだ。


俺達が「釣り野伏せ」なんて言う戦術を使うようになったから、ちょっと警戒しちゃうよね。


「追撃だあああああああ!」

俺の号令で追撃の合図の太鼓が鳴る。


松平元康とゴーレムた隊もゴーレムを送還して追撃を始めた。


「ギャッハー、レベ上げサイコー」

「待テヨー」

「ハイヨー」

許兄弟と剣豪達はスレイプニルを呼び、スレイプニルに乗って斎藤軍を追撃する。


「ちぃ、逃げるヤツを背中から斬るのは性じゃねえ。がはは」

新免無二は愛刀癬丸を振り血糊を払い飛ばすと、懐から布を出して刃を拭って納刀した。


「いきなり逃げ出したなあ」

鶴姫も足を止め無二の横に並び、逃げる斎藤軍を見ていた。


無二と鶴姫の脇を織田軍の兵士達が追撃の為走って行く。


「おう、どうした?」

俺は立ち尽くす無二と鶴姫を見つけて声を掛けた。


「なんでもないで」

鶴姫は俺の腕に腕を絡めて胸を押し付けてきたぞ。


おふぅ………。


「ちょっとぉ。いくさ中は過度の接触は禁止よぉ!」

帰蝶が鶴姫を引き剥がす。


「ちっとぐらいええやろう」

鶴姫と帰蝶の言い合いを見ながら斎藤軍をゆっくりと追う。


無二も無言で俺の後に付いてきた。

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