第198話 十四条軽海の戦い3

十九条から北にある十四条の地で斎藤軍は陣を敷いて待ち構えていた。


織田軍も十四条の地に到着し対峙する。


「おかしいよな? 美濃に侵攻した俺達を倒す為に来たのに、斎藤軍はあそこから動こうとしない」

俺は山本勘助に尋ねる。


「う~ん、そうですな。織田軍の数を見て警戒しているのか、なにか仕掛けがあるのか、援軍を待ってるのか」

勘助も判断出来ない様だ。


「美濃国内で援軍の見込みは無いでしょうしねぇ」

明智光安が勘助の言葉に応える。


「確かに………」

真田幸隆は斎藤軍を注視し、何かヒントがないか探っている様だ。


「美濃国内………、国内じゃなければ、国外か?」

竹中重元が呟く。


「国外か、駿河国の今川、甲斐国の武田、近江国の六角、越前国の朝倉、北近江の浅井、伊勢国の北畠………」

明智光安が考えている。


「まぁ、良いさ。速攻で倒して手出しする前に片付けよう」

俺は会話を打ち切った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


斎藤軍本陣。


「な、なんであんなにいるんだぁ! 初めに二千の兵で侵攻して、六千の兵が裏切っても合わせて八千だろう?」

日根野弘就が驚き慌てていた。


「うむぅ、どうみても一万は越えてるなぁ。だが数は我が軍の半分。数で押せば勝てるだろう」

長井道利が冷静に分析する。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


斎藤軍は鶴翼の陣を敷いた。対する俺達織田軍は………、陣形を組んでいない………、様に見えるが、散兵戦術だ。


小集団の部隊ごとに分かれて素早い行動が取れる体形。鉄砲で遠距離から攻撃して、弱った敵に近接し刀や銃剣で戦うが、軽装であることの機動性を活かして敵の弱い部分や、味方が苦戦しているところへ自在に攻撃する。


一方織田軍でも、城主が率いて参戦している軍はそれぞれ得意な陣形を敷いている。


因みに山崎城代・佐々政次、野府城代・平手政秀、勝幡城代・前田利久の尾張の軍は一緒に訓練しているので散兵戦術だし、片原一色城主・橋本一巴は全員鉄砲持ちである事を活かして方陣だ。


残りの八神城主・毛利某、加賀野井城主・加賀井重宗、竹ヶ鼻城主・不破広綱、森部城主・河村久五郎は矢印の形の鋒矢ほうしの陣だ。


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斎藤軍の本陣。


「あっはっは、織田の馬鹿殿は陣も知らぬとみえる」

日根野弘就が大笑いをしていた。


「くくく、そうみたいだな。しかし油断は禁物だ。牛介、中央の前線で大うつけ者の兵士を迎えてやれ」

長井道利が真木村牛介に指示した。


「承知した」

真木村牛介は前線に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さて斎藤軍を攻めようか。全軍出撃!」

俺の号令で出撃の合図の太鼓の音が響く。


鶴翼の両翼の部分に毛利某、加賀井重宗、不破広綱、河村久五郎の兵が突撃し、橋本一巴の兵は鉄砲で敵を撃ちながらゆっくりと進む。


佐々政次、平手政秀、前田利久の兵も小隊ごとに散開して、斎藤軍に向かって進む。


そして俺達は………。


「ヒャッハー」

「行クデー」

「殺ッタルデー」

元倭寇の許兄弟がスレイプニルで鶴翼の陣の中央に突き進む。


「がはは、大将首は貰ったああああ!」

新免無二も許兄弟に続く。


「あ~あ、仕方ねえなぁ」

諸岡一羽が呟き剣豪達もスレイプニルに乗って中央に駆け出した。


「オタイも行きますけん」

鶴姫もその後を追って行った。


「鶴姫! ちょっとま──、………行っちまった。ちっ、中央に行ったら斎藤軍の思うつぼだろうに………。お前ら、うちの最高戦力なんだぞ」

俺は舌打ちをして後ろを向いた。


「善住坊、大砲を中央にぶっぱなして、………元康、ゴーレムで援護してくれ」


「おうよ」

「はい。承知しました」

杉谷善住坊と松平元康が返事をして、それぞれ準備する。


許兄弟と剣豪達が中央に到着する直前に大砲の轟音が鳴り響いた。


信長の軍も近臣達に割り振った小隊ごとに散開して、狙撃しながらゆっくりと進んでいた。

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