第194話 墨俣砦

俺達は北上し斎藤軍の墨俣の砦前に進軍した。


墨俣は長良川の西岸にあり、犀川と天王川が合流する交通上・戦略上の要地。現在は斎藤軍の砦がある。


墨俣砦では俺達に気付き、弓矢を構えて警戒しているのが見える。


「先ずはここを押さえるんだな」

俺は竹中重元に確認する。


「はい。攻め込まれ難い地ですから西美濃に楔を打ち込む事が出来るでしょう」


「良し、元康の出番だな。元康!」


「はい」

松平元康が返事をして前に出る。元康は小姓の一人なので近くにいるのだ。


「ゴーレムで墨俣を制圧しろ」


「はい」


元康と松平家の元家臣達により、俺の兵士の中からゴーレムの召喚・操縦出来る者を探して、100人のゴーレム隊を編成し訓練した。


ゴーレム隊が100体のゴーレムを召喚した。


ゴーレムは硬い土で出来ているが、甲虫モンスターの前翅の鎧を装着している。最早、甲虫ゴーレムと言っても良いだろう。


これで強度が向上し刀は勿論の事、槍で突かれたり、斧で叩き切られるのを防ぐことが出来るようになった。


ゴーレムは重量があるので川の流れにも流されず、川を渡り墨俣砦に進んで行く。


砦からは矢が雨の様に降り注ぐがゴーレムには通じない。ゴーレムは柵を破壊し砦に侵入すると、斎藤軍の兵士と戦い始めた。


「もうそろそろ、俺達も突撃しても良いだろう。がはは」

新免無二がうずうずして聞いて来た。


「そうだな。砦には鉄砲隊も居ない様だし、弓隊も粗方ゴーレムが倒したみたいだし、………良いだろう。暴れてこい!」


「ヨッシャー」

側で聞き耳を立てていた許二が、直ぐさま砦に飛んでいった。許二はオニイトマキエイの魚人だから、短距離の飛行が出来るのだ。


「殺ッタルデー」

「俺、行クー」

許三はシビレエイ、許四はノコギリエイの魚人なので、川に飛び込むと流れに逆らって凄い速さで砦に泳いで行く。


「あ、先を越されたか。がはは」

無二は急いでスレイプニルに飛び乗り、砦を目指す。


俺の声が聞こえて無かった他の剣豪と近臣達は俺をジーっと見ている。


そんなに戦いたいの?


「オタイも行ってええよね?」

鶴姫が首を傾げ物欲しそうに俺を見る。


鶴姫、お前もか!


「あぁ、みんなぁ! 出撃だぁ!」


「おおおおおおおお!!!」


俺の号令でスレイプニルに乗って、空から砦に向かう鶴姫と剣豪達。


近臣達は部下を付けたので、スレイプニルに乗って単身で砦に行く事が出来ず、川沿いに浅瀬を探し浅瀬から砦を目指す。


「良いのですか?」

明智光安が俺に尋ねる。


………ん? ヤバっ、全軍行きやがった。こんな数が砦に入りきるのか?


「いや、つい言っちゃったけど、まぁ良いんじゃねえの」


残ったのは俺と帰蝶とゆず。直子は育休、吉乃は産休中だ。


次に軍師である山本勘助、真田幸隆、竹中重元、明智光安の4人。


小姓である池田恒興、木下藤吉郎、前田利家、佐々成政、丹羽長秀、松平元康、竹中半兵衛の7人。


そしてゴーレム隊100名。


今回の遠征の総指揮は俺なのだ。

まぁ、殆ど軍師達が段取りしてるし、軍師達も大軍の指揮を経験させたいしね。


「ゴーレム隊の護衛でせめて500ぐらいは残して置きたかったですな」

そして、お目付け役?兼相談役兼いざと言う時に丸投げする為に三好政長も連れて来た。


「そ、そうだね」


「周りに敵も居ないし、良いじゃないの。アタイ達も墨俣に行きましょうよ」

帰蝶が俺をフォローする。


「そうだよ。墨俣も制圧完了してるんじゃないかな」

ゆずも行きたそうだな。


「無二さんと許兄弟が先行したから、皆殺しかも知れないッスよ」

池田恒興のボソッと一言。


ヤバっ、冷や汗が流れる。


あいつら無茶苦茶だからなぁ。


「うはは、元気があって良いなぁ」

と他人事の台詞の斎藤道三。


あ、こいつも付いて来たんだった。

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